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家族で強迫症状に向き合うために家出

一心不乱に風呂の床を磨き続ける娘の姿を見て、私はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

「もう洗ったから大丈夫だよ」と言っても、無言で床を磨き続ける娘。

今までは手洗いがひどかっただけなのにどうして・・・


娘はASD二次障害の強迫症の治療中。

主な症状は洗浄強迫と確認強迫です。

洗浄強迫とは、自分の手や床が不潔だと感じ、何度も手洗いしたり しつこく床磨きなどをしてしまう事。

確認強迫は、不安な事があると「これって大丈夫?」と何度も確認してしまう行為です。

対応の仕方が間違っている事に気が付いていなかったため、娘の強迫症状は日々悪化の一途を辿っていました。

手洗いなどの強迫行為をやめさせようとする私と、やめようとしない娘との間で次第に言い争いが増えていきました。

唯一争いを止められそうな夫は 娘の強迫行為に一度も巻き込まれた事がないからかあまり深刻にとらえておらず、いつもの喧嘩だろうと静観するだけでした。

(だめだ、このままだとつぶれてしまう)←心の声

限界が近くなっていた私は 家族にだまって家を出ました。

夫が私の代わりに強迫行為に巻き込まれれば 今の状況をわかってくれるはず・・そんな淡い期待を込めた家出です。

思惑通り、私が不在の間に娘の確認強迫にがっちり振り回された夫。

「これって大丈夫かな?」と娘から5分ごとに聞かれ続けたことで、私がなぜ家を出ていったかわかったようです。

「疲れが取れて落ち着いたら帰ってきてください」
夫から留守番電話にメッセージが入っていました。

家出はたったの2日間でしたが、正直なところ、娘の強迫行為から一週間ほど距離を置きたいと思っていました。

毎日しつこく確認される生活から少しでも長く解放されたかったのです。


一方の娘は 自分の確認行為のせいで私が出て行ってしまったとショックを受けていました。

「がんばって手洗いとか我慢しているから戻ってきて」と何度もLINEしてきました。

娘が強迫行為を抑えようと頑張っていることを知り、少し安心できたものの、家に戻ればしつこく確認されるのではないかという恐怖心だけはなかなか払拭できませんでした。

とにかく現状を変えていかないと家族全員苦しいままになってしまう。

家出をしている間「強迫になった原因」を探ることに費やしました。

環境?
家族の接し方?
スケジュールに無理がある?
いじめのトラウマから?
疲れがたまっている?
二次障害でこだわりが強くなって強迫症になっている?

あれこれ考えましたが強迫症に関する知識が乏しすぎて、原因や具体的な解決策を見つけることはできませんでした。

娘が寝た頃を見計らって夫に連絡を取り、今の様子を聞きつつこれから娘とどう接していくかを話し合いました。


次の日、家出を終えて自宅に戻ると娘がうれしそうに「おかえり」と出迎えてくれました。

強迫症状は落ち着いている様子だったので、ゆうべ夫と話し合った内容を娘に伝えました。

「父さんも母さんもこれから本やネットで強迫症の事を調べていくようにする。もう一人で悩ませることはしないからね。また普通の生活ができるようにしていこう。」

娘は驚いたようなほっとしたような表情をしてうなづき、その後泣き出しました。

こうして強迫症の治療に向けて家族の足並みがそろいました。

今は主治医の先生に話を聞いたり、書籍を取り寄せるなどして知識をつけることから始めています。

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