First Tamron (J limited 01 / smc PENTAX-FA 28-105mmF4-5.6[IF])
先日のPENTAX一眼レフ体験会大阪の物販で、3000円で売ってたFA28-105mmF4-5.6[IF]。
[IF]とつけるのは、パワーズーム時代にスペック上全く同じFA28-105mmF4-5.6が1991年に既出だからで、今回の[IF]の方は99年発売。
これはTamron 79DのOEMでした。
とはいえ完全に同じものではなく、若干外装が違うのと、コーティングが異なるとのことです。
F70-210mmといっしょに山田池公園のほうで試写していたので、さっそくいってみましょう。
実写
祝園駅で近鉄から乗り換えて改札を抜けるとそこは、40分後まで電車はこない。ふと向こうを見るとなんか止まっている。
私は鉄道には詳しくないのでぐぐってみると、マルチプルタイタンパーというものらしい。レールの歪みを直すものだとか。
でまあ、F9.5と絞り込んでるのもあって、至ってふつうによく写ってますね。ちょっとだけ明暗の境目にフリンジ出るくらいか。
ボケもまあまあ悪くない。多分後ボケのほうがきれいかな。
近接で画質が乱れることもなさそうですが、ただインナーフォーカスなんで近接で像倍率が下がっちゃう。最短は0.5mなのに0.18倍しかない。
広角側でもさほど歪曲も見えない。
上質な単焦点レンズほどキレキレの写りしてるわけでもないですが、まあこれくらいだとファインシャープネスかけるとぐっと引き締まるな。
こんな遅いシャッタースピードでも増感しないんだなあ。K-1はK-70より感度上げないで速度遅くする露出なのかな。入門機のK-70と違って、K-1系はわかってる人が使うもんだろという仕様っぽい。
縁取りの小さい、なかなか良さげな後ボケしてる感じ。
隅の方では玉ボケがレモン形になるっぽいので、口径食はありそう。開放だと周辺光量落ちるかな。
実は今回、それほど良いレンズだとは期待してなかったもので、ずっと絞り優先F9.5で撮影しておりまして、開放は近接だけです。それじゃ作例にならん……。
F9.5なら全然悪いところないな。
流石にこんなんだとゴーストが少し出ましたけど、この程度で文句言うにもあたらない。
F13はなら小絞りボケもまだ気にならない。
右上にちょっとオレンジのゴーストがあるな。なおフードはついてなかったので、つければ違うかも。なおTamronのフード型番はD3FH、PENTAXはPH-RBA62です。互換性あるかは知らないです。
ホトケノザも、今まで暮らしてた都心部ではこんなもっさもさ盛大に花つけまくる感じは見れなかったな。
あ、忘れてたけど買った当日に撮ったカットも少しあるんだった。
ズーム中間、開放近く。この大きさだとわかりにくいですが、全体的にはソツない写り、拡大したら後ボケがちょっと硬いかな、というくらい。
私F9.5が好きなのかな。なぜこの数字に……?
広角端で近距離、ちょっとだけ隅が甘くなるかなって程度。やはり安定した写り。
F8だと途端に甘い写りに……なったりはしませんね。
接写能力があまり強くないのだけ惜しいかな。
うーむ、「OEMだし」という偏見は持ってしまうものの、絞って使う分には実に安定した写りしてますね。タムロンもさすが老舗の実力よ。
PENTAX用としては太めだけど長くはないし、重量も305gと軽い。この軽さでこれだけ写れば、旅行用にいいかも。
PENTAX Forumsだと、PENTAX版はさほど評価高くない、Tamron版は好評という感じ。光学系は同じやんね……?
レビューをざっと見る限り、ちょっと組み立て品質にばらつきがあるらしく、悪いやつもあるみたい。私のは一度PENTAXでなんらかのチェックを通ってきたと思われる個体だから、状態のいいやつだったかも。
良いのが当たれば、軽くて非常に安定した写りの実用レンズといえると思います。
キャップについて
このレンズはキャップのサイズが62mmという、当時のPENTAXでは非常にレア、おそらく初めてのサイズでした。(今はたくさんあります)
そういう製品はキャップまでOEMで、形はタムロンでPENTAXロゴというレアなキャップがついてたという噂も。
あいにく手元のやつは最近のPENTAXキャップがついてたので、当時物ではなさそう。当時どうだったのかなあ。
他にFA28-200mmF3.8-5.6も、72mmという当時のPENTAXにはなかったサイズ。私がレアキャップの話を聞いたのはこっちでした。
90年代後半のPENTAXとOEMレンズ
90年代末のPENTAXは、レンズラインナップにコシナ(FAマクロ100mmF3.5)やタムロン(FA28-105mm[IF]、FA28-200mm、海外向けFA28-80mmF3.5-5.6AL)のOEMレンズを出しました。
原則的にはどこも自前主義のカメラ業界ながら、バブル崩壊と阪神淡路大震災・オウム事件を経て急速に落ち込んでいく時代の中、ニコンやキヤノンほど体力のないPENTAXは、ラインナップ維持のためにOEMに頼らざるを得なくなった……というのは、まあわかります。
さらに、不景気のみならずもうひとつ理由もあった気がして。
PENTAXは95年ごろ、一眼レフボディを重厚なZシリーズから小型軽量のMZシリーズに切り替えるわけですが、Zシリーズ時代に作ったパワーズームレンズも切り捨てていく必要に晒されます。
FAパワーズームレンズって、モーターが余分に入ってるから大きく重たくなってます。MZの軽いボディとはバランスが悪い。
のみならず、どうもボディが大きいからとレンズもかなり大きめに作っていた節もある。モーター抜いてもまだでかくて重たそう。
さらにいうと、ズーミングするとピント位置が動くバリフォーカルレンズとして作ってたものもあった。これはパワーズーム機能の一巻として、ズーム移動後の自動再フォーカス機能があるからOKとしたものでしょうから、MZでパワーズームを切るならそれもどうか。(これはAF機なら別にいい気もしますが)
結局、パワーズームレンズとして発売され、光学系を変えずにパワーズーム省略版が出たのは、FA→F100-300mmF4.5-5.6だけでした。
ニコンとキヤノンはパワーズームに手出ししなかった。
ミノルタはパワーズームで未来的多機能路線に突っ込んで盛大に滑ったんですけど、レンズを見る感じ、パワーズーム外せば普通のサイズ感のレンズになるのが多かったようです。大体のレンズはパワーズーム外して再発売されてますから、レンズの被害は意外とそれほどでもない。
PENTAXだけ、一旦パワーズームレンズを諦めて、全とっかえが必要な状況になってしまった。
MZ-5から新シリーズ展開を始めた95年時点で、用意できた標準ズームはFA28-70mmF4。これは小さすぎるくらい小さくまとめて、F値通しで写りもいいといわれていたレンズでした。
次の廉価機MZ-10やMZ-50には、Zシリーズ時代にパワーズームを省略した廉価レンズとして作ってあったF35-80mmF4-5.6をつける。
あとは高級ズームとしてFA☆28-70mmF2.8があって、これはパワーズームだけど高級レンズなら重さは許容されるのでよし、と。
しかし少し前、キヤノンが93年にEOS Kissに28-80mmF3.5-5.6を用意して、95年には中級機EOS55に28-105mmF3.5-4.5をつけてたんですよね。
ミノルタもニコンも以前から28-80mmくらい用意してます。28-105mmはニコンにはなかったようですが(99年発売)、ミノルタにはある。
小型軽量で差異化しているとはいえ、PENTAXだけ35-80mmF4-5.6と28-70mmF4では、カタログスペックで負けてる。旧製品もコンセプトに合わないから切り捨てなきゃいけない。うーん。
それでPENTAXレンズは、小型軽量の新型FA28-80mmF3.5-5.6と、FA28-105mmF4-5.6(かF3.5-4.5あたり)の開発は急ぎたいんじゃないかと思います。キットレンズとして数が出る商品だし、新規ユーザーが最初に触れるレンズが見劣るものだと、メーカーの印象が落ちる。
しかし、FA28-80mmの発売は98年まで遅れ、FA28-105mm[IF]は結局TamronからOEMして99年発売になっちゃうのでした。自社開発のFA28-105mmF3.2-4.5は追って2001年発売になります。
これは開発に手こずって遅くなってしまったのだろうか……?
90年代後半のPENTAXレンズは、FA Limitedレンズが登場したり、Fフィッシュアイズーム17-28mmとかFA Soft 28mmとかの個性派レンズが現れたりと、かなり偏った動きを見せていました。
それからデジカメの研究開発もしてるはずの時期。97年には早くもデジカメ初号機EI-C90が発売されてますが、ボディ・液晶ユニット分離式のなかなか異様なモデルです。
このへんが忙しかったんじゃないかなあ、とは想像できます。
楽しそうなもの先に作ってたら28-80mmなんてスタンダードが後回しになってた……という愉快な有様が想像されますが、これはまあ、「そうだったら面白いな」という私の妄想です。
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