遺伝性疾患に関する問題(脳腫瘍を中心に)
Hemangioblastomaに関しての説明で正しいものを2つ選べ
a) Von Hippel-Lindau(VHL)病は指定難病である
b) VHL病で合併した腎血管筋脂肪腫に対してエベロリムスが承認されている
c) Stromal cellはbrachyury陽性である
d) 定位放射線治療での腫瘍制御は5年で90%程度、10年で80%程度である
e) VHL病は1/4000の頻度で発生する
解説)財団スライド+SANS 2016+脳腫瘍問題集 Q.20
a) ×Von Hippel-Lindau(VHL)病は指定難病である→残念ながらそうではない
b) ×VHL病で合併した腎血管筋脂肪腫に対してエベロリムスが承認されている→それは結節性硬化症の話。mTORIが承認されたのはこれとSEGA。
c) 〇Stromal cellはbrachyury陽性である→以外にもChordomaだけではない
d) 〇定位放射線治療での腫瘍制御は5年で90%程度、10年で80%程度である
e) ×VHL病は1/4000の頻度で発生する→その頻度はNF-1
1/40000の頻度がVHLとNF-2である Ans.cd
血管芽腫に関して以下の問(1)―(2)にこたえよ
(1) 説明文で正しいものを2つ選べ
a. 嚢胞型においてはcyst wallに腫瘍細胞は存在しない
b. VHL患者の10-20%程度に褐色細胞腫を合併する
c. 頭蓋内と脊髄発生はおおよそ同じくらいの割合で発生する
d. 多血症は半数以上に認める
e. 術前の血管塞栓術が有効である
(2) Hemangioblastomaのfollow中、以下のようなMRI初見を認めた。
最も考えられる病態はどれか
a. くも膜肥厚 b. 播種 c. 反応性の髄膜炎 d. 腫瘍内出血 e. くも膜下出血
解説)藤田セミナー 良性腫瘍 大宅より
1)Ans.ab
a. 〇嚢胞型においてはcyst wallに腫瘍細胞は存在しない
b. 〇VHL患者の10-20%程度に褐色細胞腫を合併する
c. ×頭蓋内が9割(内9割は小脳)脊髄発生は1割
d. ×多血症は20%程度半数以上に認める(EPO産生性の場合あり)
e. ×術前の血管塞栓術はエビデンス乏しい やる場合もあればやらない施設もあり
2)稀ながら播種を起こす場合がある Ans.b
4歳の男児。体幹の白斑を主訴に父親に連れられて来院した。生後5か月で体幹に白斑があるのを父親が発見し、増数してきたため受診した。1歳時にけいれんの既往がある。受診時、臀部と大腿部を中心に大小の白斑を認める。顔面では鼻部中心に丘疹が散在している。大腿部の写真を別に示す。この児で思春期以降に出現する可能性が高いのはどれか。
a. 脂腺母斑
b. 神経線維腫
c. 爪囲線維腫
d. 聴神経腫瘍
e. 単純性血管腫
解説)医師国家試験114A36(正答率46%)
葉状白斑あり。顔面の丘疹は血管線維腫を疑い、母斑症の1つである結節性硬化症。結節性硬化症はWest症候群を合併するため痙攣の既往があることも合致。
a 結節性硬化症は母斑症だが脂腺母斑とは異なる
b 神経線維腫症I型〈NF-1〉でみられる。
c 〇あまり聞き慣れないかもしれないが、血管「線維腫」を認めることから連想し記憶したい。Koenen腫瘍 思春期以降に出現する Ans.c
d 神経線維腫症II型〈NF-2〉でみられる。
e Sturge-Weber症候群でみられる。
6か月の乳児。数回続けて起こる頭部前屈発作を主訴に来院した。在胎 41週,出生体重 3320g,正常分娩で出生した。生後1週ころから,肩と背部とに2~3cmの木の葉のような形の白斑が数個あることに気付かれている。頭部単純CTを別に示す。
この児が学童期に入った際に認める可能性が高いものはどれか選べ。
a 網膜血管腫 b カフェオレ斑 c 顔面神経線維腫
d 心横紋筋腫 e 腎血管筋脂肪腫
解説) 医師国家試験 99G47 改
Diagnosis;結節性硬化症
視力検査の問題;結節性硬化症で認めるものは3個以上の顔面血管線維腫である。本問の神経線維腫はカフェオレ斑と共にNF1で認める所見。
また心横紋筋腫は新生児期に認め、自然消退することが多いのでOPEに至らない Ans.e
Tuberous sclerosis(結節性硬化症)に関して誤っているものを選べ
a. 60-80%にてんかんを合併し治療が必要になる
b. 原因遺伝子はTSC1(9q34)とTSC2(16q13)でありTSC1よりもTSC2の方が多い
c. 5-10%にSEGA(subependymal giant cell astrocytoma)を合併する
d. 頭蓋内にT2強調で高信号、非造影病変であるUBO (unidentified bright objects) を認めることがある
e. TSC1/2遺伝子産物であるhamartinとtubelinはmTOR pathwayを抑制しているため、両遺伝子の機能が低下している本疾患群ではmTOR pathwayが活性化し、mTOR阻害剤の治療が有効である
解説)
TSC1 30%, TSC2 70% UBOはNF-1の話 SEGAは意外と少ないことに注意 Ans.d
5歳男児 出血発症の以下の腫瘍に対して摘出を施行した。病理を示す。
本疾患に関して正しいものを2つ選べ
a. MRIで脳表に認める病巣は転移を示す
b. 脳室周囲の造影病変を認めた場合、経時的に増大傾向を示すかを確認する
c. 成人期に脳室周囲の病変が新たに発生することは稀である
d. RELA fusion (ZFTA fusion) を認めることが多い
e. 腫瘍細胞はclear cellの様相を認める
解説)類:C3-2017
・脳表病変は皮質結節である・上衣下結節は5~10mm未満で通常造影されず増大しない
・SEGAの画像診断基準は,「尾状核視床溝も含むモンロー孔近傍に位置する病変で,(1)最大径1cm以上,(2)経時的に増大する上衣下腫瘍(造影効果の有無を問わない)」
病理:肥胖細胞様の大型腫瘍細胞が血管周囲ロゼットを形成、一部多核細胞あり Ans.bc
Clear cell ependymomaの話題がdeで触れられているが、ZFTA fusion+になり易い
神経線維腫症1型〈von Recklinghausen病〉について誤っているものを選べ
a. 患者の半数以上は孤発例で両親ともに健常のことも多い
b. 視神経膠腫は診断基準に含まれる
c. 神経線維腫は学童期以降に出現し、2個以上であることが基準になる
d. café au lait斑は生後6か月以降に出現し、6個以上であることが基準になる
e. 虹彩小結節は合併頻度が高く、2個以上であることが基準になる
解説)https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/NF1_GL.pdf
カフェ・オ・レ斑や結節(神経線維腫)は発生時期を過去国家試験で問われている。
常染色体優性遺伝であり、両親のどちらかがこの病気の場合、子に遺伝する確率は50%、一方で、患者の半数以上では家族歴はなく、突然変異により発症していることも知っておきたい。NF1は、出生約3,000人に1人の割合で生じると言われている。カフェ・オ・レ斑は通常生まれた時から見られ、子供では5mm以上、大人では15mm以上のものが6個以上見られる。皮膚の神経線維腫は生まれた時には見られず、学童期以降に発生し、その数には個人差がある。Ans.d
神経線維腫症1型〈von Recklinghausen病〉について正しいのはどれか。
a. 聴神経腫瘍を合併する。
b. 脊椎の変形は幼児期から発症する。
c. 神経線維腫は学童期以降に出現する。
d. café au lait斑は生後6か月以降に出現する。
e. café au lait斑の数と神経線維腫の数は相関する。
解説)医師国家試験111A2(正答率36%)
a 聴神経腫瘍を合併するのは神経線維腫症の2型である。
b・c 脊柱側弯や神経線維腫は学童期以降にみられる。ゆえにcが正しいAns.c
d café au lait斑は出生時からみられる。
e 両者はともにみられる可能性はあるが、その数の相関は指摘されていない。
遺伝性疾患の説明で正しいものを1つ選べ
A. Li Fraumeni症候群は10%程度に脳腫瘍を合併し10歳以降が多い
B. Turcot症候群 type 1は MMR遺伝子異常で10歳以降に発症する髄芽腫を合併する
C. Turcot症候群 で合併するGlioblastomaは平均生存期間が27カ月と予後が自然発生よりも良好な傾向がある
D. Gorlin症候群は基底細胞癌が脳腫瘍に先行する形で発見される
E. Gorlin症候群は髄芽腫を合併し、SHH activated は殆ど認めない
解説)財団セミナー 脳腫瘍より
A. ×Li Fraumeni症候群は10%程度に脳腫瘍を合併し10歳以降以前が多い
Astrocytic tumor 50%, Medulloblastoma 10%, Choroid plexus tumor 15%
B. ×Turcot症候群 type 1は MMR遺伝子異常で髄芽腫GBMを合併
髄芽腫はtype2で、10歳以降に発症することが特徴、APC遺伝子異常
C. 〇Turcot症候群 type 1 で合併するGlioblastomaは平均生存期間が27カ月と予後が自然発生よりも良好な傾向がある
D. ×Gorlin症候群は基底細胞癌を20代で発症するが脳腫瘍(MB)が2歳以前に先行
E. ×Gorlin症候群は髄芽腫を合併し、D/N typeなのでほぼSHH activated typeである
Li Fraumeni 症候群で誤っているものを2つ選べ。
a. 男性が女性より7倍ほど発癌リスクが高い
b. 脳腫瘍は成人期の発症が多い
c. 放射線治療やアルキル化剤で二次癌が出来る可能性がある
d. 肉腫、脳腫瘍、副腎皮質癌、閉経前乳癌で7割占める
e. 脳腫瘍はastrocytic tumor, medulloblastoma, choroid plexus tumorが多い
解説)
Li Fraumeni syn. 20歳までに20%、60歳までに90%の腫瘍発生で常・優
a. 女性が男性より7倍ほど発癌リスクが高い→乳がんのリスクがあるので
b. 脳腫瘍に限って言えば、成人期10歳未満の発症が多い☑
c. 放射線治療やアルキル化剤で二次癌が出来る可能性がある
d. 肉腫、脳腫瘍、副腎皮質癌、閉経前乳癌で7割占める
e. astrocytic tumor 50%, medulloblastoma 10%, choroid plexus tumor15%が多い
少ないが、ologodendroglioma, ependymoma, meningioma 各々1-2% Ans.ab