見出し画像

東方&女神転生リスペクトゲー:東方Artificial Dream in Arcadiaレビュー

東方Projectと女神転生をリスペクトしたゲームがまさかのロシアから襲来。しかも東方への造詣が深い。いや深すぎる。普通なら主人公に霊夢や魔理沙などの自機組を据えるであろうところ、宇佐見菫子をチョイスするあたりでそのディープさを察してほしい。おそロシア。

ただしゲームシステムは女神転生が基本と言っていい。おおむね女神転生のシステムに東方の世界観をトッピングした感じと言えば伝わるだろうか。下になるべく一枚で雰囲気が伝わる画像を用意した。

下半分に方眼紙製のマップとパーティメンバー、上半分にビジュアルマップとバッテリー残量(マグネタイトに近い)に現金。なんともメガテンライク。

ストーリー 7/10

ストーリーは幻想郷中に蔓延る「スリーパー」と呼ばれる存在の謎を解き明かすことが主な目的だ。スリーパーは東方キャラのドッペルゲンガーのようなもので、そこかしこを菫子を襲う敵として彷徨っている。菫子はスマホアプリを使用してそのスリーパーを捕獲できる。しかもターミナルで合体できる。要するにこのスリーパーが女神転生の悪魔ポジションというわけ。
しかし昔の女神転生のストーリーがあまり重視されないように、本ゲームもストーリーはスパイス程度であり、メインはダンジョン攻略と悪魔合体と言って良いだろう。

キャラクター 10/10

東方キャラは勢ぞろいもいいとこである。なんと2023年8月13日発売の東方獣王園の新キャラすら出ている。本作の発売日が2023年の9月23日なので、わずか40日程度でドットその他を用意したことになる?これはインディーズゲームならではのスピード感ではないだろうか。

全キャラにこのようなフレーバーテキストも用意されており、スリーパーを使わずとも作成して説明を眺めるだけでも楽しいものがある。

ストーリーに絡む一部キャラにはこのような立ち絵も用意されている。
美麗なドット絵のみならず各キャラの口調も(一部誤字等があるとはいえ)きちんと日本語で再現されており、作者の東方への愛情の深さがうかがえる。海外からここまで東方とメガテンへの熱意を感じるとグッと込みあげてくるものがある。

バトル 6/10

バトルはほぼメガテンの要素を踏襲しているので、特筆すべき点は少ない。物理・射撃・炎・電気・氷・衝撃・神経の七属性に吸収・無効・半減・普通・弱点といった相性があり、それに加えSTR, INT, MAG, VIT, AGI, LUKのステータスの高低で各スリーパーの差別化が図られている。

大体こんな感じ

攻撃魔法・回復魔法・バフデバフ・ステータス異常その他もおおむね女神転生をやったことがあれば理解できるものばかりだ。名前が違うだけ。
一つだけ本作の差別点を挙げるとすればSPという要素の存在だろう。

SPとは、敵を倒したり弱点をついたりすると溜まるゲージである。

真ん中のゲージがSP

このゲージを消費することで「スペシャル」コマンドや一部キャラに搭載されている「必殺技」を使うことができる。
ただ・・・このスペシャルと必殺技のどちらも要素として微妙である。スペシャルはアナライズととあるチート技を除いて使う価値がないし、必殺技も「ちょういりょく」と説明文にあるものを使っても大したダメージを与えられず、ほとんど存在価値がない。通常魔法のほうがよっぽどマシである。バフデバフを重ねて殴るゲームとなっており、戦闘に関しては後半に行くほど作業感が漂ってくるのが正直な感想。まあある意味再現度高いけど。
メガテンとの差別点を模索したことは評価できるが、あまり意味をなしていないのが残念。
総じて、戦闘バランスは粗いと言わざるを得ない。

システム 7/10

東方の世界観を女神転生のシステムにこうも見事に落とし込んで見せたのは見事という他ない。幻想郷のダークサイドがメガテンと噛み合うことを証明してくれた。そんなこのゲーム最大の難点は、ストレスの緩和策がメガテン未満であることにあるかもしれないと感じた。
スキル継承は親切設計でスリーパーの捕獲も悪魔会話より(シューティングが苦手でないなら)遥かに楽だ。

問題はダンジョン攻略にある。まず、本作のダンジョンの総数は(ネタバレを避けるため多少ボカすが)30以上ある。そして規模の差こそまちまちだが、基本的に後半に行くほど広く面倒なダンジョンが増える。伝統的なダメージ床、落とし穴、一方通行、動く床、ワープ床、マップ非表示などのギミックが後半襲い掛かってくるのはメガテニストの間では常識だから、まあそれは置いておこう。

最初のダンジョンからしてコレ

最大の問題点は、マップが広いくせに雑魚のエンカウント率がやたらに高く、かつエンカウントを低減する・避ける手段がないことだ。原作のメガテンにはエストマというエンカウント軽減魔法があるのにも関わらず、である。なぜ同様の魔法を採用しなかったのかは理解に苦しむところ。エストマがあれば+2点くらいはあげられたレベル。

しかし、裏を返せばたったの1200円でこの凄まじいボリュームのゲームを堪能できる、という意味でもある。ボリュームを求める人にとっては、ダンジョンが多く長いことは美点にもなりうるだろう。

総評 82点

良いところ

  • メガテンライクRPGとしては素晴らしく出来が良い

  • 安い。1200円は安いボリュームだけなら6000円分はある。

  • 東方にかける作者の愛情が国境を越えて伝わってくる。

  • エンカウントが苦痛でなければ非常に長く楽しめる。

  • スキル継承とスリーパー捕獲はストレスフリー

悪いところ

  • 戦闘バランスが粗い。

  • エンカウント軽減策がない

  • ダンジョンが多いし広い。人によってはだれやすい。

悪いところは主に昔の女神転生のバランスと良くも悪くも変わらない点なので、原作並の戦闘バランスやダンジョン探索の歯ごたえを求めているならむしろ美点かもしれない。ただしエストマがないことだけはあらかじめ承知しておくといいだろう。アップデートで追加されたらいいのになあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?