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5分でわかるCOP26とそこから見える日本の産業の未来



COP26(コップ26)とは、26th Conference of the Parties(国連気候変動枠組条約第26回締結国会議)の略で、地球温暖化への対応を話し合う国際会議のこと。イギリスで10月31日から11月12日までの予定で開催され、会期延期して終了した。COPでは日本の選択も関心を引く。

1 COPのこれまでとCOP26の位置づけ

第1回COPが1995年に開催された後、マイルストーンとなったのが第3回の京都での開催。「京都議定書」として有名な、先進国間で二酸化炭素排出量に上限を課す協定の締結に至った。

ところが、先進国のみが削減しても他の国が排出し続けるのでは対策ができないとの意見が高まり、一方で途上国からは一方的に削減を求められるのは不公平との批判が出た。そこで、その後のCOPで先進国から発展国への経済支援も盛り込まれるようになった。

そして、2015年 のCOPにおいて、184か国を巻き込み、「今世紀末の地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に」という目標が合意された(パリ協定)

第26回となる今回のCOP26では、この「1.5度以内」というパリ協定の目標に向けた具体的なプランがどこまで合意されるかが焦点となった。

COP26において採択された協定では、パリ協定が目指す「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える」努力の追求が確認された。当初、石炭火力の「段階的廃止」が入っていたが、インドや中国の反対を受け「段階的削減」に変わった。

2 COP26における日本の立ち位置 

日本は、COP26に先だち官民あわせて600億規模の支援を表明し、会期中に5年間で最大100億ドルの追加支援を表明した。

3 日本が化石賞を受賞した背景と脱石炭

テレビでは日本がNPO団体から化石賞を受賞したことが報道された。これは、40か国あまりが賛同した脱石炭(温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の廃止)の声明に、日本がアメリカ、中国とともに参加しなかったことが影響している。

日本が賛同しなかった背景には、国内の二酸化炭素総排出量の約4割が火力発電ということがある。国内の発電を担うエネルギーは石炭に限られないが、石油は中東情勢に依存し、LNGは保管が難しく、太陽光発電等への移行には国土上限界があるといわれている。石炭はオーストラリア等の近隣から輸入でき保管しやすく国家安全上もメリットがあるとされる。

日本は、脱石炭ではなく、既存の火力発電所を維持しつつ、技術革新で二酸化炭素排出量を減らし、その技術を輸出していくことを目標に掲げた(これが化石賞の選考者の目に留まった)具体的にはアンモニアを混ぜることで排出量を減らすというものだ。将来的にはアンモニア専燃を目指し本年度より実用化されているという。一方で発電のコスト高や供給網など課題も多く、脱石炭の潮流とは別の方法で排出量を削減できるかに注目が集まる。https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ammonia_02.html

4 電気自動車推進でも別の道を行く日本

COPSでは、2040年までに世界の新車販売を排出ガスなしの車にするという目標に20か国余りが合意した。この合意に自動車産業国であるアメリカ・ドイツ・日本は参加していない。

日本は、世界に先駆けてハイブリッド車を開発し普及させることで二酸化炭素排出量の削減を目指してきた。ところが急速な蓄電池の普及を受けて、他国がハイブリッド車を飛ばして電気自動車の普及と産業化を目指し始めた。そして温暖化対策を背景に、ハイブリッドを含むガソリン車を廃して完全電気自動車化を目指す動きが出ている(一種の規格戦争ともいえる)。

一方日本国内では、ガソリン車(ハイブリッド車)を前提とした産業が先行し、電気自動車に必要な充電インフラも普及していない。この中でハイブリッド車やエンジンの製造工程を捨てて電気自動車化に切り替えるのではなく、トヨタを中心に、ガソリンエンジンのかわりに水素エンジンを利用したハイブリッド車の開発等が進められている。

5 日本の選択とこれから

火力発電所とハイブリッド車。いずれも既存の国内の産業インフラを生かし技術で排出量を削減していこうとする選択だ。他国が振り向くような技術革新や規格化を達成できれば第三の道を牽引できる。できなければ世界的な脱炭素を求める動きの中で「化石」視され、ガラパゴス化したり輸入に頼らなければならなくなるおそれもある。COPは温暖化だけでなく日本の産業の進む岐路も示している。