木村@2335085kimula

普段は小説書いてる酒飲み

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スーサイドメーカーの節度ある晩餐

あらすじ 久留木舞(くるきまい)は深夜のコンビニにタクシーがダイナミックに入店する現場に居合わせた。久留木はその事故よりも、自分の傷の手当てをしてくれた青年――松下白翔(まつしたあきと)に対して言い知れぬ恐怖を抱く。『関わってはいけない』そう思っているのに、松下の押しの強さに負けて、久留木は彼と行動を共にするようになる。 登場人物主人公 久留木舞 年齢:29歳 性別:女性 職業:プロ雀士 趣味:料理 服装:フリルのあしらわれた服、ショートパンツを好む 確率を重視した理詰め戦

    • 創作大賞だめだったー! といいつつ、noteに小説をあげて評価してもらえたのは嬉しいので、次回も参加したいです。また頑張ります! 

      • こちらは割と平和にやっておりますので

        創作大賞の中間通った作品の元の作品をnoteでも公開をしておきます! こちらの読み切り版の二人も個人的にはお気に入りです。 お楽しみいただければ幸いです。 第一話 安売りの山菜で ◇ 久留木舞  勝鬨橋を自転車で渡る。  築地市場から勝どきを繋ぐこの橋からの夜景は左右で色が異なる。上流側は低く平たい市場の光が等間隔に川に落ち、遠くに少し先の曲がった東京タワーが見える。どことなく工場地帯を彷彿とさせる夜景だ。一方で下流側はライトアップされた佃大橋や中央大橋、高くそびえ立つ

        • 創作大賞2023中間通りました!

          スーサイドメーカーの節度ある晩餐が創作大賞2023ミステリー小説部門で、中間選考通りましたー! うれしー! これをきっかけにまた読んでくれる人が増えると嬉しいです! これからも小説ちまちま書くのでよろしくお願いします!

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        スーサイドメーカーの節度ある晩餐

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        • 失恋ファイブ
          13本
        • スーサイドメーカーの節度ある晩餐
          8本
        • ニューヨーク旅行備忘録(2023年2月)
          3本

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          エピローグ

          ◇ レッド 「続木、飲みに行かね?」  と、ブルーこと水戸に初めて誘われたときは『これは、ワンチャン?』と正直思った。  作っているロボットは変態臭いけど特許持ちの超一流技術者。独身二十六歳。彼女いなければ最高株だと。  しかしその飲み会で彼は私の手を取ると、こう言った。 「続木は、……結婚線がない」 「処されたいのか?」 「化けの皮剥がれるのはやいな。ウケる」  トゥルンと口から滑った乱暴な言葉を水戸はクスクス笑った。  その、女らしさみたいなものを気にも留めていな

          第5話 閑話

          実らない恋がいい◇ ブルー 「お前がすきだ」  そう言ったとき、優は心底不思議そうに俺を見た。  そのときの彼の顔がかわいすぎて俺は笑ってしまった。 「なんだよ、その顔」  その顔を見て、はっきりとわかった。  優は俺のことをそんな風には少しもすきじゃないってこと。そして、それが俺には心地よくて仕方がないってことだ。  教室に入り込む夕焼けの橙色が目に染みた。失恋って綺麗だなと思った。世界中から祝福されているみたいに綺麗だなと思った。  本音を言えば、もとから付き合

          第5話 異世界転生したくないならすっこんでろ(レッドの場合)

          ◇ レッドこと『続木 宮子』の場合  合コンを主催することもあるし、誘われることも多いし、男を紹介されることだって週にニ回はある。それだけ男と付き合いたいと思っている女として私――続木宮子は自認も公認もされているわけだ。  男と付き合いたいから、髪型を整えて、メイクを整えて、発声まで整えて、にこりと笑う。首元にはダイスのネックレスを、耳にはガラスのピアス、指先にはシャンパンゴールドのラメをちりばめる。  目指すは女子アナか彼氏に近づけたくない女、とにかくモテそうな女だ。口紅

          第5話 異世界転生したくないならすっこんでろ(レッドの場合)

          第4話 閑話

          質問した私がばかだった◇ レッド 「心理テストです。あなたにとって鞄ってなんですか?」  ピンクは「なんですか」と困惑している声をあげたが私が睨むと「俺はこればかり使ってます」と傍らにあった登山用の鞄を持ち上げた。タウンユースもできるから気に入っているらしい(それは建前で、本音は例の二宮君からもらったものだからだ)。ブルーは「あんま鞄使わねえな。マァ、入りゃいい」と答えた。クズらしい回答である。イエローは「持ってねえ。鞄持つと荷物増えるしな」と笑った。確かに彼が鞄を持って

          第4話 大人だから嘘を吐く(グリーンの場合)

          ◇ グリーンこと楠木先生の場合  教職とは教えるためだけの存在だ。身体的な接触は最低限でいいし、必要な感情は教える喜びと教わる喜びだけだ。 「先生、すきなんです」  なのにどういうわけかわたしはこういうことになることが多い。  この件についてはレッドから『だってグリーンの雰囲気、未亡人だもん。そりゃ男子高校生ホイホイでしょ』と恐ろしいことを言われたことがあるが……もしそうなら御払いとかではどうにもならないのだろうか……。いや、告白されること自体はいいのだ。年に十回はある

          第4話 大人だから嘘を吐く(グリーンの場合)

          第3話 閑話

          最果てから帰れない◆ まみ(すーさんの元カノ)  電話が切られた。初めて彼から電話を切られた。  明るくて優しかった恋人がもう二度と手の届かない人になってしまったことがはっきりとわかった。息がしにくい。あんなにも楽しい時間をくれた彼は、もう二度と私の前で微笑まない。それどころか、私は彼に何も返せないままだ。胸のあたりが痛い。心臓がバクバクと煩い。  ――俺と付き合うと病む人多いけど大丈夫?  付き合う前に彼が言った言葉だ。そのときは意味がよくわからなかったけれど、付き合

          第3話 それが一番難しいと知っている(イエローの場合)

          ◇ イエローことすーさんの場合 『つーことで優の話をしといた』 「自殺止めとして最強の手札だよな、それ」 『それでも衝動で死ぬ可能性はあるからな……マァ、いいや。暇なら夕飯食おうよ、今日。俺んちで宅飲み二日連続パーリーナイト』 「なんだそれ。いいよ。んじゃまたあとで」 『ん。よろしく、すーさん』 「うぃー」  水戸君との電話を切ってから窓の外を見る。蝉がうるさく、空が高い。  夏だ。  帰ったらアイス食べようと決めて顔を洗う。もうすぐ昼休憩の終わりだ。  タオルで顔をふい

          第3話 それが一番難しいと知っている(イエローの場合)

          第2話 閑話

          寂しさは骨に染みる◆ 作田(水戸恭一の中学時代担任教師) 「よう、センセ。お礼参りだ。殺してやるよ」  中学の卒業式が終わったあと、水戸はそんなことを言って俺に抱きついてきた。  正直本当に殴られると思っていたから、その子どもらしい仕草にかなり驚いた。水戸は俺を抱き締めながら「ビビってんだろ、心拍数半端じゃねえぞ。死ぬのか?」とケタケタ笑った。  この水戸恭一という生徒は中学入学時から様々な問題を抱えていた。  授業で習うことの大半を既に知っているだとか、自分の痛みに鈍感

          第2話 今のところはまだ存命(ブルーの場合)

          ◇ ブルーこと『水戸 恭一』の場合 「目が覚めたら変態の家とか……」 「路上で起きるよりましだろうが」  水戸家次男として産まれ恭一という名前をつけられかれこれ二十九年。とりあえずなんとか生きてきたよくいる普通の人間なのに、どういうわけか俺――水戸恭一は変態だと言われたり、クズだと言われたり、この世の終わりだと言われたりする。どうもこの世界は、まだ俺の速度に追い付けていないらしい。  朝からぶつくさ言っているピンクは無視してイエローことすーさんに電話をかける。まだ出勤前だ

          第2話 今のところはまだ存命(ブルーの場合)

          第1話 閑話

          どうせ俺の予想を裏切らない◆ 二宮  ニィノが怒ったところを俺は見たことがない。叱りはするけれど怒ることはないからだ。  ニィノはいつも俺を優先してくれるし、いつも俺を立ててくれる。前世で俺はお姫様でニィノは俺に仕える騎士だったんじゃないかというぐらい、ニィノは俺を大事にしてくれる。生まれたときからそうだから、死ぬまでそうだ。ニィノはこれから先も俺の面倒を見てくれる。だってそのぐらいニィノは俺がすきなんだ。  それを疑ったことなんてなかった。 「ごめん。俺、このあと飲み会

          プロローグ

          ◇レッド  失恋には酒。  酒には酒場。  昔から『そう』相場が決まっているのだ。  だから今、私が酒場で酒を飲むことは『正しい』選択なのだ。  一息に飲み干したら手を上げて「おかわり」と頼み、届いた先から杯をあけていく。  この行動には『なにひとつ』問題はない。  というのに同じ卓に座っていた男どもがため息をつきやがった。 「レッド、飲み方が荒れてるぞ」 「うるさいブルー、黙って注げ」 「またフラれたんか、レッド?」 「黙れイエロー、ハラワタえぐるぞ」 「もう

          第1話 それが分かれば苦労はしない(ピンクの場合)

          ◇ ピンクこと『一 幸人』の場合  大学の中庭の喫煙スペースに置かれたベンチにそのオレンジ頭を見つけた。禁煙すると言ったその口で煙草をくわえて「だーめだったわー」と笑っている二宮の頭は、今日もどこまでも軽薄なオレンジ色をしている。  俺――一 幸人は一緒に歩いていた学友に「悪い、ちょっとあの馬鹿つかまえてくるわ」と告げ、中庭に駆け出した。久しぶりの二宮に胸が高鳴るのがわかる。でも犬のように駆け寄るのも癪で、気が付かれないように背後からゆっくり近づき、そのオレンジ頭を思いきり

          第1話 それが分かれば苦労はしない(ピンクの場合)