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【美術ブックリスト】 大友義博監修『フェルメール 生涯と全作品』

真贋が確定していない5点を含めてもわずか37点しか現存していないフェルメール作品。その中の一つ《窓辺で手紙を読む女》が修復された。

壁には、フェルメールが塗り込めたとされる画中画の存在が知られていたが、最新の研究でそれを塗り込めたのはフェルメール自身ではなく後の時代の誰かであることが分かり、今回の修復で復元された。

この修復後初めての来日展が、1月22日から4月3日、東京都美術館『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』として開催されることを受けて出版されたのが本書。しかし新型コロナの第六波の影響で開幕日が延期され、現在のところ未定のまま。

内容は、美術史的な解説を最小限にして、作品の魅力を伝えることに字数を費やしている。図版も大きくて見やすい。監修したのが学者ではなく、洋画家の大友義博さんだからだろうか。

拡大図を多用したり、大友さんによる加工画像によって技法の特徴を図解したりしていて、制作の秘密を解き明かす努力が見られるところがムックらしくもあり、ガイド本と異なる利点。ポストカード5枚付き。フェルメールについてざっくり知るにはいいと思う。


95ページ、A4判、1430円、宝島社TJMOOK


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