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2024/7/26(金)の宿題:河童のミイラ

 『今日の宿題』(Rethink Books編、NUMABOOKS)に毎日取り組んでみる6日目。

 畑中章宏さんからの出題

河童は、九州北部が原産地だそうです。
いまあなたの隣にも、
河童が立っていますよね?

 本屋で、隣で棚を見上げている人は、実は河童かもしれない。そんな風に考えたほうが、ファンタジーみたいに、人生に張り合いが出そうだ。

 九州北部出身だが河童の原産地とは知らなかった。本棚から引っ張り出してきた『図説 日本の妖怪百科』(宮本幸枝、学研プラス)で河童のページを見てみる。息絶えて干からびた宇宙人のようなものの写真に、こんな注釈がついていた。

「佐賀県の民家の屋根裏から見つかったという河童のミイラ。蔵の守り神として大切にされている。(松浦一酒造蔵)」
 佐賀県に河童のミイラ?
 そこでふと思い出した。佐賀県伊万里市に住んでいた祖父が、河童のミイラの写真を持っていなかったか?
 祖父は既に他界しているので、母に「おじいちゃんって河童のミイラの写真持ってなかった?」と聞いてみた。帰ってきた返事は「伊万里には河童のミイラがあるけど。」
 河童 ミイラ 伊万里、で検索すると、最初に松浦一酒造株式会社のホームページ(http://www.matsuuraichi.com/matsuuraichi-yurai.html)が出てきた。これは『図説 日本の妖怪百科』の写真の注釈の括弧書きに書かれていたところだ。このページによると、

我が家には、伝説の動物とされるカッパのミイラが現存しています。
(中略)昭和28年に母屋の屋根の葺き替え工事中に、大工の棟梁が「梁の上にこんなものが…」と持ってきたのがボロボロの紐でくくった黒い箱。蓋をとると中からなんとも奇妙な動物のミイラが出てきました。
最初は一同ビックリ仰天。
更に黒い箱を調べてみると、箱には「河伯」と墨書きの二文字が書かれてあります。ものの本によればこれが本当のカッパという文字だということで、カッパであることが判明しました。

 とある。これに加え、なぜここに河童があるのか、ということも記載されていた。
 ここまで読んで、記憶がぼんやり蘇ってきた。
 伊万里の祖父は収集癖があって、本棚いっぱいに紙幣と切符のコレクションをしていた。そんな祖父が、5歳くらいの私に、急に声をひそめて言った。
「いいもんがあるぞ、見るか?」
 私が頷いたか頷かなかったか、覚えていない。そんなのは祖父にとってどうでもよかったんだと思う。大切なコレクション本棚とは別に、今まで開いたのを見たことがない、引き戸を下ろして物を仕舞う特殊な机の中からそれを出してきた。河童のミイラの写真だった。
 小さい頃だから、私はミイラなんてよくわかっていなかった。なんだかやたらとガリガリで、河童ってかわいくないんだなあと思った。祖父は孫に、大事に仕舞っていた河童のミイラの写真を見せることができて満足していたと思う。
 祖父は寡黙で、子供の相手を積極的にするタイプではなかったから、祖父との思い出は数えるほどだ。でもだからこそ、些細でへんてこな思い出がたまに蘇ってきたりする。そしてそれはけっこう嬉しい。

 次のお墓参りのついでに、河童のミイラを見てこようかな。おじいちゃんはあの写真を見せてくれたことなんて、もう忘れているかもしれないけど。




(畑中章宏さんについて)
 民俗学、とても興味があるので、畑中さんの著書はどれも読みたい!
 妖怪検定も勉強して受けたい。最近は妖怪のぬいぐるみを作ったりしています。

妖怪 髪切りのぬいぐるみ

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