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『HARAHOLOGRAM』全曲セルフレビュー


メンバーによるアルバム『HARAHOLOGRAM』の全曲セルフレビュー

『HARAHOLOGRAM』アルバム情報
https://nekon-t.info/harahologram/

◆アルバム制作に関して

ハラホログラムのサウンドは当初からストレートな音質とアレンジのエレポップとなる様に心掛けました。
制作にあたり自分が「コレ好きだ!」と思うエレポップとはどんな条件の曲かを改めて確認する為に、新旧有名無名含め様々な曲を聴き返したりしました。
また、個人的な裏テーマとして「アニメのエンディングで流れそうな曲を作る。」というのが当初からあって、これも意識していました。

今回のアルバムに関しては当初アルバム形式で発表する事を想定していなかった13曲を、収録順に並べた時に、まるでパズルが埋まったかのようにしっくり収まった事にビックリしています。
各曲が最初からここに収まる様に出来ていたのか?と思うくらいでした。
なので、昨今のトレンドとは違うかもしれないですが、アルバムをぜひ一曲目から続けて最後まで聴いて頂きたいなと思っております。

それでは各楽曲のレビューを始めていきたいと思います。
(24P)

1.HARAHOLOGRAM

結構前からベースラインだけ出来ていてずっと放置していた曲。
アルバムリリースのお話を頂いた時から肉付けを始めて、ある程度の展開は出来たのですが、メロディの方向性が定まらずまた放置。
ふと聴き返していた時、ブレイク部分に「ハラホログラムです。」とセリフを入れたらどうか?と思いつき、全編アナウンスを導入する事にしました。
その後、アナウンス文の叩き台を作りサトウさんに修正してもらい録音してもらいました。
ドラムはサンプルから。
ウワモノで鳴っているシンセはほぼSerumとCypher2を組み合わせたものです。
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2.商売上々

チャイナドレス、ド派手なメイクで市場へ出稼ぎに行く女の子のお話し。
饒舌で、めちゃくちゃ商売上手。
この格好で、何を売っていたら面白いかなあと妄想して浮かんだのが「野菜」。
この女の子の不思議なパワーに魅せられて、なぜかみんな、大量に野菜を買ってしまう。
(トモミ)

最初は四つ打ちの浮遊感のあるテクノを作ろうと、和音を弾いたシンセをCubaseのサンプラートラックに入れてフレーズを作っていたのですが全く上手くいかず。
四つ打ちをやめてドラムを差し替え、最初に作ったフレーズを色んな音でユニゾンしてやっとサビで鳴っているバックトラックに近づいていきました。
昨今の曲短縮傾向に習い、普段間奏として使用している様なトラックを2番のAメロから使っています。
これもほぼシンセはSerumとCypher2、チラッとPREDATOR、途中の生っぽいベースはSampletank3にアンプシュミレーターを掛けて使ってます。
(24P)

3.モンスター

果てしなく遠い惑星から、意気揚々と憧れの地球にやってきた少女のお話です。
楽しいこと・うれしいことを、思う存分体験してみたい。
そして、育ちすぎた怒り・悲しみ・寂しさ=モンスターたちを、誤魔化さずに全部、許してあげたい。掴みたい、光を。
(トモミ)

当初はもっとフワッとしてチープな雰囲気をイメージして作っていたので、ドラムも808系でポコポコした感じにしていたのですがまったく上手くいかず。
ウワモノのシンセを派手目なリードへ、ドラムも硬い音へ変更した辺りからようやく形になり始めました。
ドラムパターンはAYUSE KOZUEのApple pieのイメージから。
サビのメロディが十六分の同音で刻んでいるので、さぞかし歌詞をハメて歌うのが大変だったと思います…。
因みに最後のボーカルのお尻にリバーブを掛けるアイデアはサトウさんです。
(24P)

4.シリウス

冬のイメージ。
私は空が好きなので、冬の大三角「シリウス」をテーマに書きました。
シリウスって、私の中でちょっと魅惑的な星で。
全天で1番明るい恒星が教えてくれるのは「哀しみは、光」「進めよ」ということ。
歌い始め、最初は英語の歌詞でした。
「よし、レコーディングだ」と歌ってみたところ、あまりの自分の発音の素晴らしさに驚いて、日本語に変えました。
(トモミ)

アルバムの中で全てにおいて一番煮詰まった曲。
冬をテーマにした曲を作ろうと思い、しんしんと降る雪の様にコードを刻むシンセとベース、そして四つ打ちのキックで淡々と展開しようと思ったのですが余りにも単調過ぎて不安になり上手くいかず。
しかし、締切の関係上サトウさんにはこの時点で仮トラックをお渡しして作詞を依頼しました。
結果、途中から変化を付けるためリズムパターンを変更する事に。
また普段シンセにはあまり使わない深いリバーブをかけた為、ボーカルとのバランスにも四苦八苦…。
間奏で両サイドからリバースして波打っている様なサイン波シーケンスにはPortalを使っています。
メロディに関して、自分が作るものは大抵サビの譜割が細かいのですが、今回は逆でかなり少ない譜割となってます。
Bメロは途中で半音転調しており、これはTM Networkの「Sevendays War」のBメロと同じ構成です。
歌詞を読んで個人的に、数年前からのまるで雪の中に埋まったかの様な自粛生活の中で、春の雪解けを待ち希望を持って進む、そんなイメージを受けました。とても好きな歌詞です。
(24P)

5.オバケの恋人

ラブラブカップルのお話。ただ一つ、普通と違うのは、男の子がオバケだということ。
姿は見えなくとも、触れ合うことができなくとも、愛してる。
(トモミ)

この曲はコードとサビメロとして使っているモチーフだけ最初に出来ていました。
イントロで鳴っているリバースした様なシーケンスはPortalを使って作りました。
メインフレーズを奏でている変わったベルの様な音が気に入っていまして、これはAirのLoom2を使ってます。
二回目のBメロのブレイクはサトウさんのボーカルを入れてから変更したもので「いるんでしょ?」と感じている主人公の気持ちを映像で言えばカットイン的なイメージで強調したくて作りました。
またアルバム版は間奏にライブで弾いていたアドリブのシンセソロを追加しています。
(24P)

6.シャイニーシャイニー

輝かしい一生を終え、天国へ昇る時のお話し。
10年くらい前に祖父が亡くなりました。冷たくなったおでこに触れながら「人は死後どうなるのか」って、とても気になっていろいろ調べたことがあります。
美しい音楽、素敵な景色に包まれながら天国への道を進む。
ある意味、夜明だなっていう気がしました。その時のことを思い出して、執筆。
(トモミ)

最初からコードを鳴らしているシンセはCypher2 でPortalを掛けてアクセントが入る様にしています。Portal大活躍。
サトウさんはサラッと歌い上げていますが、Aメロから派手な展開を挟みブレイク後の2回目のAメロはいきなり半音下がりの転調をしているので相当歌い辛かったと思います…。すみません。
途中のコーラスワークはサトウさんにお願いして作ってもらいました。
(24P)

7.ワンダーシティ

夏のラブソング。
24Pさんとのやり取りの中で、夏を表す単語をいくつか出し合い、そこから膨らませました。カップルが、都会から抜け出して遊びに出かけるという設定。
出かける先を妄想していたら突然、2人の姿が曖昧に。
大きな気泡に包まれて、ラッセンの絵の世界に入り込んでいくような、神秘的な映像。
そんな夏のデートができたら、さぞかしロマンチックなんだろうなあ♡
(トモミ)

ハラホログラムでやりたい事の一つに季節の歌を作りたいと言うのがありまして、こちらは夏の曲です。
最初の漠然としたイメージでは宮沢りえの「NO TITLIST」の様なシャッフルビートの爽やかな曲にしたいなと思い作り始めました。
また日本の昔のエレポップバンド3dlなんかも参考として聴いていました。
初めてのシャッフルビートだったので、ちゃんと出来るか不安だったんですが、思いの外そんなに煮詰まらなかったです。
イントロの途中から鳴ってるちょっと不安定な金物っぽいシンセはLoom2、「ワンダーシティ♪」と歌っているボコーダーっぽい声はVocalSynth2を使いました。
(24P)

8.夢遊

「トロリ夢遊3分間」。
夢と現実の境にいる時って、何か、目には見えない力が働く気がします。
その奇跡的な瞬間を「夢遊」と呼ぶことにしました。
自分の気持ちに、一切嘘がつけない貴重な時間。
そして、それが分かったところで、現実へ。(トモミ)

これはサビで鳴っているシンセのバッキングが一番最初に出来ました。
凄く気に入ったフレーズだったのでTwitterにも載せちゃったりなんかして、こりゃいい曲になるな〜なんて思っていたら案の定、煮詰まりました(笑)
爽やかハウス風にしようかとも思い作ってみてもどうもハラホロっぽくなくボツに…。
もう一つの八分刻みのシンセを仮に入れたところから何となく方向性が決まってきて、最終的にはほぼ八分音符で構成されるアレンジとなりました。
サビのメロディは決まったのですが、その他がしっくり来なかったのでサトウさんへ依頼。
サトウさんが作ったAメロを聴いたイメージからボーカルは深呼吸の音以外、ノンエフェクトでドライにミックスしています。
(24P)

9.TRUTH

楽しかったです、歌詞を書くのが。
全曲の中で、1番早く完成しました。
多分30分くらいで…。
トラックの音を聞いて「こりゃ、マリオだな」っていうところから始まり、「実はとんでもなく強いピーチ姫」っていうコンセプトがババっと出来上がりました。
あとは、頭の中で、マリオの物語を全部ひっくり返して。
(トモミ)

YOASOBIの「夜に駆ける」、Adoの「うっせぇわ」などでも使われている丸の内進行と呼ばれる、使えば今時のオシャレソングになると噂のコード進行を使ってみたいと思い作り始めました。
コード進行が同じなので、この曲のバックトラックで「夜に駆ける」も歌えます(笑)
展開的に前半はエレクトロなリズムパターンで途中から四つ打ちに変更して変化を付けてます。
リードの音はSerumの他、シンセ三個ぐらいを混ぜて作っています。
お気に入りはやはりサトウさんの歌詞からインスパイアされて作ったマリオのあの音です。
それと後半の「もうイヤ〜!!」のセリフも気に入っております。
(24P)

10.愛の炎

初めて、男性目線の曲を書きました。
男の人になりきって書くと、今まで使わなかった言葉がポツリポツリと出現して、面白いなあと思いながら完成させました。
サビの「舞い上がれ愛の炎〜」の部分は、オクターブで歌っていて、男女のディープなデュエット的なかんじになっています(笑)
(トモミ)

最初はVocalSynth2に適当なラップのサンプルボイスを切って並べたものを流して、それをトリガーにコードを弾いたシンセシーケンスを作ったんですが、思いの外普通で面白くなかったのでボコーダーとして使ってみました。
それがイントロに鳴っているボイスです。
なので、VocalSynth2を外して鳴らすとめっちゃファンキーなラップの切り貼りになります。
メロディに関しては赴くままに作っていたら、Aメロとサビの高低差が大きくなり過ぎてサトウさんが普通に歌えなくなる事態に…。
そこでサトウさんのアイデアでサビだけオクターブで歌うという事になりました。
結果として、とてもサビがドラマティックに聞こえるようになり怪我の功名と言いますか、ちゃんと考えてメロディ作れよ自分、という事です…。
(24P)

11.文豪の涙

「喜怒哀楽」
全部必要な感情で、その一つ一つを確かめるために、人は生まれてきたような気がします。
それぞれが自分の完璧な物語を作っていて、それを精一杯生きてる。
足すことも引くことも必要ない。
みんな、文豪。
(トモミ)

アルバムで唯一フッと思いついてパッと作れた珍しい曲。
なのでメロディにしろアレンジにしろ自分の手癖がモロに出ています。
デモを渡した時に思いの外、サトウさんの反応がとても良くて嬉しかったのを覚えています。
途中の静かになるサビの部分はシンセにPortalと One Knob Filterを掛けてゆっくりフィルターを開いていったものをオーディオ化して切り貼りしています。
メロディをなぞっている音はAirのXpand2のカリンバをメインに使っています。
Xpand2は以前使っていたProtools 8 LEに内蔵されていて重宝していたのでCubaseに乗り換えた後も別途購入しました。
(24P)

12.中庭ノスタルジー

高校生の眩しい恋物語。
思春期ならではの、恋の駆け引きを書きました。
そしてその時のことを思い出している大人になったあなたが、ここに、いる。
あの頃は、胸がヒリヒリ痛んだり、嬉しくて舞い上がったりと忙しい毎日だったけど、あの感覚は永遠の何物にも変え難い宝物。
この曲の主人公は、今のあなたです。
(トモミ)

この曲は最初から桜ソングで徹底的にポップな曲!と決め打ちして作りました。
当時TikTokで卒業式の日に男子または女子が花束をサプライズで渡す動画を深夜に酒呑みながら観てよく号泣してまして(笑)
そんな場面に流れる様な曲を作りたいな〜と。
サトウさんにもデモを渡す際、桜のイメージである事に加え「学校、廊下、卒業、テスト、初恋」などの言葉をお伝えしました。
間奏途中から転調して半音下がっていて、そこが思いの外ちょっと切ない感が出ていて個人的に気に入ってます。
ライブでもこの曲は印象的なのか評判が良くて嬉しい限りです。
今回アルバム用に再ミックスを行ったんですが、結構音数が多かったです。
ただ、各音色がバラバラのフレーズを奏でているのではなくユニゾンだったり似た様なサブフレーズを奏でているので、そこまで音数が多くは聴こえないんですが、今回は更にEQ調整したのでシングルより派手に聴こえると思います。
地味なところですが、両サイドからロールしてそのままセンターに移っていくスネアのフィルは、同じ音でダブリングさせたスネアとセンター定位のスネアとのボリュームを相互に上げ下げして作っています。
ネタ元は第一期東京パフォーマンスドールのSLASH DANCE (編曲 久保こーじ)という曲で使われていたものです。
あと、ど頭のドラムフィルと後半のサビ入り前もシングルとは異なっています。
(24P)

13.ユメカマコトカヒカリニナル

24Pさんとの初コラボ作品。
古代文明のイメージがうわ〜っと浮かびました。
それで、海に没した伝説の帝国「アトランティス」をテーマに書くことに。
海底から海面を眺めているような感覚です。
地上で暮らしていた自分が、ある日突然、全く別の海底文明へ。
いつもとは違う場所、角度から世界を俯瞰してみると、本当のことが見えてくる。
そんなことって、あると思います。
守ってきたルールは必要じゃないってこと。
(トモミ)

サトウさんと初コラボさせてもらった記念すべき曲。
お昼のJNNニュースのジングルが凄く好きで、何かああいう感じのモチーフで曲を作れないかなと思ったのが制作のきっかけでした。
結果全く似つかなくなりましたが…。
個人的にニュース番組や深夜の天気予報のBGM全般が好きなんです。
昔だとNEWS23のPut your hands up(坂本龍一)、きょうの出来事のCorneliusが担当したオープニング、ニュースステーションの歴代オープニング、ステーションEYEのTIME(B'z)等々…。

また、これはハラホログラムバージョンという事でドラムとベースを変更、オリジナルでは右側で鳴っていたカッティングギターを差し替えてシンセを追加しています。
ツーコーラス目から半音下げの転調が入っていて、この頃からその後のハラホロ曲に繋がる展開を感じられます。
(24P)

セルフレビューいかがでしたでしょうか?
このアルバムが聴いてくれた方の心の一枚になりますように。
是非ライブでお会いしましょう!
(ハラホログラム)