祈りのない部屋

ここには祈りが届かない。

もし仮に、届けたい祈りがあったとしても届くことはない。


今よりもマシな生活をと望み進んできたはずが、こんな所に辿り着いてしまった。

思考が止まった暗い部屋。
いや、室内はむしろ明るすぎるほどの照明がついている。
暗いと感じるのは俯いて作業をしているから自分の影で視界が塞がっているだけだ。


遠くで彼女の無事を願う人が、その部屋から出ればいいと言う、その声さえも届きはしない。
"どこに行っても同じこと"と進み続けることに疲れた彼女は思っている。ここでダメならどこでも同じくダメなままだ、と。

出口を探して見つからず、自ら作った抜け穴から這い出たところで、大きな括りの中では何一つ変わりはしていなかった。


間もなく就業のベルが鳴る。 

泣きながら食べたご飯は味がせず、煙草の苦味と重さが彼女の体を支配している。
無理矢理つくった笑顔の奥で瞳に力はなく、にやけた口元からは何も感じ取ることができない。

今日が無事に終わることを誰ともなく自分自身に願っている。
何をどうすればいいかの答えが"頑張る"でしかない痛みの中で、頑張ることをせず乗り切ろうとしている。


彼女を決して一番にはしない永遠の片思いと、彼女のことを好きではない人との両思いの中で、
遠くから無事を祈る愛情を感じ取ることはできるのだろうか。