渡り鳥:春

3月×日。桜の枝の先っぽに蕾が膨らみ、花びらが開きはじめた。朝通ったときはまだ一部の枝に数えるほどしか咲いていなかったのに、昼間にはたくさんの枝の蕾がほころび、薄いピンクの花が恥ずかし気に顔をのぞかせていた。

桜の開花と同じ朝、今年初めてのツバメの声を聞く。青い澄んだ空高くで、「チクチクチー」と鳴いていた。フィリピンやマレージアなどの東南アジアからはるばる日本に子育てにやってくる渡り鳥。今年も民家や駅の軒下にせっせと巣づくりする姿が見られると思うとホッとする。

春分ごろにヨモギやスミレが道端に顔を出して、ウグイスがまだ練習したての歌を歌い出し、かなり早まったけど桜が咲いて、ツバメがやってきた。

毎年必ず春夏秋冬、季節がめぐってくる。先行き不透明なこの世の中、変わらないものを感じると安心する。

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