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仕事の厳しさ

令和の時代に、昭和の話をするのは本当に時代遅れですが、昔は厳しい人ががたくさんおられました。厳しいというのは、偉そうに振る舞ったり、こき使うということではなく、「いい仕事をすること」に本気で取り組み、自分にも、周りにも厳しいという人です。

私が育った映像制作の業界では、監督、カメラマン、照明、音声など、様々な独立事業主が現場に集まり、ひとつの作品を作るために、喧々諤々議論をしたり、いいものが撮れるまで何度もやり直しをして、みんなでいい作品を作ってやろうと必死に頑張っていました。

現場では何度も叱られたり、怒鳴られることもありましたが、飲み会の席でも、いい作品を作るために議論をしている先輩の姿を見ていると、やっぱり、この仕事が好きだからこそ本気になるのだなあと、カッコよさを感じ、いつの間にかこの空気が好きになり、本気になっていきました。
 
撮影というのは様々な条件の中でやりきらないといけない厳しい世界。チームが一丸とならないと良いものはできません。だからこそ、現場には、今なら、パワハラと思われるような罵声も飛び交っていましたが、そこには「いい作品を作るんだ」という夢に向かって進むチームの一体感がありました。

厳しい現場を一日頑張って、みんなで酒を飲み、次の日を迎える。先輩と語り合う中で、先輩の仕事への想いや、私を育てようとしてくれる優しさを感じることもあり、決して心がすさむことはありませんでした。知らない人から見ると厳しい世界に見えると思いますが、本当に人がいきいき働いている現場でした。
 
今は時代が変わり、若い人を怒ることも叱ることもなかなかできません。遅くまで働くこともできませんし、飲み会の機会も減ってきました。なかなか若い人に面白さを伝えることが難しくなっています。

もちろん、こんな昭和のやり方がすべて良いとは思いませんが、「良いものを作るんだ」「もっと良くしていこう」という気概がなく、ただ決められた仕事をこなすだけでは、いいものは生まれませんし、企業は成長していきません。働く人も仕事の面白さもやりがいも感じることはできないのも事実です。
 
厳しくてもいきいきと働ける組織と、厳しくて人が荒んでしまう組織と何が違うのでしょうか。
私が若い時、厳しい中でもやりがいを感じることができたのは、仲間が「みんなでいいものをつくろう」という夢があったから。この夢がない組織では、ただ仕事をするだけになってしまうでしょう。

会社でいうなら、理念やビジョン。もっと良いものを提供していこう、もっとお客様に喜んでもらおうという「共通の夢」への共感がいちばん大事なのかもしれません。

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