『白と黒のエクスタシー』
昔一世を風靡した角川映画の一本に『赤と黒のエクスタシー』という有名なコピーで知られた映画がありました。
広大な草原を、赤と黒の騎馬武者の大群がぶつかり合うスペクタクル。当時そんなCMが、それこそ一日中ブラウン管を賑わせていました。 時は過ぎて2003年。『ラスエグ』のDVDのジャケット絵の中でも、特にカッコ良くてぜひ見てもらいたいのが、純白の軍服に身を包んだヴィンセント・アルツァイと真っ黒なマントを翻すアレックス・ロウが背を向け合う一枚。
まさに『白と黒のエクスタシー』です。
「積み荷を渡せ」「・・・・(沈黙)」「つらいぞ、アレックス」短い大人の会話とコーヒーの香り。
「カッコイイゼ、ちくしょう!」叫びたくなります。役を演じてくれた森川智之さんと郷田ほづみさんの素敵な声と渋い大人な演技が秀逸なこのシーン。 機会があったらぜひ見て欲しい『ラスエグ』の名シーンの一つです。
ヴィンセント役の郷田さんには『ドルアーガの塔』という作品で音響監督をやっていただいたことがあります。役者さんに対する郷田さんの指示は具体的で的確です。やはりご自身が演じられるからでしょうか?
言葉だけでなく、時には自ら演ずることで繊細な感情を役者さんに伝えてくれます。また、その温かい人柄はアフレコ現場の空気を和ませてくれて、スタジオはいつも笑いで一杯でした。
その現場での経験は『銀翼のファム』で初めて音響監督をすることになったボクをいろいろな場面で助けてくれることになりました。
一方の『黒のエクスタシー』アレックスを演じてくれた森川智之さんには、アニメミライ作品『RYO』で新撰組副長の土方歳三を演じていただきました。 最初から「最初から決めていました!」
なんだかテレビの告白番組のようですが、シナリオを書いている時から森川さんの声で
「ったく、猫嫌いが」「近藤さんが言っていた・・」と土方の台詞が聞こえた気がして、もうそれ以外考えられません。
幸いにも引き受けていただけて、またあの渋くて素敵な声を聞けて本当に最高でした。
「何で私なんですか?」虫籠のカガステルでマリオ役を引き受けてくれた森川さんに訪ねられました。 「最初から決めてました」今回はそれでは許されない気がしました。 マリオ役を森川さんにお願いしたかった理由は、現在のマリオの向こうに傭兵時代を感じさせたかったからです。負け戦もあったと思います。仲間も沢山失ったかもしれない。そんな過去をお芝居とセリフに込めたいです。 そんな感じの言葉に森川さんも頷いてくれました。
郷田さん、森川さん、いつになるかわかりませんが、また一緒に仕事をさせて下さい。
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