放射線科専門医試験(一次試験) 治療分野まとめ

放射線専門医試験治療分野での頻出事項をまとめています。
少なくとも2023~2016までの臨床的治療分野の問題はこのまとめの暗記でほぼ対応可能です。
やみくもに問題を解くよりも頭に残りやすいと思います。
試験対策用のまとめに特化しており、試験での得点を優先させているので、実臨床では使えない部分もあります。
返金は受け付けませんので、よくご検討の上、ご購入ください(1/3は公開しています)。


頭部
高悪性度神経膠腫(膠芽腫)
50歳以上に多い
治療方針:手術+術後TMZ(テモゾロミド)併用放射線治療
放射線治療:拡大局所照射60Gy/30fr.
※高齢者(71歳以上)には34Gy/10fr.や40Gy/16fr.の寡分割照射。
※拡大局所照射:術後巣に加えて浮腫領域もターゲットとしてマージンを加えて照射する

関連:橋グリオーマ
有効なケモなし。5~9歳にピーク。18歳以上では予後が少し良い。
照射は54Gy/30fr.

低悪性度神経膠腫(星細胞腫、乏突起膠腫)
治療方針:手術+術後RT (術後RTでDFS向上、OS変わらず)
放射線治療:(拡大)局所照射50.4Gy/28fr. 
※膠芽腫ほどではないが、浮腫領域にマージンを加えて照射する

ジャーミノーマ(胚腫)
15歳程度の男児に多い、西洋人よりも日本人に多発する
治療方針:RT単独
全脳室照射で40~50Gy。ただし近年は線量低減目的にケモ併用で24Gy
5y年OS:90%以上

その他の胚細胞腫瘍の治療方針
予後良好群(10年OS:80~90%)
成熟テラトーマ 手術単独

予後中間群(5年OS:70%)
未熟テラトーマ、悪性転化テラトーマ 手術+術後照射

予後不良群(5年OS:10~30%)
卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、上皮絨毛癌など 手術+照射+ケモ

髄芽腫
主に小児の後頭蓋窩、特に小脳虫部に後発する
治療方針:手術+術後照射+ケモ
※ケモ併用でOS↑(線量低減の側面もある)

放射線治療:全脳脊髄照射(23.4Gy/13fr.)+Boost(30Gy程度)


転移性脳腫瘍
原発巣:肺癌>乳癌>消化器癌
全体の全生存期間が半年程度
SRTは3cm以下4個までが適応(単発なら5cm以下まで適応)。※近年は5個以上でも行う。
定位照射適応外は全脳照射(30Gy/10fr.や37.5Gy/15fr.など)
※定位照射と全脳照射を併用することもある
SRS(2cm以下):20Gy/1fr. SRT(5cm以下):35Gy/5fr.
手術は3~4cmで予後が望めるときに行う


頭頚部癌
6MV以下で照射する
IMRT(強度変調放射線治療)で70Gy照射が多い。耳下腺を守る
照射後の抜歯は骨髄炎や骨壊死のリスクが高い。照射前に歯科受診が必要
咽頭癌は予防的頚部リンパ節領域(両側鎖骨上〜頚部リンパ節領域)を含めて照射するため照射野が広い(甲状腺が照射野に含まれるので定期的な甲状腺機能検査を行う)
治療期間の延長が予後の悪化につながる
同時ケモ(シスプラチン)が基本だが、腎機能の問題などで、分子標的薬(セツキシマブ)が使われることもある
断端陽性やリンパ節転移節外浸潤陽性例では術後照射の適応

頭頚部癌のN
N(上咽頭癌とHPV+の中咽頭癌も同じ)
N1:患側6cm以下
N2:両(対)側6cm以下
N3:6cm以上

N(上記以外の頭頚部癌)※甲状腺癌を除く
N1:患側単発3cm以下
N2a:患側単発3~6cm
N2b:患側多発6cm以下
N2c:両(対)側6cm以下
N3a:6cm以上
N3b:節外浸潤あり

上咽頭癌
治療方針:化学放射線療法(Ⅰ期のみ照射単独)
※低ステージでも全頸部に広く予防域をとる
EBVと関連
※IMRTで副作用の軽減だけでなく、生存率の改善が示されている


中咽頭癌
治療方針:
Ⅰ~Ⅱ期:口腔法で可能なら手術。無理なら放射線治療単独
局所進行例は手術。無理なら化学放射線治療。
※扁桃原発T2N1M0はヘミネック照射(片側照射)
HPVと関連するタイプがある。HPV+では予後良好


下咽頭癌
治療方針:
早期例(T1~2):化学放射線治療
進行例(T3~4):手術 ※術後照射することが多い
食道癌との重複癌が多いので、治療前に上部内視鏡を行う


喉頭癌
治療方針
T1/2:照射単独
T3/4:基本は手術だが、CRTも選択肢(ケモはシスプラチン)

放射線治療
声門癌T2N0までは喉頭(声門)に限局した照射野、70Gy
声門上癌は上・中・下内深頸リンパ節を含める(鎖骨上リンパ節は不要)

ケモ併用は放射線治療感受性を上げ、局所制御率の向上が目的。なので腫瘍サイズが大きいときに用いる


舌癌
治療方針
T1/2:小線源治療(組織内照射に137Csや198Auや192Irを用いる)/手術
T3/4:手術


唾液腺癌
方針:手術+術後照射
※ケモにエビデンスなし


甲状腺癌 
乳頭癌・濾胞癌(分化癌)※放射線感受性が悪い
Stage
55歳未満のM0:StageⅠ
55歳未満のM1:StageⅡ

分化癌の治療はまず手術(甲状腺全摘術)。その後、T3以上なら内用療法を行う。用いるベクレル量は遠隔転移の有無で変わる。

放射線ヨウ素内用療法(131I-NaI 半減期8日間)
① 遠隔転移例
取れるところは切除してから行う
外照射も併用可
肺転移例は予後が比較的良い

② 術後補助(アブレーション)
外来治療可能(①より投与量が少ないため)
T3症例などに用いる
※Basedow病にも行うことがある

投与方法
2週間前からヨウ素制限
4週間前からT4中止、2週間前からT3中止(TSHを上げることが目的であり。TSH製剤投与でも可)

目的は残存甲状腺除去、微小遠隔転移除去、術後血清サイログロブリン値のサーベイランス精度向上


甲状腺未分化癌
全てStageⅣ
治療方針:姑息手術、緩和的外照射、レンバチニブ。予後は3~7ヶ月程度


胸部
肺癌
T
T1:3cm以下
T1a:1cm以下
T1b:1~2cm
T1c:2~3cm
T2:3~5cm。主気管支に及ぶが、気管分岐部に及ばない。臓側胸膜浸潤。肺門まで連続する無気肺
T2a:3~4cm
T2b:4~5cm
T3:5~7cm。壁側胸膜、胸壁(SST)、横隔神経、心膜、同一肺葉内結節
T4:7cm以上。横隔膜、縦隔、心臓、大血管、気管、気管分岐部、反回神経、食道、椎体、同側の異なる肺葉結節

N ※原発巣が所属リンパ節に浸潤している場合はリンパ節転移とする
N1:同側の気管支・肺門・肺内リンパ節
N2:同側の縦隔。気管分岐下
N3:対側の縦隔・肺門。鎖骨上窩

M
M1a:対側肺、胸膜結節、悪性胸水、悪性心嚢水
M1b:1つの臓器へ転移
M1c:多発臓器へ転移

Stage
ⅠA:T1
ⅠB:T2a
ⅡA:T2b
ⅡB:T1~2/N1,T3N0
ⅢA:T1~2/N2,T3~4N1,T4N0
ⅢB:T1~2N3,T3~4N2
ⅢC:T3~4N3


Ⅰ/ⅡA期非小細胞肺癌(つまり5cmまで)
※肺癌の中で腺癌が最多で50%
治療方針:手術
※耐術能がなければSBRT(42Gy/4frや48Gy/4fr.)
末梢の腫瘍が定位照射の適応の基本で、中枢型の場合、気管がリスクとなるため、照射回数を増やしてマイルドにする(60Gy/8fr.など)。超中枢型は定位照射は難しい
※肺への定位照射はビルドアップによる腫瘍表面の線量減少の低減のために低エネルギーで行う
※0.2%で致死的肺臓炎が起こる

Ⅲ期非小細胞肺癌
治療方針:耐術能なし/切除不能N0-1/N2-3ならば同時化学放射線療法+デュルバルマブ地固め療法
※対側肺門リンパ節転移例は根治照射不可能
※T4症例やSST(Pancoast腫瘍)の術前治療は化学放射線療法。SSTの5yOS:50%
※術後照射:N2で検討
※切除可能例での術前治療は化学療法

放射線治療
処方線量は60-66Gy
耐用線量:
肺:V20<35~40%(1~2%で致死的肺臓炎が起こる)
※下葉病変はIM(インターナルマージン、体内マージン)が大きいので注意。4D CT(呼吸性移動の把握)や呼吸移動対策が有用
※照射野内にairが多く、不均一補正が必要
※近年は予防的リンパ節領域を含めない方向

小細胞肺癌 
※肺癌の中で15%程度で診断時からリンパ節転移や血行性転移を伴っていることが多い
※限局型と進展型に分けて治療方針を決定する
限局型(LD型)
治療方針
Ⅰ期(T1/2N0M0):手術+術後ケモ
※手術が不可能なら定位照射を行う
その後、完全奏効(CR)となれば予防的全脳照射(25Gy/10fr.)を追加する

Ⅰ期以外:ケモ+RT(ケモ開始後早期に併用療法。腫瘍の再分布のため)
放射線治療は加速過分割照射(45Gy/30fr./3w)を行う。※1日2回照射
その後、完全奏効(CR)なら予防的全脳照射(25Gy/10fr.)を追加する

化学療法
EP療法:シスプラチン+エトポシド

進展型(ED型)
治療方針:ケモ


乳癌(40代前半と60代前半に多い)
上肢を挙上させて照射する
エネルギーは6MV以下で照射する

非浸潤癌
DCIS、LCIS
温存乳房に対する術後照射で再発を1/2にする(ほぼ全例に施行)
OSは不変
センチネルリンパ節生検や腋窩リンパ節郭清が省略されることもある


早期浸潤乳癌(乳房温存術)
乳房温存術後にはほぼ全例に放射線治療を施行する
温存乳房に対する術後照射で再発を1/3にする。OSも上げる
ターゲットは残存乳房
術後照射不可例(これらには温存術は適応外):患側上肢挙上不可、活動性の強皮症やSLE、Li-Fraumeni症候群(p53変異)、妊娠中、同部への照射歴、色素性乾皮症、ホモ接合性ATM遺伝子変異
※術前化学療法奏功例への温存術は切除範囲が難しくなるため慎重に(局所制御率が術後化学療法例よりも劣ると報告されている)

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