あの頃のきみへ

高校2年生。冬。
全部夢にしたかった。

季節は何度も訪れて、
きみが死を意識しはじめた秋はおわる。
きみが全てを曝け出した冬がまた来る。

季節は何度も訪れる。

あの頃のきみの言葉を読み返しました。
不安で、苦しくて、
誰も抱きしめてくれなくて。
怖かったよね。甘えたかったよね。

もう大丈夫だよ。
なんて言い切れない私がいます。

まだ怖いんだ。冬に抗えない。
1年後のきみは、自殺企図をしてまた閉鎖された空間に入れられている。
2年後のきみは、毎日アルコールと男の子に依存して、夜中にしか息ができなくなっている。
3年後のきみは、周りのみんなに隠れてアルコールと安定剤を摂取して、なんとか生きながらえている。
結局薬に振り回されて、全部パーになっちゃうんだけど……。

そして、冬がまた始まろうとしている。
今年はどうなるのかな。なんて。

4年後のきみは、少し成長しました。
許せなかった母親を、さみしい女の人だったんだねと、「人間」として許せるようになりました。
仲の悪かった父親を、ここまで育ててくれたことに感謝できるようになりました。
お正月、大阪の家にシャンパンを買って帰るんだ。みんなでまた年を越せたこと、みんな元気で生きていることを祝おう。
お正月、愛知の家に京土産を持って向かうよ。喜んでくれたらうれしい。顔を見せて、こんなに立派に生きているんだってこと、伝えたいな。

人に愛をあたえることを知ったよ。
人を信じることの怖さも知った。
自分を信用したいんだ。
自分だけを信用していたいんだ。

きっと誰かを信じることは、相当強い人間じゃないと難しいことだと思う。
まだできない。私は弱い。
でも、いつかは人のことも信じてみたいって
そう思えるくらいの強さは身についたよ。

まだ不安だけど、
例年と違うのは、前を向きたいって気持ちが
やっと芽生えはじめたこと。
私は進むよ。きみは生きるよ。

きみはこれから、
たくさん絶望にさらされて、
抗えない力に屈服して、
何度も何度も後悔して、
何度も何度も間違えるし、
涙をこぼす日だって数えきれないけど、
そのぶんだけ美しい景色を見られること。
約束するよ。

きみは生きていけるよ。
きみの呼吸は私が保証する。

本当は今すぐ抱きしめてあげたかったな。

季節は何度も訪れる。

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