折られた猿の手 //220208四行小説

 猿の手を得て願いを叶えようとしたら優しそうな人がやってきた。猿の手全ての指を折り、地面に放って「努力もなしに手に入れたものに価値は無いわ」と聖母のような微笑みで言う。僕はもう使えなくなった猿の手を一生動かない足を引きずって取り戻し、悔しさと絶望に奥歯を噛む。
 優しい人は、努力を見せてとバラエティ番組でも見るみたいに僕に言う。応援する自分の尊さを肯定したくてたまらない。他者が寄せる優しさは、いつだって打算的で独り善がりだ。

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