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十日町市でアートを見に行く(縄文巡り外伝)

旅に出ればいつも忙しなく考古館を巡ってしまう僕ですが、先日のお馴染みの十日町市の旅はちゃんとアートを見てきました。実は十日町市とそのエリアは2000年に始まった世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」の舞台。今までほとんど行ってなかったけど、十日町市のアートはすごい!

越後妻有里山現代美術館 MonET


まずは街中にある「越後妻有里山現代美術館 MonET」へ、駐車場から見える外壁には勝坂式の土器に描かれるような未確認水棲生物が!(浅井裕介『physis』)

MonETには巨大な中庭があり、水が張られているのだけど、下から見ても何がなんなのかはよくわからない。しかし、2階のある角度から見ると…レアンドロ・エルリッヒ『Palimpsest: 空の池』

ニコラ・ダロ『エアリエル』、民具の置かれたステージで妖精たちがダンスする。シーツのお化けのようでどこかユーモラスで楽しい。映画『A GHOST STORY 』を思い出してちょっと切ない気持ちにもなった。

栗田宏一『ソイル・ライブラリー/新潟』、新潟県の各地域の土を集めて綺麗な土のカラーチャートに。土器も場所の土によって色が変わるから、これ土器でやったら面白いよなと思いながら見る。

クワクボリョウタ『LOST#6』もずっとみていられる。暗い中を走るおもちゃの電車のライトが、線路脇に置かれた織物の道具を照らし、影絵として壁に投影される。最後のトンネルのシーンは超クライマックスでアガるので必見です。

他にもたくさんの作品が展示されているけれど、少しだけ紹介。しかし、中庭全体を使った作品である『Palimpsest: 空の池』は美術館建ててからの作品なのか、作品ありきの建築なのか、どっちなんだろう。

越後妻有里山現代美術館 MonETのカフェとミュージアムショップも良い感じ。テーブルは並べると信濃川になるんだという。(マッシモ・バルトリーニ feat. ロレンツォ・ビニ『Two River』)

越後妻有里山現代美術館のマークかわいいなと思ってたら、これは江戸時代の越後魚沼の雪国の暮らしを紹介した『北越雪譜』の中に登場する雪男だということだ。雪男可愛い。つーか『北越雪譜』面白そう。
こういうのを適材適所というのだろうな。雪男の保冷剤にサイダー。

光の館


十日町市で「光の館」は必ず行きたかった場所だ。この館はジェームズ・タレルの作品で、瞑想の館でもある。 アウトサイドインという部屋の天井にはシャープな天窓があり、ここからうつろう空を絵画のように眺めることができる。 雨の日は自動で屋根を動かし閉じることもできる。

ジェームズ・タレルの建築作品がここにあることもすごいのですが、タレルは谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』からこの館の構想を組み立てた。アウトサイドイン以外の部屋は薄暗く、まさしく羊羹のようにも感じる。お風呂は夜、全然違った景色を見せるとのことだ。

今回は見学だけだったけど、光の館は泊まることができる。ここで静かに過ごし初めてその真価を感じることができるだろう。多分。今度は泊まりに行きたいと思う。

最後の教室


十日町市でクリスチャン・ボルタンスキー+ジャンカルマンの「最後の教室」という廃校を丸々使ったアートを見に行く。 もちろん現代アートなんだけど、なんだか肝試しやお化け屋敷の趣があって、暗い校舎を恐る恐る進んでいくのだけど、怖さというよりもなぜか強烈に懐かしさが襲ってくる。

自分か誰かの記憶の中を歩くような体験で、人によっては泣いちゃうんじゃないかと思いながら見る。

しかし、廃校を丸々アートにするなんて、十日町市は懐が深いなとしみじみ思う。体験すればここにこれが常設であることがすごく豊かに思える。

大棟山美術博物館/坂口安吾記念館


現代アートではないけれど十日町市で700年近い歴史を持つ造り酒屋の旧宅「大棟山美術博物館/坂口安吾記念館」を見学。冬季休館となる前日に滑り込みで見てきました。造り酒屋だった名残で煙突があり、山寺のような門までの道が苔むして良い感じ。

裏の山から湧き水があり、水だけを汲みにくる人も多いという。邸宅は広く、綺麗に手入れされている。今では貴重な歪みのある窓ガラスから庭を眺める。ここの山桜は筑紫哲也さんがいた頃のnews23がオープニングの中継に訪れたこともあるとのことだ。広間では北越雪譜の鈴木牧之のパネル展をやっていた。

大棟山美術博物館の建物の村山家は坂口安吾と親戚関係にあり、安吾の書斎が残されていることから坂口安吾記念館となっている。 たくさんある本は、安吾の蔵書だったのか、蔵書印とかあるなら見せてもらいたかったが、すっかり忘れていた。

さすがの邸宅なので、お宝らしきものがゴロゴロ展示されているのだけど、おっ岸田劉生の麗子像?と思ったら岸田劉生の弟子の椿 貞雄の絵だった。まさか師匠からおかっぱが受け継がれるとは… しかし、邸宅を探索するのは楽しい。YouTuberの自宅紹介動画が回る理由がなんとなくわかる。

まつだい「農舞台」フィールドミュージアム


大地の芸術祭の拠点のひとつ、まつだい「農舞台」フィールドミュージアム。ここから見たかったイリヤ&エミリア・カバコフの「棚田」を見る。農舞台の展望台から見ると、青と黄色の彫刻と詩が融合する。

農舞台の中でも人気の作品「関係 - 黒板の教室」河口龍夫 教室全体が黒板となっていて、どこにでもなんでもチョークで書くことができるという、落書き大好き少年にとっては夢のような教室。

絶対やるやついるだろうなと思ったらやっぱり…そーれ!


十日町市のまつだい「農舞台」から山頂に向けて山を登る道すがらにたくさんのアートを目にすることができる。途中までは車で行けるが、歩いても楽しい。個人的にはトンボの作品(田中信太郎『○△□の塔と赤とんぼ』)が良かった。

松代城

まつだい「農舞台」から、ひいひい言いながら山を登ると小さなお城、「松代城」がある。この3階建てのお城の内部は階ごとにアートになっている。 1階はエステル・ストッカーの「憧れの眺望」。気分はTRON, 電脳空間に紛れ込んだみたいになれる。


2階に上がるとそこには黄金の茶室が。豊福亮さんの「楽聚第」黒く塗られた艶々の石が金色を際立たせている。

3階の天守閣は鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志による「脱皮する時」。荒々しく削られた床は黒い草原に浮かんでいるように見えて不思議な空間。 ここから見る外の景色も良かった。

Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)

こちらは昨年の雪の日に行ったTunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)このトンネルも(マ・ヤンソン / MAD アーキテクツ)人気の作品だ。


大地の芸術祭、十日町のアートの良いところは、全て越後妻有の土地、地元から派生しているアートだということだ。ここでしか見れない、ここでしか意味がない作品がほとんどだ。しかも数日じゃとてもじゃないけど回れない。しかも今回見た作品は通年の展示のもので、トリエンナーレの期間中でもない。そして作品も増えている。
僕にとっては縄文の地の十日町市は、こんなにもアートな街だった。

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