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縄文ZINE4号はアイヌ特集でした

アイヌはいる。

そんなところから始めないといけないのかと、暗澹たる気持ちになった。ウポポイというアイヌ文化の復興・発展のための拠点となるナショナルセンターができてから、アイヌへのヘイトが日に日に酷くなっていく。

こういうのは無視するのが一番ではあるし、こうやって外野から何かいうこともアイヌもまた良くは思わないんだろうなというのも良くわかっている。それでも変な誤解やデマとヘイトが流布している現状には一言二言言わせてもらいたい。

ウポポイについてはアイヌからも批判は受けている。もっと正しくちゃんとアイヌ文化を伝えてほしいという声や、現在進行形でもある迫害や差別の歴史にもっと目を向けてほしい、アイヌ文化をこんな形で消費するな、という、もっともな批判。そもそも日本を多民族国家だと認めたがらない保守系の党が主導したことも、文科大臣のあまりにも現実を無視した、さらに言えばアイヌに愛情の一欠片もない発言が、さらにウポポイという存在に厳しい声として反射してしまっている。

それでも僕はウポポイを応援したいと思う。今はコロナで首都圏からは自粛したいけれど、行ける方はぜひ行ってほしい。ぜひアイヌ文化の面白さのとば口に入って、さらに深く知ってもらい、同時にその歴史も見つめてほしい。

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アイヌからの批判はこれからの課題で、ウポポイという施設をより良いものにするきっかけになれば良いと思う。アイヌだって一枚岩じゃないし、(なるべく意見は統一してほしいけど)それもまた健全なことだ。ウポポイで働くアイヌも多い。本当にアイヌのことを思っている人もたくさんいる。だから必ず良い方向に行くと思う。

問題はデマとヘイトの方だ。そもそもそれらを嬉しそうにネット上で流しているのは在日韓国人や中国に対して同じようにデマとヘイトを流し続けている連中で、その手法も全く同じ。なんの根拠もないデータを出したり、なんの関係もないそれっぽい写真を探して証拠にしたり、「そのデータはどこから」と少しでも考えればそのハリボテぶりに気づくことばかり。

アイヌは今も存在するし、アイヌが先住民族だということはその歴史を少しでも学べばあきらかなこと。デマの中にはDNAの話も出てくるけど、より濃く縄文人の遺伝子を継いでいるのはアイヌということは科学的に証明されている。文化的にもつながりをより濃く持っているのもその通りだろう。そうでない日本人である和人はどちらかといえば、朝鮮半島を経由して入ってきた大陸由来の遺伝子が強く、そこに縄文由来のDNAが10数パーセントというのが日本人の遺伝的な特徴だ。もし「美しい国日本」とか思っていて、私は普通の日本人で、日本が大好きだと言うのであれば、縄文文化とアイヌ文化に目を向けるのが遺伝的に誠実なスジというものだ。

縄文ZINEでは4号でアイヌの特集を企画している。前提としてアイヌと縄文のつながりは遺伝的特徴と一部の文化的つながり以外ははっきりとは分かっていない。

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取材先の一つが、札幌大学の「ウレシパクラブ」だ。ここでは、大学にアイヌの若者を奨学生として迎え入れ、アイヌ文化を伝え、次世代の担い手として大切に育てるとともに、多文化共生コミュニティーのモデルを作り出そうとする試みだ。〝ウレシパ〟とはアイヌ語で〝育てあい〟を意味している。取材をした時に学生だったアイヌの子弟の何人かがウポポイで働いているという。ちなみにウレシパクラブを作った本田優子教授によればアイヌの奨学金制度を作ることには学校内外から批判は多かったらしい。そこには多くの繊細な問題があった。しかし、そもそも親世代のアイヌの所得の低さ(差別はあるんですよ、本当に)が大学進学率の低さに繋がっている問題もあり、この制度を作ることをなんとか説得したのだそうだ。

ちなみにウレシパクラブの学生さんたちはいたって普通の大学生でした。

取材中、ウレシパクラブの面接を受けたアイヌの学生の話をいくつか聞き、アイヌということで今まで受けていた大小様々な差別や、投げかけた方には悪気はなくても本人には辛い言葉の数々。取材者としては問題だけど、話を聞いて僕は思わず泣いてしまった。見れば話しながら本田先生も泣いていた。

最後に縄文ZINE4号の記事の一節を紹介したい。ちなみに本田先生は和人だ。

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札幌大学の本田さんは、大学を卒業してからアイヌ文化を研究するために二風谷の萱野茂さん(アイヌ文化研究家、後にアイヌ民族初の国会議員になる)のご自宅に押しかけで居候していたことがある。二風谷は北海道内でアイヌ人の比率が最も高い地域だ。居候としての初めての夜、お酒を飲みながら萱野さんにこう言われた。

「あんたはこの村では少数民族だから大切にしてあげるよ」

萱野さんのこの言葉にはアイヌのプライドと優しさがこめられている。

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この当時は今よりももっともっとアイヌ差別や迫害はひどかったはずだ。僕はアイヌへのヘイトは許したくない。

さらに言えば、アイヌ文化があったことで日本の文化はさらに重層的になり幅が広がる。それこそが日本を知ることになり、日本という国のために資することになるのではないだろうか。

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以下のリンクで縄文ZINE4号を読むことができます。ぜひ。ゴールデンカムイの野田サトルさんのインタビューも収録していますよ!


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