保育士の私が子どもたちから教えてもらったこと…(僕、楽器は嫌いって言いたかった)

※名前は仮名です。

トモアキ君は年中の男の子。いつも元気いっぱいのワンパクボーイ…ではないですが、まぁまぁ活発な子です。
午後のドッチボールではけっこう目立つ存在でした。

さて、当時の保育園ではたくさん行事があって、子どもたちは季節を感じたりする機会はとても多かったと思います。端午の節句・梅雨・夏キャンプ・十五夜、地域の祭り(盆踊り)・秋刀魚を焼く会もありました。
冬のお楽しみといえばクリスマス会なのですが、その前に生活発表会という大イベントがあり、保護者の皆さんの前でダンスや劇、合奏などを披露することになっていました。(表題の通り、トモアキ君は、楽器に苦手意識を持っていました。)
練習が始まるのは運動会が終わって少し経った頃。得意なものを一つだけ披露すれば良いのではなく、年中さんはダンスと劇と楽器演奏をやることになっていました。この頃からトモアキ君の登園しぶりが始まりました。お母さんは風邪をひいた様子もなく、友だちと遊ぶのも楽しいと話すトモアキ君の異変に首をかしげながら、担任の先生に話をしています。担任は『トモアキ君は発表会の練習、とても上手に踊っていますよ。』と良いことを伝えていました。心配させたくないという思いもあったと思いますが、実際のところ本当にダンスは上手いのです。
私はお手伝いに入った時のトモアキ君の表情で、楽器が苦手なのだと推測しました。特に音やタイミングを外したりして演奏に大きな支障があるわけではないので、担任は今のところ気づいていないようです。でも明らかにダンスの時のトモアキ君の表情と合奏の時では違いがわかりました。
遅番の時、迎えにきたお母さんに飛びつくトモアキ君…私はお母さんに『今日、トモアキ君のクラスにお手伝いに入りました。トモアキ君、何でも一生懸命な子どもさんですね。お家でゆっくり休んでくださいね。』とお話すると、お母さんもにっこり笑ってくださいました。

発表会が終わってはじめての遅番で、トモアキ君にこっそり聞いてみました。『トモアキ君、実は楽器、大変だったんじゃない?』すると即答、『うん。俺は苦手だからやりたくないって言いたかった。』『良く頑張ったね。心の中で応援しながら見ていたよ。』トモアキ君はえっ?という顔で私を見ました。

私たちは子どもの成長を願って保育しています。その思いは揺るぎないものだと思います。
しかし、【主語を子どもに向けているのか】この視点で立ち止まり、見直していく必要があると感じます。
子どもの成長に何が必要か…かつては《保育に欠ける》福祉施設としての保育所でしたが、今はその要素を根底に置きつつも《認定子ども園》として、社会の役割が変わってきているのではないかと考えます。

・その子の得意、不得意を見極める
・自分で考え行動する、自己決定を尊重する
・苦手なことは支援して、得意なことを伸ばす
・家庭・園・地域の中で子育てをしていく


*上記4項目については、子育ては障がいが【ある】
【ない】関係無く、全ての子供に言えることだと、私は思います。

トモアキ君がもし、自分で[苦手だけど楽器にチャレンジしよう]と思って決めたのであれば、登園しぶりはなかったと思うし、表情ももっと良かっただろうなぁと想像しています。




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