免許合宿10日目「2度目の脱走」

免許合宿10日目
日記作成者 半谷
下島さんとの関係 良好
帰りたい度 60
朝食 無し
昼食 カレーライス 野菜サラダ

夕食 フライドチキン きんぴらごぼう ブロッコリーのツナ和え 味噌汁


今日は奇跡の日だ。僕と下島さんは全休。しかも教習所全体も午前で全ての教習が終わり午後は職員が誰もいない。生徒たちはみんな唯一外出が許されているセブンイレブンに行ってお菓子やジュースをたくさん買って部屋に戻り、休みを満喫するのだろう。

しかしそんなくだらないルールに縛られる僕たちではない。再び脱走して山へ行き、退行覚悟でキャッチボールをすることに決めた。合宿に来る前はキャッチボールなんて当たり前のように毎日できるものだと思っていたが、この地獄ではキャッチボールをするにも命がけで脱走しなければならないのである。

教習が終わり職員は全員消えた。これはチャンスだ。脱走する前にまず生徒の連中に僕たちがナンバーワンであることを示すために、大勢が見ている中で絶対侵入禁止と言われている教習コースに入り、これ見よがしに闊歩してやった。


全員が僕たちを見ている。ある者は僕らに憧れを抱き、またある者は僕らを蔑んだかもしれない。しかしこの行為は、規則に盲従する生徒たちに“真の自由”とは何か今一度考えて欲しいという僕らからのメッセージでもあった。

そしてキャッチボールのためグローブをバッグに詰め、脱走を決行。例のごとくコンビニへ続く一本道を外れて山までダッシュした。

山に入ってしまえばもう僕らの野球は誰にも止められない。山の麓の平地が広がる場所で下島さんと心ゆくまでキャッチボールをした。

もう楽しすぎる。ボールを投げるのも取るのも全てが楽しい。キャッチボールってこんなに凄いんだ。下島さんの顔なんて部屋だとあんなに見たくないのに、キャッチボールの最中は愛おしくて仕方がない。下島さんの球をいい音で取って彼を喜ばせてやりたいし、凄いカーブを投げて彼を驚かせたりもしたい。夢のような時間であった。

結局僕の肩が限界を迎えるまでキャッチボールをしてしまい、気づいたら結構な時間が経っていた。せっかく山まで脱走したしこのまま街に降りて買い物をすることにした。

街に降りてまずファミマに入った。僕たちは毎日セブンで買い物をしていて代わり映えしない商品に飽き飽きしているので、セブンに無いものを見つけるだけでテンションが上がった。ライフガード、メロンパン、一平ちゃんなどを買った。下島さんはファミチキを食べて感動していた。

その次に神社に行った。明日はみきわめがあるのでその合格祈願をした。下島さんは神様にお祈りする直前に帽子をかぶっていることが神に対して失礼であることに自ら気づき、ちゃんと帽子を取っていた。成長が見られた瞬間である。

続いて、唐揚げ、タピオカ、ホットサンドなどを売ってる様々なキッチンカーが並んでいるところを見つけ、その中で僕たちはりんごクレープを買うことにした。結構並んでいて1時間近く待たされたが久々の自由に触れた僕らの心は踊っていたので待ち時間が全く気にならなかった。クレープはとても美味しかった。

その後スーパーに行った。ここでセブンイレブンに無い商品を大量に買って生徒共同の冷蔵庫に並べることで、完全に僕たちがナンバーワンであることを示すことにした。セブンには無いオロナミンCや卵を買ってやった。

自由を満喫していると、いつの間にか門限が迫っていた。僕らは必死に走って宿まで戻り、貧血で視界が真っ白になったりしながらも山を駆け上り、何とか門限の5分前に帰れた。教習所に帰った後もオロナミンCを掲げながら、歩道ではなく教習コースを歩いて寮まで戻ることで奴らの度肝を抜いた。

そして余裕の夕食。勝った。

今日は僕たちの勝ちだ。お疲れみんな。

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