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刑務所と、拘置所と、留置場③

第3回目となる本日は、【刑務所】について。

刑務所も法務省管轄

前回、留置場は「警察庁」の施設で、
拘置所は「法務省」の施設とお話しした。
刑務所も「法務省」の施設であり、職員は国家公務員の刑務官だ。

そもそも、法務省ってどういう組織?

 前身は司法省

 法務省の前身は戦前の司法省である。
 裁判所の監督などの司法行政事務を含む広範な法務・司法に関する
 事務を司っていた。

 その後、法務庁となる

 法務庁は性格的には政府の最高法律顧問府として設置された。
 新たに従前の内閣法制局の事務とされていた法令案及び条約等の
 審議事務,司法制度・内外の法制などの調査研究に関する事務のほか
 民事・行政に関する争訟に関する事務や人権擁護に関する事務などが
 所管とされた。

 法務府→法務省と改称

 平成31年4月1日以降は下記の通りの組織となる。
 【6局制】
  大臣官房
  民事局・刑事局・保護局・人権擁護局・訟務局
矯正局(刑事施設を司っている組織)
 【外局】
  出入国在留管理庁・公安審査委員会・公安調査庁

法務省ホームページ 法務省の概要・沿革より抜粋

・・・で、法務省はどんな仕事をしている組織なの?

さすが法務省。ホームページを見ても全く仕事内容が書いていない。
よく調べてみると、法務省ホームページの子ども向けのサイトがあり、
そこに分かりやすく書いてあった。

・安心して暮らせるように基本的なルールを作る
 ・罪を犯した人が二度と悪いことをしないように、
  刑務所や少年院で教育をする
 ・いじめなど人権侵害があったときに調査する
 ・出入国の審査をする

一言でまとめると、

「法の番人」

と、称するのが一番分かりやすいのではないだろうか。

「推定無罪」と「有罪確定」

留置場も拘置所も、「一般人」である。
推定無罪という言葉は、皆さんも一度は耳にしたことがあるだろう。
これは、憲法でも保障されている原則だ。
世界人権宣言や国際人権規約に定められている刑事裁判の原則でもある。
呼び方は「容疑者」、「被告人」もしくは「〇〇被告」。
無罪かもしれない人に対しては、少々重い肩書である。

裁判が確定するまでは、推定無罪の原則が効いている。
なので、拘置所では私服で問題ないし、食べ物も差し入れれる。
髪型もひげの長さも自由だし、職員に悪態をついてもさほど
お咎めはない。
勿論、やり過ぎると調査になってしまうが、多少の言い争いは
日常茶飯事である。

しかし、裁判で有罪となると「犯罪者」となる。
そして、それからある一定の期間中に上訴や上告をしないと、
刑が確定する。こうして「有罪」となるのだ。
ここから、受刑者として生活の制限が開始されるのである。

刑務所に行くための準備①

 上記のように、裁判で有罪を言い渡されてから一定の期間がある。
 この期間を「上訴期間」と呼ぶ。
 判決に異議がある場合、上級の裁判所に訴える制度だ。
 高等裁判所→最高裁判所という流れは、学校でも教える内容だ。

 この上訴期間が過ぎると、判決が確定する。
 つまり、被告人から受刑者へ身分が変わるのだ。
 このことを「資格異動」という。
 俗にいう、「赤落ち」である。

 赤落ちの由来は、昔の囚人服が赤色だったこと、だそうだ。
 今風にいえば、「緑落ち」かもしれない。
 ※現在、刑務所内で緑色の服を着用しない施設もある。

刑務所に行くための準備②

 赤落ち=受刑者、ということである。
 赤落ちの当日、拘置所から刑務所へ移動する。

 拘置所と刑務所が離れている施設は、同じ拘置所内でも
「受刑区」と呼ばれる、受刑者のエリアへ移動する。
 (東京拘置所や名古屋拘置所など)

 厳しい施設では、この移動の際に辱めを受ける。
全裸になって、お尻を突き出し、お尻を広げて肛門をチェック
 するのだ。これが、猛烈に屈辱的だった。
 まあ、見ないといけない刑務官も過酷な瞬間だと、今では思う。 

 そして、ここで遂に受刑者の身なりに変わる。
 荷物は制限され、衣服は回収され囚人服が貸与される。
 着替えた瞬間、「刑務所に来てしまったのか・・・。」と、
 自分の置かれた状況に、再度愕然とする。

嗜好品は摂取不可。面会は月2回。

留置場と拘置所では、嗜好品の摂取が認められていた。
お金があれば、差入があれば、食べたいだけ食べられる。
私が拘置所で見た収容者で、最も嗜好品を持っていた人は、
畳半畳ほどがお菓子や調味料、パンや飲み物で埋まっていた。
最初の頃は美味しそうに食べていたが、徐々にペースが落ちていき、
結局赤落ちまでに食べきれず、40リットルほどのゴミ袋が満タンに
なるくらいのお菓子を廃棄していた。
ちなみに、お菓子を廃棄する際は「残飯」として処理する。

これも拘置所あるあるだが、雑居がある拘置所では、
赤落ちまでに食べきれない嗜好品は、残った人に渡すケースが多い。
お金がない収容者にとって、久しぶりのお菓子はたまらなく美味しい。

そして面会は月2回、1回あたり最長30分間と決められている、
ただ、刑期が過ぎるほど回数が増えるケースもある。

アクリル板越しの会話であることは変わらない。
最愛の人と話す姿は、映画なんて比ではないほど寂しいものだ。
更に感情の追い打ちをかけるのが見た目だ。
緑色の囚人服を着て、頭は丸刈り。悲しくなるそうだ。

最も分かりやすい違い=坊主頭

そして、見た目で最も大きな変化がここで起こる。
 「散髪」である。
 髪型は一択、坊主頭である。
 私の経験した施設では、1mmか2mm、または8mmであった。
 ちなみに、散髪のことを施設内では「ガリ」と呼んでいた。
 五分刈りとか、三分刈りとかの「ガリ」である。

 散髪は床屋が来訪してガリするのではない。
受刑者が受刑者のガリをするのだ。
ハサミは使用できないので、バリカンで一気に刈る。
 勿論、刃物の一種なので取り扱いは厳重だし、刈る役目を仰せつかって
 いる受刑者は、それなりに実績のある者である。
 ※ガリについては後日お話ししたい。

時間が経つほど制限がかかる

3回にわたって収容施設の事を書いてみた。
経験から言えることは、時が経てば経つほど自由はなくなる。
面会、嗜好品、服装。全てにおいてだ。
ルールは細かくなり、自由の範囲はほぼなくなる。

私は、もう二度とこんな生活をしたくないの思った。
出所した際の喜びは、一生忘れられないだろう。
それと同時に、施設での生活も一生忘れられないだろう。

なので、再犯する人の気持ちが分からない。

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