キミとバンド //211210四行小説

 マクドナルドでダベった後の帰り道、冬の日は早くに落ちてもう夜の中を君と歩く。中学からのクラスメイトで今は高校の友達。お互い帰宅部で馬が合ったから、暇なときはよく遊ぶことも多かった。
 いつもの流れで学校帰りに二人で遊んだのに、俺の頭の中はいつも通りではなかった。ずっと考えていたこと、それを今日こそは提案しようと思っていたのだ。タイミングを逃しに逃し、もう駅のホームに着いてしまった。前を歩き電車に乗ろうとする友達に「なぁ」と声をかける。
 今ならば、断られてもその表情を長く見なくて済む。
「バンドやろう。人数も揃えてさ。俺がボーカル、お前がギターで」
 やっと言えた。いつもの他愛ない話の続きのように言ったつもりだけれど、声は震えていなかっただろうか。心臓がひどく速く鼓動を鳴らしている。
 振り返った友達はなんだそんなことか、とでも言うように一度大きな笑顔を見せる。きっと、一日中言えずにそわそわしていた俺のことが気になっていたのだろう。
「いいよ! テレビ見ながら兄貴の借りてギターの練習しとくわ」
 二つ返事で承諾して、軽く手を振り電車へと乗り込む。程なくして扉がしまり、電車が遠くへと見えなくなっていく。
 詰めていた息をゆっくりと吐き出した。胸が熱い。一瞬前の出来事が夢のようだった。

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