ヴァイラー招聘から岩政新監督就任までを整理してみた

■ヴァイラー招聘

・招聘の一番の理由は勝つため

――クラブ初の欧州出身監督としてヴァイラー監督を招へいした。
 「数年結果が出ていなかったので、ヴァイラー監督に託した一番の理由は勝つため、それだけです。まず選考のフィルターにかけるのはタイトルを獲っているか獲っていないかということ。ヴァイラー監督が過去に指揮したクラブ(ベルギー・アンデルレヒト、エジプト・アルアハリ)でタイトルを獲ってきたということは何かしら勝利に対する経験を持っているということです。ウェブでミーティングしたときに、一つのことにこだわらない臨機応変さ、柔軟さがある監督だと感じました。鹿島が課題として捉えていた攻撃の停滞感を改善する術を持っているとも思います。勝ちにこだわっているという点も鹿島に間違いなく合うと思って、ヴァイラー監督に決めました」

・招聘までの経緯

現代サッカーの勉強をしているブラジル人をリサーチ
タイトルを獲っているか獲っていないか

リサーチするもいない

ポルトガル人をリサーチ

4人面談

「最初から欧州の監督にいこうというよりも、ブラジルで若くて、現代サッカーの勉強をしている指導者はいるか、と探した。ブラジルでも強いクラブは、アルゼンチン人、ポルトガル人が監督を務めているので、なかなか若くて日本に来てやれるような(ブラジル人)指導者がいなかった。どうしようかとなった時に、ポルトガル語を理解するスタッフがいて、クラブのリソースを活用しようと思い、(欧州に目を移して)ポルトガル人でリサーチした。リストアップした中で、4人くらい面談した。その中から鹿島のサッカーを理解し、アップデートさせてくれる、一番適応できると感じ、今度の監督に決まったという経緯ですね」

■ヴァイラー退任

・マネジメント方法のずれ

-バイラー監督の解任理由  「かなり議論を重ねてきた。お互いに(契約を)解除した方がいいという結論に至った。何が一つの要因かというと、ここまでのフットボールの内容もあるが、まずはマネジメントの方法の違いを互いに議論する中で落としどころが見つけられなくなったことが大きな理由。鹿島はこれまで監督に全てお任せではなく、クラブのベースがありながら、監督が持っている考え、フットボールのプラスアルファの部分を乗せながら、互いに作り上げることで結果を出してきた。今回もレネ監督の就任にあたって、ピッチ上のことに関しては監督に任せることがほとんどだが、マネジメントしていく上で、現場のピッチの中だけでなく外の部分も含めて、さまざまな考え方、レネ監督の考え方、クラブの考え方をすり合わせながら、落としどころを見つけてやってきた。レネさんも理解しながら進めてきた。その中で、ここ最近ではお互いにAかBかというトライではなくCいう答えに落としていく中で、なかなかそこが見つけられなくなって、お互いの譲れるポイント譲れないポイントが平行線をたどっていた。すごくお互いにストレスというか、我慢していたのも事実。それがレネさんの我慢、コーチングスタッフの我慢、選手の我慢という中で、これ以上続けることがクラブの発展になるのかと判断した上で、なかなか難しいだろうと判断して契約解除に至った。その一つの要因として、まだタイトルが取れるだろうということで、みんなが前向き取り組めるような環境を整えることが必要かと思い、こういうタイミングでの(契約)解除になった」

・選手評価基準のずれ

-マネジメント方法の違い。FW上田の欧州移籍で補強に異を唱えたりしたのか。何が難しくてお互いに歩み寄れなくなったのか  「個別の案件は伝えづらいが、マネジメントで言えば、例えば欧州では試合前に登録メンバーだけ練習するマネジメントの仕方がある。レネさんもそうしたかった。ただ日本のクラブでメンバー外の選手が完全に個別練習をすると、やはり一体感を醸成していくことが難しくなる。実際にやったことはあったが、私からそこはみんなでやっていこうと言って、レネさんも同意してくれて、元々の鹿島のやり方に戻したことはある。そういう小さなことだが、チームを構築していく上でのマネジメント、いろんなことを言い出すときりがないが、そういったことの落としどころが最後は見つけづらくなった。一番大きかったのは選手評価の違い。私たちが考えるいい選手の評価基準と、レネさんが考える評価基準に相違があったのは事実。補強も含め、私たちは基本的に監督が求める選手を取ろうというのはあるが、予算や鹿島に合うのかいろんな側面からリサーチするので、クラブから提案した選手もいるし、レネさんからの要望もあり、すり合わせをする中で、少し基準が違うなというのはお互いに認識していた。補強だけでなく現有戦力の評価基準も当然あった。そこに関しては非常にお互いになかなかすり合わせることが難しかった。マネジメントの方法というと大きくとらえられるかもしれないが、チームビルディングをしていく上でのさまざまな判断要素、判断基準の違いがあったのは事実」

■岩政新監督就任

・期待と今後の方針

「まずレネさんに監督をお願いしたことで、皆さん欧州路線ということをすごく言われているが、これまでクラブとして欧州路線に行くということは一言もお話していない。ただ鹿島のサッカーを構築していく上で、現代サッカーの中心は欧州なので、そういった要素を取り入れないと取り残されることもあり、これまではブラジル人、日本人の監督でやってきたが、そこは選択肢としてもっと広く持っていいのではないかという考えのもとに、クラブのフィロソフィー自体は変えることなく、鹿島のフットボールをアップデートできる人材は誰なのかということで選んだ。方向性はこれまでと変えることなく、フットボールの中については、周りも変わっていくので、そこに合わせてフットボールを再構築していく必要があると思っている。岩政監督に関してはシーズン当初にかなり任された状況で指揮している。そこで彼のやり方や進め方、彼はすごく賢いので、レネさんがやりたいことも加味した上でチーム作りをしてくれていたので、やりたいこと、やることは理解している。代行と実際の監督は違う部分もあるが、方向性はある程度お互いに話は出来ているので、今後、彼の監督としてのキャリアはすごく良くなるものだと思っているし、彼が成長できる環境をクラブも整えたいし、一緒になって鹿島のフットボールを再構築していくことを期待している」

・ヴァイラー招聘時の条件との矛盾

−監督選考に勝てる監督、優勝経験ある監督と話していたが矛盾は

 「シーズン途中に就任するのは、どの監督がやっても簡単ではない。彼自身は指導者としては当然タイトルを取ったことないが、選手としてタイトルを取ってきた経験値は高い。選手と監督は全く違うが、まずはそういった経験値があるということ、レネさんが合流する前の指導方法、考え方、立ち振る舞いを見ていたら任せても問題ない。現在の選択肢としては一番の選択。彼だけに全てをというよりは、一緒になってやっていくことができる、タイトルに近付いていける。天皇杯も残っているし、リーグ戦もあきらめていない。そういった経緯も踏まえて、途中からでも任せることができる指導者と考えて任せた」


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