見出し画像

ないものさがして、ないものねだる。⑦

わたしが学び、実践し、磨いてきたものは、ほぼ通用しなくなった。

話し合い
ペア学習
グループ活動
合唱
楽器演奏
実習
実験
プール学習

他者と関わる活動が制限される。
そんな経験はしたことがない。
学校にいる全ての年代の人間、全員が、だ。

未知のウイルスによる恐怖は大きく、
子どもたち同士が関わる活動は全て制限された。
毎日の授業はもちろん、
休み時間の過ごし方も、給食も、
クラブ活動も、委員会活動も、
運動会も、学習発表会も、
何もかも、全て。

他者に自分の意見を伝える中で磨かれる自分らしさがある。
他者の模倣をする中で得るスキルがある。
他者と力を合わせる中で一つのものを創り上げていくおもしろさがある。
他者の意見を聞くことで新たに生まれる考えや価値観がある。

わたしが学び、実践し、磨いてきたものの中で、使えるものは全部使った。
けれど、子どもたちに力がついていっているのか…自分自身に手ごたえが
感じられない。
まさか、この年になって「先生になったときのように、途方に暮れる」日が来るなんて…。

緊急事態宣言による5月末までの休校による影響は深刻だった。
未知のウイルスによる感染を防ぎながら、6月に再度クラス開き。
子どもたちの心のケアをしながら、感染対策をしながら学習を進める日々に
精神的に追い込まれた。
新しい家への引っ越しと、夫の開業準備。
夏休みがほとんどない中、夫の新しい仕事は始まった。
平日は先生として働き、週末は夫の仕事を手伝う。
学ぶ、どころの話ではない。
子どもたちが一息つけるような、ゆとりもない。
子どもたちの心が休まる瞬間もない。

それでも、子どもたちはぐんぐん成長する。
こんな状況であっても、元気に学級へ来てくれる。
そんな子どもたちに救われた。

子どもたちの家族に風邪の症状が出たり、発熱者が出たりすると、
たとえ子ども本人は元気でいても学校を休まなくてはならない。
明日、会えないかもしれない。

ない。
ないない。
ないしか、ない。
あるのは、恐怖と不安。

夫の新しい仕事はとても順調だった。
このままでは、倒れてしまうのではないか、というくらいに。
わたしは、先生を辞める決意を固めた。
職員室で管理職がわたしの退職を発表するまで、
わたしは誰にも、辞めることを言わなかった。

先生を辞めてからの1年間、わたしは何も学ばなかった。
疲れ果てていた。
夫の仕事の手伝いをすることだけで精一杯だった。

年が明けた2月、少し元気になってきたわたしは
以前から時々学んでいたインスタグラマーさんの主催する起業塾に入会した。
夫には渋い顔をされたが、学ぶ場所を得たわたしの日々は
一気に輝きだした。

学び、実践し、振り返り、改善点を探る。そして実践し学ぶ…。
どんな仕事であっても、大切だし必要なこと。

しかし、何も学ばないまま感覚だけで夫の仕事を手伝っていた
わたしを立ち止まらせる出来事が起こる。

次回、最終回。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?