「熱い」夏
この暑い時期に熱くなるのは、かき氷、ビールそしてエアコンの商戦ではないだろうか。
当時、ある家電量販店の下請け業者として、ほぼ毎日、あちこちと取り付けて回っていた。下請け業者にとって、夏場のエアコン商戦は1番の稼ぎ時だと言える。1日に4台、その内の1台分が私の日当となった。
私は主に屋外(室外機)を受け持っていた。室外機を運び込む、それもアパート・マンションや2階のベランダとなると、階段や廊下、その部屋の室内を通ることになり、一苦労となることもある。
そして配管などの材料や工具も運び込み、いよいよ工事に取り掛かる。
スケールで室内機と室外機途を繋ぐ為の穴までの距離を測り、それを元に銅パイプやドレンホースといった配管、そしてFケーブルという電線を伸ばしてゆく。
ペンチを握りこみ、カッターナイフを前後させ、パイプカッターを回す……。バツン、シュパ、パキ……。それぞれがキレイに切断されてゆく。
……いつも、というわけではないけども。
壁面にドリルで穴を空け、ドライバーとビスでもって化粧カバーを留めていく。しっかりと固定がしたく、電動ではなく手で締め込んでいく。ビス穴が「バカ」にならないよう、気をつけながら。
……穴を空けた段階で、すでにバカになっていることもあったけど。
パイプにナットを通しフレアを作り、ケーブルの被覆を剥き芯線を出す……2丁のモンキーレンチでナットを締め、電線を端子台へと差し込んでいく。
チューブを繋ぎ、真空ポンプを動かす。
仕上げに取り掛かる。化粧テープを巻いていく。頭から噴き出した汗が、ポタ、ポタ、と垂れる。実際は、室外機にも配管にも、すでに垂れていたことがしばしば。
メーターのメモリをチェックし、「真空引き(空気抜き)」ができたことを確認する。六角レンチを回し、配管に冷媒を行き渡らせる。
リモコンのボタンを押すと……試運転開始である。
側面や化粧カバーを被せて取り付ける。早いと、ここでドレンホースの先端から水が溢れ出す。
一段落したので、水分補給をする。ゆっくり飲んだ方が好いことを知っていても、ガブ、ガブ、と喉へ流し込んでしまう。
ペットボトルも「汗」をタップリとかいていた。
そんな夏の日々であった。
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