貫入の手 // 240202四行小説

左手の甲が、ひび割れている。
肌のキメの三角をなぞるように赤い血が滲んでいた。
遠目に見れば釉薬に細かいひびの入った食器にも似ている。
長い時間を掛けて使用してきた故のヒビだと云うならば、こんな手でも愛着が沸く気がした。

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