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なぜ、人気ライバーから順に事務所を辞めて独立してしまうのか?

あけましておめでとうございます。223です。

さて、近日公開予定にしていた記事ですが、恵比寿テキーラ事件があったので保留にしています。爆投げさん達を調子に乗らせるよくない流れを煽りそうなので。

で、今日は表題の件。答えから行きましょう。

なぜ人気ライバーから順に事務所を辞めて独立してしまうのか?それは、事務所から提供されているサポートの価値と、事務所に引かれているマネジメントフィーの金額が釣り合わなくなるからです。

ライバーの立場になって考えれば当然なんですよね。ライバー事務所やライバーエージェントの料率は10%から20パーセントの固定で設定されている事が多いです。あの大手YouTuber事務所ですら20%であることを考えると、ライバー事務所で20%とるというのはボッタクリも良いとこですよね。だって、事務所の負荷が違いますもん。YouTuberのマネジメントの方が動画編集なり企画なりで労力がかかります。ライバーマネジメントなんて、結局は本人が配信するだけですし、なんとなくアドバイスをするだけですもんね。まあ、この辺はこちらの過去記事をご覧ください。

ということで、仮に業界平均の15%でマネジメントフィーが設定されている場合を考えてみましょう。

ライバーは事務所にいくら取られるのか

ロイヤリティが10万円の場合
10万円×15%=1.5万円 
ライバーの収入8.5万円※ここからさらに源泉が引かれます。まあ、こんなもんですよね。むしろ、手間暇からいうと、事務所側の負担の方が大きく、マネジメントフィーとしては安いぐらいです。将来的成長してくれる期待を込めて、赤字で労力を投資してるようなもんですね。

ロイヤリティが25万円の場合
25万円×15%=3.75万円
ライバーの収入=21.25万円
ふむ、なんとなくライバーとしては事務所にとられる金額が多くなってきたなと感じつつも、費用対効果からするとまだ許容できるレベルですね。

ロイヤリティが50万円の場合
50万円×15%=7.5万円
ライバーの収入=42.5万円
もはや、事務所に所属し続けるか迷い出すレベルまでマネジメントフィーが大きくなってきています。え?自分が受けているサポートの価値って7.5万円分もある?的な。

ロイヤリティがら100万円の場合
100万円×15%=15万円
ライバーの収入源=85万円
完全にコスパが合っておらず、誰もが事務所契約を辞めたいと思うレベルです。しかし、事務所契約を切ると今のアプリで配信できない契約をしてしまってる人は、泣く泣く続けるか、他のアプリに移籍するかの選択を迫られます。人気出たライバーさんが独立してアプリを移る理由の一つはこれですね。

事務所運営をする上で、本来は残って欲しいはずの人気ライバー。固定報酬にしてしまうと、上記のような理由で人気になればなるほど事務所に所属する費用対効果が合わなくなり、抜けていきやすくなるのです。

ライバー事務所報酬のジレンマ

というやつですね。

なぜこういう事が起きるのかというと、駆け出しのライバーさんほど事務所のノウハウやサポートを必要にする反面、配信に慣れてくれば来るほど事務所のサポートはあまり必要なくなっていくという、反比例の関係があるからです。

にもかかわらず、報酬料率を固定にしてしまうと、人気が出れば出るほど、事務所への報酬料率に関する不満が加速度的に進んでいってしまうわけですね。

困ったもんです。人気ライバーがたくさん所属してくれればくれるほど、事務所のステータスは上がり、勝手に新人ライバーは集まってくるようになるのですが、コロコロ上から抜けられるといつまでも大量のスカウトをし続け、育てていく負の連鎖を繰り返さないといけなくなるのです。せっかく教えたのに、、、また一から教えるのか、、、スタッフのマインドも疲弊していくでしょう。ライバー募集のための広告費やオウンドメディア運用もコストが掛かって大変です。

もし、人気ライバーが全員残ってくれるなら、、、配信慣れしていて勝手に稼いでくれるライバーさんの割合が増え、事務所の労力も減ります。離脱ライバー数も減りますからライバーの新規獲得目標も下げる事ができるでしょう。様々な費用を抑制できます。

そんなことは可能なのでしょうか?

可能といえば可能です。

ライバー事務所報酬のジレンマを解決する上では、M&Aの仲介で用いられるレーマン方式というものが参考になるでしょう。

レーマン方式を採用したマネンジメントフィー

・・・取引金額(ライバーがアプリから得る報酬)に応じてエージェントへの報酬料率が逓減(だんだん少なくなっていく)する仕組み。レーマン方式で用いられている成果配分方式は、ドイツにおける経営学の権威であるレーマン博士の学説を応用したものである。資本比率と労働比率を明確にすることによって貢献度を明確にしようとしており、ライバーが頑張れば頑張るほど、マネジメントフィーの料率が下がっていく仕組み。すなわち、マネジメントサイドの貢献はライバーの報酬が上がれば上がるほど薄まっていっているという実態に即した料率設定となっている。

サンプルモデル
マネジメントフィーの料率
①5万円以下の部分 20%
②5万円超10万円以下の部分 15%
③10万円超50万円以下の部分 10%
④50万円超100万円以下の部分 5%
⑤100万円超500万円以下の部分 1%
⑥500万円を超える部分 0%

ライバーさんがアプリから受け取る報酬金額別にマネジメントフィーを見ていきましょう。

ロイヤリティが2.5万円の場合
①2.5万円×0.2=5千円

ロイヤリティが 5万円の場合
①5万円×20%=1万円

ロイヤリティが 7.5万円の場合
①5万円×20%=1万円
②2.5万円×15%=3750円
①+②=13750円(実質18.333%)

ロイヤリティが 10万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=7500円
①+②=1.75万円(実質17.5%)

ロイヤリティが 25万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③15万円×10%=1.5万円
①+②+③=3.25万円(実質13%)

ロイヤリティが 50万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
①+②+③=5.75万円(実質11.5%)

ロイヤリティが 75万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④25万円×5%=1.25万円
①+②+③+④=7万円(実質9.333%)

ロイヤリティが 100万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④50万円×5%=2.5万円
①+②+③+④=8.25万円(実質8.25%)

ロイヤリティが 250万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④50万円×5%=2.5万円
⑤150万円×1%=1.5万円
①+②+③+④+⑤=9.75万円(実質3.9%)

ロイヤリティが 500万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④50万円×5%=2.5万円
⑤400万円×1%=4万円
①+②+③+④+⑤=12.25万円(実質2.45%)

ロイヤリティが 750万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④50万円×5%=2.5万円
⑤400万円×1%=4万円
⑥250万円×0%=0
①+②+③+④+⑤=12.25万円(実質1.63%)※12.25万円がフィーの上限

ロイヤリティが 1000万円の場合
①5万円×20%=1万円
②5万円×15%=0.75万円
③40万円×10%=4万円
④50万円×5%=2.5万円
⑤400万円×1%=4万円
⑥500万円×0%=0
①+②+③+④+⑤=12.25万円(実質1.225%)

これなら、ライバーとしては稼げば稼ぐほど事務所に取られる料率が下がっていくわけですから、まあ、これぐらいならいいか、、、と、ジレンマが解消されてマネジメントフィーが気にならなくなる人が多くなります。

レーマン方式のメリットとデメリットとは?

事務所としても、一人のライバーから数十万や数百万という大きなマネジメントフィーが入らなくなるというデメリットがありますが、労力がかからない安定的な収入をもたらすライバーが増えていくので、メリットもあります。

しかし、まだこの形態を採用している事務所は見かけた事がありません。なぜなら、たとえ人気ライバーに辞められたとしてもそのライバーから数ヶ月間、大きなマネジメントフィーを搾り取った方が事務所にとっての収入が大きくなるとほとんどの事務所が安易に考えているからです。

本当にそうですかね?
事務所としての顧客をライバーとして捉えたときに、高LTV(ライフタイムバリュー)を持つ人気ライバーのチャーンレート(離脱率)を引き下げる効果は絶大ですよ。

月に1000マンコイン、ロイヤリティで言うと月に100万円を稼ぎ出すライバーの出現率はスカウトを分母としたときに何%ですか?そこまでにかかる総コストはいくらですか?固定料率からレーマン方式に変えたときにそのライバーさんが事務所に落とすお金はどう変化しますか?

一度、知り合いの事務所さんにこれを説明した事があります。事務所内のデータを全てお借りしてシミュレーションしたときに、250万コインを超えるライバーの月次離脱率が5%以上減るなら、レーマン方式を取り入れた方が事務所の利益が増加する事がわかりました。人気ライバーの月次離脱率が10%以上減ると、利益のみならず売り上げも上昇していく事がわかっています。

何より全てが好循環しますよね。
人気ライバーが残る
手間隙がかからないフィー収入が増える
ストックライバー数が減りにくくなる
ライバー候補が集まりやすくなる
そんなにスカウトやマーケティングしなくてすむ

ここ数年、スタートアップ界隈で参考にされていたSaaSモデルの教科書と言われる本、「The model」で言われるところの、新規開拓地獄から抜け出してカスタマーサクセスに力点を移す好循環のことですね。

ちなみに、社長さんはこれに納得してくれたのですが、幹部の方々の反対があってとりいれられなかったみたいですが、、、まあ、お水や風○を運営している会社が多いですので、若い女性は使い捨ての概念がこびりついているんでしょうね。ヤレヤレ。

そもそもですね、手数料率を最初から表に出せないサービスなんてのはスケールしません。情報の非対称性を基に、ライバーを搾取しようという魂胆が見え見えです。そういうビジネスはどんなに成功しても年商10億かそこらが限界でしょう。しょっぼ(すみません)。

一方で価格をしっかりと公開して、ポジティブな連鎖を巻き起こせば、規模拡大に伴う負の業務にかける労力が減ってその分前向きな業務に当てられますから。成長の壁を越える事ができます。素敵な評判と共に他社のシェアを奪って年商100億超え目指すこともできるかもしれません。IPOだって夢じゃないから、オーナーさんは総資産で数百億の超富裕層になることもできるかもしれませんよ。

僕は、誰がいち早く、このジレンマの解消に乗り出すかを注意深く見ています。そして、もしこのジレンマを解消して前に進んでいく事務所が現れたら、業界の発展のためにもPRに協力しようと思います(ただしちゃんとした会社に限る)。

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