『モランと沖田総司』
モラン・シェトランドは死ぬはずでした。
最終回のコンテを書き上げる最後の本当に最後まで死んでしまうはずだったモランが生き残ることになったお話をします。
昔大好きだった『燃えよ剣』という司馬遼太郎原作のドラマがありました。その中で沖田総司が亡くなるシーンが印象に残っていて、いつか参考にしたいとずっと思っていました。結核療養のために江戸に戻った総司を毎日のように往診する医者がいて『裏通り先生』と隊士から慕われていました。左右田一平さん演じる裏通り先生は『その日』も普段と変わらずに庭に面した縁側をゆっくりと総司の部屋に向かいます。
引きの固定カメラがその様子を追い続け、先生は障子を引いて部屋の中に入っていきます。
庭に温かい日が差して、小鳥がさえずっていたかもしれません。「沖田くん!」しばらくの間の後、部屋の中から悲痛な先生の声。その後うなだれた先生が縁側に出てきて膝を落とす。その長い一連のシーンがワンカットで描かれていました。
ラスエグ終盤、空への憧れを封印してギルドのユニット制圧作戦に銃兵として参加するモラン。
激しい銃撃戦が終わって、彼の安否を気遣ったドゥーニャがユニットに駆け込みます。
「モラン!」叫んだドゥーニャがユニットから出てきてしゃがみ込んで膝を抱える。
もちろんワンカットです。
『燃えよ剣』を作ったスタッフの方々申し訳ありません。『リスペクト』と言えばすべて許されるわけもなく、好きだからって真似して良いはずもありません。
それでもやっぱり『好き』が勝ってしまいました。 さてこのカットを見た方のほぼ全員がモランは
死んだと思ったはずです。 当然です、そのつもりで作りましたから。 最終回を見た方は麦畑からちゃっかりモランが表れてビックリしたと思います。「台無し~!」 「ありえね~」「千明死ね~!」
とかテレビに向かって叫んだことでしょう。
ほんとうにごめんなさい。
最終話のコンテを書いていて麦畑のシーンまで来たとき、モラン・シェトランドというキャラクターが大好きなことを思い出しました。生き残らせたくなってしまって、何度も修羅場を潜り抜けて生還章で一杯のモランなら大丈夫。無理やり自分に言い聞かせ最後のコンテを書きました。
最後の戦いを生き抜いたモランは、ドゥーニャと結婚して彼女の弟妹ともども幸せになります。本編では描けませんでしたが想像してみてください。
「あ~良かった」「まあ、それもありか~」
そう思いましたか? 思わない?
沖田総司が結核で死ぬことは史実なのでどうしようもないですが、銃兵のモランはこうして無事生還することになりました。めでたし、めでたし。
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