人に迷惑をかけるホクロの話

友達とおしゃべりしているとき「顔に何か付いているよ」と指摘されたことはありますか？

または、美容院帰りや前髪をセルフカットしたあとに「顔に髪が付いてるよ」と指摘されたことはありますか？

指摘されたことがない人は尊敬します。
指摘されたことがある人は、仲間です。
私もよく教えてもらう側の人間です。

ありがとう～と言いながら、ちょっと恥ずかしい気持ちで顔をこする。

ゴミや髪がすぐに取れて終わるときもあるけれど、なかなかソレが取れないときもある。

このあたり？
ううん、もっと上。

優しい友人たちはこう続けます。
「ちょっと目つむって。取るわ。……あれ？」

私は、ようやくそこで、ひとつの可能性に思い当たる。
「ごめん、それ、ホクロかも」

そうなると、一瞬、時間が止まります。
あ、ごめん、ホクロか～
こんなところにホクロあった？
優しい友人たちは笑ってくれますがちょっと気恥ずかしそう。
申し訳ない。私も恥ずかしいし。

私の右まぶたの上。
目をつむったら、目と眉毛のちょうど間にホクロがあります。

平らで黒色、一般的なホクロの色だと思います。
でも、横に長い。
測ってみたら、縦1mmに対して横が5mm超え。
まぶたの成長に合わせて、横に伸びやがりました。

実家に住んでいた頃は、母親からホクロについて何か言われたことはありませんでした。
ただ、実家を出て久々に会ったとき、
「前髪切ったやろ、まぶたに髪が付いてるから」
と自信満々に推理されたのが、ホクロだった。結構ビックリ。
実家にいた頃、このホクロも住んでたよ！

口元や目の下にあるホクロだと、個性として印象に残る。
位置によって、その人の魅力へ昇華される。
でも、まぶた中央ホクロは印象に残らない。
ごくたまに。急に主張してくるのみ。
なので、たびたび他人様に迷惑をかけるホクロではあったが、別に嫌な場所で悪目立ちしているわけでもなく、印象にも残らないものなので除去する予定はなかった。

というか、私も長年連れ添ったホクロなので……
鏡で顔を見るとき、洗顔でもメイクするときでも、自然な顔の一部として受け止めていた。
気になったことがない。
コンシーラーで隠すほどでもない。
（まぶただから、よれてしまいそうだし。）
他のホクロの方が気になるくらい。

でもある日、友人と対面でランチしていたときのこと。
「ねえ、今日ずっと気になってたんだけど……」
と言いにくそうに教えてくれた。
「アイライン、失敗してない？」

お分かりでしょう、犯人はまぶた中央ホクロです。
犯人が分かったときの、友人の申し訳なさそうな顔。
せっかく親切で教えてくれたのに。
私も、メイクが失敗したと思われていたのか～と恥ずかしさ爆発。
顔は真っ赤だったと思う。
このホクロ、とうとう持ち主に迷惑をかけてきた。

いや、もしかしたらずっと前から、指摘はされていないだけで、他の人から「この人、アイライン失敗してんな」と思われ続けていたのかも……
恐ろしいホクロ！！！

ということで、急に除去することを決めました。

このホクロに惑わされたことなんて、今まで指摘してくれた友人は誰も覚えていないかもしれない。
これから新しくできる友人もいるだろう。
ホクロとアイラインを勘違いするような恥なんて、二度とかかせない。
未来のために除去されるホクロよ、さらば。