読書『異端のすすめ』

今回読んだのは橋下徹氏の『異端のすすめ 強みを武器にする生き方』。


どちらかと言えば橋下氏は好きではなかったのだが、会社の後輩が熱意を持って薦めてくれたので、読まずに返すわけにはいかないと思い、気合を入れて読んでみた。


本の内容

この本はこれから社会人になる若者、入社数年目で仕事を頑張りたい若者をターゲットとした自己啓発本である。自信の経験から得た学びを若い世代に還元したい、とのこと。

本の要旨としては、燃え尽きた感を抱えて納得した最期を迎えられるかどうかが人生において最も重要であり、そのためには他から突き抜けるくらいに圧倒的な行動量を以って自身の商品価値を高める努力を継続することが大切だ、という感じ。

具体的には、

「自身のウリを作って磨くことで他者と差別化する」

「武器を複数持って掛け合わせることで、唯一無二になれる。自分は常にやったことのない方を選んできた」

「初めは質を求めず人一倍行動する。後から質はついてくる」

「行動量が多ければ巡ってくるチャンスの量も増える」

「身体を資本として捉える」

「嫌な人との付き合い方」

といった仕事や人生における教訓を著者の経験を基に語ったものである。


感想

橋下氏のこれまでの取り組みが綴られており、読み物としてはそこそこおもしろかった。特に、大阪城公園西の丸庭園でのモトクロス大会開催の背景などは著者の哲学が感じられてよかった。

一方で、自己啓発本として目新しい内容はほぼ無かった。以前、入社前に自己啓発本を読むことが課題になっていたので『入社一年目の教科書』なるものを読んだが、同じような内容だったと思う。うろ覚えだが…。

異端になるために必要なのは、特別なことではなく、日々の努力だということか。


一点、特徴が出ているなと思ったのは「確固たる持論を持つべし」というところ。しっかり調べて持論を形成しておけば、インテリと意見が違っても揺らがない、というようなことが書かれており、私が感じていた著者のイメージ通りで少し安心した笑

個人的には、社会の様々な問題は単純に解決できないからこそ他人との議論の中で新たな価値観や考え方を獲得し、互いに歩み寄るという営みに意味があると思っているので、そのスタンス大丈夫?と思った。(本の中では、新たに勉強したことや他人との議論で意見を修正する場合があることを認めているが、インテリ批判や自身の持論の精度の高さについての文脈から自説への驕りが感じられた。)


また、うまくいかなければ行動量が足りないと思えとか、燃え尽きるほど働けば納得できる人生を送れるといった内容が散見され、自己責任論的、能力主義的な考え方が感じられて私とは相容れない部分も多かった。最近は、生まれつきの能力や環境の差がその後の成功に大きな影響を与えることが社会問題となっていることを考えても、この前時代的なマッチョ過ぎる考えは受け入れられないのではないだろうか?と余計な心配をしながら読んでいた。(しかし、Amazonの評価が星4.2(420件)ととても高いことから、読者のターゲティングをしっかり行っているという見方もできると思う。やる気に満ち溢れた若者やバリバリ働くことを是としている層、橋下氏のファンが読むことを考えれば納得のいく内容であり、実際にうまくいっている。流石である。)


最後に

燃え尽きるほど働いて自分が納得できることが人生で最も大切であるという考えは、自身のこれまでの人生を肯定するために著者が信じ込もうとしているのかな?認知的なバイアスかもしれないな?と思うと(これは私の持論です)、少し好感が持てる気がする。

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