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ワヒロ二次小説

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不定期更新。Twitterなどで公開したものをまとめていく予定です。
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2022年5月の記事一覧

箱の中身は【#第53回whrワンドロ・ワンライ】

 ボクの変身アイテムが無様にも復活して、ヒーローらしくさっさと元気に退院したあと。

 なんだか無性にひとりの時間が欲しくなって、気付けばボクはふらふらと瓦礫降り積もる廃墟にやってきていた。初めて行く場所だけど、見るのは初めてじゃない。我ながら、道もわからないのによく辿りつけたなと思う。これが神の思し召し……なーんて、死んでも思わないけど!

「うわ、あのとき見たのとそっくりそのままおんなじだ」

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イーター、太鼓……

 イーター。円筒。ごつごつしたキュウリ。X。点々。マーライオン。

 全く共通点の見いだせないイラストたちを前にして指揮官は首を傾げた。これらの絵が描かれている黒板は、先ほどまで三年生が会議で使っていたものである。合宿施設の一室にある黒板に人やイーターの図を描き、陣形の確認や検討をしていたようだ。大変感心、と思ったはいいが、なぜか一匹の大型イーターから矢印が伸ばされ、その先に円筒の図が続いている。

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踏みしめる【#第51回whrワンドロ・ワンライ】

 すう、とゆっくり息を吸って、ふっと短く吐いた。まだ自分の喉は空気を通している。

 身に纏っている白いシャツはいつも仕事で着ているもの。同じく真っ白なパンツは洒落た服屋で買ったもの。自らのことながら、そのアンバランスさを嗤いたくなった。
 常にきっちり締めていた第一ボタンをぷつりと取り外し、くすんだ茶色の輪っかを首に掛けた。ああ、あとは足台から降りるだけ。

 さん、にい、いち。心の中で数えて、

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