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小説:とある小説書きはパンを喰う

小説とは何か。

私は歩きながら考える。たぶん、何を書いても物語なら小説となるのだろう。だが、面白いかどうかは別だ。

「でも面白いとはなんだ」

そう呟いた瞬間に目の前で自転車同士がぶつかりそうになった。一人が少し不満げに避けると、何も言わずに走り去っていく。
小説ならここは何か会話があるだろう。だが現実は何もない、ブレーキ音が少ししただけだ。

スーパーはまだ開いていないので、前に自転車を停めると、その人は入り口の前に立ちつくした。
私はカーブで左へと曲がると、そこに動物病院がある。動物病院のはずだ……よく看板を確認するために見上げる。
ちゃんと動物病院だった。私の記憶は意外と正しいようである。

「さて、面白いとは何かだ」

考えても分からない私は馬鹿なのか。小説を書いても、一次選考も通らない私は考えるのをやめる。
不意に座りたくなるが、中学校の前なのでやめた。不審者で捕まりたくないからだ。

どうせ、分からないのだ。

そんな思いもあったのだろう、私は公園に向かって歩いていく。きっと私の中にない、何かが面白いのだろう。何を書いてもどこかで見た設定の焼き増しだ。
恐らく私が書いたものは、面白いかという概念で言えば、面白くは無いのだろう。

「百円もないのか」

最近は電子マネーである。公園の横にあった自動販売機は、硬貨のみが入るものだった。
小説ならここで誰かが硬貨を入れてくれて、物語が始まるのか……そんなことも考える。

現実にそんなやつがいたら、怪しいだけだろう。

礼を言う気にもなれない。しかし、それを普通に書けるのが小説家か……ふと、もう一度考える。妄想。
現実を見ないことが面白いのか、そうかもしれない。走れメロスは矛盾だらけだ。普通なら話も聞かずに王様に処刑されているし、そんな罪を犯した兄が結婚式にこられても困るだろう。ましてや、帰りを信じて身代わりになる友達など……。
そこで思考が止まる。ともだち……とはそういうものなのか。

スマホで検索をしてみたが、現在ではそんなのは稀のようだ。命がかかっているのだ、そうかもしれない。
私はそんなことを考えながら、歩いていくと公園のベンチに座る。ここでベンチが壊れれば面白いのか。いや、ベタ過ぎないか。面白いとはギャグとかコントとかではないはずだ。
そんなことを考えてると、一羽の鳥が目の前を歩いていった。

横断歩道を歩くと、寺の前に出て、その先はまた中学校である。中学校の校庭は見ない。
いや、人間を観察したい気持ちはある。だが、変質者だと思われるのは、死ぬほど嫌なのだ。
そんなプライドが真っすぐ顔を前に向ける、
コンビニが近い。

「漫画みたく、面白いものが書ければな」

私は神様を信じない。ここまでの人生でありがたみが、感じられないからだ。信じられるのは、間違って異世界転生した時だけど断言できる。
でもチート能力をもらえなかったら、存在を信じても恨むだろう。

そんな意味のないことを考えていると、前から自転車がきた。
なぜに歩道に自転車がいる。
そう思うが学生には法律など関係ないのだろう、お前がどけとばかりにこっちを睨む。女子高生がそんなに偉いのか。私は思うが、仕方なくどいてやる。
ついでに事故にでも遭えばいいのに、と普通に思う。

他人に必要以上に偉そうにするやつは、この世にいないほうがいい。

これは普通に思うことだ。私だけかもしれない。
最近はカスハラとか社会問題になっているのだ。そんな偉そうな女子中学生や高校生も、その辺の○○ハラを誰か作ってくれて法律で制限して欲しいと思う。

結局、面白いとは分からないのだ。きっと、一生分からない気がする。いや生まれ変わっても分からないだろう。

私は生まれ変わりたくもないし、人生をやり直したくない。

どうせもう一度生きても、チートはもらえないはずだ。二回目だからと上手くいくわけもない。他人の能力のほうが高ければ、相対的に何をしようと負けるのは当たり前だ。

面白いとは何か。

そんなものは誰にもわからないのだろう。それを求めて、作品を生み続けてる人たちが何万人も挫折していく世の中である。
私のような何もない人間に、何か凄いことができる訳もないのだ。

コンビニに入ると、いつものパンが無いことに気がついた。
仕方がない別のものを探すか……と、ふと視線を動かす。ピザパンにカレーパン。なぜかカレーパンが少し変形している。

なぜだ、だれか強く握ったのか。悪い奴だ。

パンは握るものでは無い、食べるものだ。そんなこと真面目に考える。そうして見ていたら、誰か私を邪魔そうに見ながら、横から手を出した。
そしてカレーパンを手にすると、そのままレジへと持っていく。潰れてはいたが、食べられなくはない。そう思って、言わなかった罪悪感を消した。

外にでると空は青く、右手には別の棚に置き場が変わっていた、いつものパンを握っていた。

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