欧州クラブから鹿島復活へのヒントを探る【リバプール編】
シーズン終盤戦を前に今年も、もがき続けている鹿島。かつてクラブW杯でヨーロッパ王者と戦ったわがチームが過渡期に入る中で、欧州サッカーはぐんぐん先を進んでいる。そこで今回から数回に分けて「欧州クラブから鹿島復権へのヒントを探る」という形で取り上げていく。今回はプレミアリーグのリバプール。
■参考
本来であればじっくりひとつひとつのクラブを調べ上げたいところだが、かなり時間を要するため、1冊の本から参考に紐解いていく。今回参考にさせていただく本は、海外サッカー専門誌『フットボリスタ』で活躍中の結城康平さん著書『総力戦"時代の覇者 リバプールのすべて』から。
■なぜリバプールなのか
数ある欧州クラブの中でなぜリバプールを選んだのか。それは感覚的に親和性が高いと思ったから。クロップのゲーゲンプレッシング、長年タイトルから離れていたこと、国内屈指の熱狂的サポーターなど、世界最高峰のプレミアリーグで鹿島に近い要素が多いと考えたからだ。また、リバプールはここ数年でチャンピオンズリーグとプレミアリーグタイトルを獲っており、欧州サッカーでも常に先頭集団にいるクラブでもあるからだ。
前提として理解いただきたいのは、これから話すことは自身の勝手な考えであり、「鹿島はこうすべき!」というものではない。「リバプールはこんなことやって優勝したみたいだけど、鹿島には合うかなー?」レベルだ。また、内容としてはオンザピッチの範囲のものになるので、経営や文化などのオフザピッチの話はないのでご理解いただきたい。
■主導権の取り方
・鹿島の話
それでは本題に。まず鹿島はこれまで(正確にいうとザーゴ招聘時で今どう考えているか不明)試合において主導権を握ることをテーマとしてきている。その理由は川崎、横浜FM、神戸などポジショナルプレーを志向するクラブに対して結果もさることながら、内容でひたすら殴られ続けることが多くなり、かつての鹿島が行っていた、選手による臨機応変な対応では太刀打ちできなくなったからだ。これが鹿島強化部がザーゴを招聘した理由でもある。じゃあ、そこからシーズン序盤まで率いていたザーゴが志向していたサッカーはというと、簡単に言えば「相手の陣地でサッカーをすること」だったように思える。攻撃ではなるべく早めに相手陣へボールを落とし、そこから即時奪回→ショートカウンターの流れだ。また、就任当初は後方から繋ぐのを頑なにこだわる監督なのかと思ったが、ボールを捨てることは特にアレルギーを持ってなく、とにかく相手陣でサッカーしたいというゲーゲンプレッシング&ストーミングの戦い方であった。
・リバプール
リバプールはクロップ監督就任後から数年かけてゲーゲンプレッシングとストーミングという戦術に磨きをかけてきた。その源流について結城さんはこう話す。
>彼らはボールを保持することで主導権を保ちたいというよりも、相手の組織を破壊することを目的としている。ボールを保持していない状況でもコンパクトな陣形をベースに圧力を強め、ボールを奪うことで電撃戦を仕掛けていくのだ。
>どちらにボールが転がるかわからない密集地に味方が殺到するメカニズムは、ボールを奪えれば「デザインされた速攻」を可能とする。
つまり、ゲーゲンプレッシングをすれば主導権を握れるかは全く別なものの、ボールを保持せずに攻撃をデザインできる。というものだそうだ。そこで僕の頭に思い浮かんだのは、鹿島の攻撃の再現性。正直、今の鹿島は荒木のひらめきと上田とエヴェラウドの強さが頼みで、彼らがいなければ再現できなくなる。主導権をなぜ取りたい理由で話したように、これまで選手に依存していたところを脱却したいにも関わらず、いまだ依存しているのだ。そういった意味で言えば、リバプールのやるサッカーは鹿島が求めている再現性ある攻撃のヒントであり、これが実現できればかつて武器としていたショートカウンターがズバズバ能動的に発動できるようになるかもしれない。
ゲーゲンプレッシング
>相手にボールを奪われた瞬間にプレスをかけボールを奪い攻撃に転じる戦術のことです。ゲーゲンプレスと聞くとハイプレスをイメージする人もいるかもしれませんが、両者は完全に異なるものです。ゲーゲンプレスは、ボールを奪われることを前提としたうえで、奪われた後のプレッシャーの掛け方を戦術に落とし込まれています。詳しくは後述しますが、ゲーゲンプレスにも種類があり、種類によってプレスのかけ方も異なる点が特徴です。
ストーミング
>意識的にボールを手放してでも、手数をかけずに狙ったスペースにボールを運ぶ」ことをゲームにおける主導権と解釈する。
■ボールへの執着
ボールを失うことに執着しないストーミングの話で純粋に疑問に思ったのは、「これにサポーターは許容しているのかな?」と。おそらく、バルセロナのようなチームがいきなりボールを捨て出したら反発が起こるだろう。しかし、もちろんリバプールサポーターは許容している。だからこそあのアンフィールドの雰囲気が出せるのだ。
じゃあ、果たして鹿島サポーターは許容できるのか。僕はボールに関係なく許容できると思っている。なんせクラブは「すべては勝利のために」を掲げているからだ。選手もサポーターもそれが勝利のための手段ならOKだろう。また、現実的に鹿島の選手は川崎やマリノスの選手と違ってボールプレーは上手くない。平均が低い感覚だ。練習を積めば上達は可能かと思うが、タイトルを毎年取らなければいけないクラブが正直、そのような練習に時間をかけている余裕がないと思う。そのため、意図的にボールを捨てるリバプールのサッカーはヒントが多い。
■対策されたら
リバプールの攻撃力が増せば増すほど、ストーミングの威力が弱まっていくジレンマ。そこでクロップがたどり着いたのは、「自陣から優位性を保ちながら丁寧にボールを運び、時間軸に固執せずに攻撃を仕掛ける」ポジショナルプレー的なアプローチだった。
リバプールが強くなっていくにあたって、当然のように対策をされた。そこでポジショナルプレーを取り入れて次は保持しても勝てるようなチームを目指しているそうだ。これも極めたが故の課題だろう。そのため、鹿島が今後ストーミングを極めたら起こるだろう課題をリバプールが解決しようとしているため、モデルケースとして面白いクラブだ。
■まとめ
今回はオンザピッチの話を中心にリバプールを取り上げたが当然、鹿島が復活するにあたってはオフザピッチの問題もあり、そもそもリバプールをまるパクリすればいいものではない。しかし、国内だけでなく海外には参考になるようなチームは山ほどあり、必ずヒントになると思っている。今後も別のクラブでこんなお話ができればと思う。
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