見出し画像

【美術ブックリスト】上路市剛作品集『受肉|INCARNATION』上路市剛著

ミケランジェロ作のダビデ像、康勝作の空也上人立像などの著名作品をモチーフに、生身の人間のようにリアルな彫刻へと作り上げる彫刻家による作品集。

美術史では語られてこなかったが、著者はこうした過去の作品には「同性愛的美意識」があったはずで、それを現代的な視点で再現しているとのこと。原型制作、型取り、彩色、植毛などの工程を経た制作は、彫刻というより「受肉化」といった方が良いようで、タイトルはそれに因む。巻末に制作に関する作家インタビューを収録。

上路市剛によるオリジナル義眼(桐箱有)が函に収められた特装版も部数限定(20部)で販売。
ここまでが概要。

ここからが感想。
アンドロイド制作の世界では「不気味の谷現象」と呼ばれる現象がある。造形物が人間に近づくにつれて親近感がわいてくるが、ある時点を超えると突然不気味さを抱き嫌悪感を催し、さらに人間に近づくと再び親近感が強くなるという現象だ。

この作品は初めて見たけども、作品は蝋人形かフィギュアのような「生」の感じがして、「不気味の谷」でいうところの谷から山への途中、つまり不気味さと親近感の両方を抱かせるものという印象をもった。

それほどリアルなのだけど、これと対照的に大理石やブロンズなどの従来の彫刻作品の良さも分かった気がする。

92ページ B5変 4000円+税 アートダイバー



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?