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名前をつけてやる。

子供の頃は、よく蚊に刺されたものです。

蚊に喰われたなんて言い方もありました。

どういうことか、大人になるとそれ程でもなくなったのです。

蚊に刺されることも少なくなったのです。

美味しくなくなったのかもしれません。

つまらない体になったのでしょう。

それでも時々蚊に刺されたときは、患部を爪で十字に押します。

それでもダメなら更にバツの字に押すのです。

世界基準。

どこの国でもそうしてるはずなのです。


世界基準のはずだったのに、大人の僕は最近ムヒなんて使うようになりました。

先日も、ちょっとお値段お高いムヒを買ってみたのです。

お値段お高いムヒですので、なんだか効果が素敵な気がします。

娘に貸したら、

「効き目が高級な感じがするよ。」

なんて言うのです。


そんなことを言いながら、足にムヒを塗っている娘を見ていると、なんだか楽しいような悲しいような思いがします。

こんな夏は、もうやって来ないように思うのです。

僕が歳を取ったのでしょう。

娘が大きくなったのです。

今年の夏も間もなく終わるのです。


そんな高級なムヒを息子に貸したところ

「ひー、ちんちんに塗ったら凄いスースーするよ、パパ。」

なんて言っていてびっくり。

扇風機の風をチンチンに当てながら、ニコニコしている息子にびっくりということ。

扇風機の風はもちろん「強」なのは納得のところ。


こんな夏はもうやって来ないよなあということ。

いや来年くらいは、まだやって来るかもということ。

どちらにしても、今年の夏は間もなく終わるのです。


「私の高級なムヒに何してくれてんだ。」

と鬼の形相の娘には、

「君のムヒじゃないよ。僕のだよ。」

と伝えておきたいと思うのです。


どうでしょう。

こんな夏はどうでしょう。


蚊に刺されなくなったのです。

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