海外事例研究 | ロンドン ヒースロー空港、世界最先端のデータドリブンな空港運営
はじめに
GEOTRAインターン生の伊藤です。
日本各地の空港で、ゴールデンウィークなどの大型連休中における空港の混雑が問題になっています。
本記事では、英国ロンドンのヒースロー空港が同状況を改善し、快適かつ円滑な空港の利用を促進するためにデータドリブンで取り組む事例をご紹介します。
背景
英国ロンドンのヒースロー空港は、ヨーロッパ最大の国際ハブ空港です。
コロナ禍以前の2019年には、約8,000万人が同空港を利用しました。
「全ての旅をより良いものにする」というビジョンを持ち、空港管理局を中心に、駐車場、特急列車、ターミナル、100店舗以上のショッピングモールの4組織と連携してサービスを提供しています。
一方で、多くの旅客が空港を利用する中で、空港の入国検査ゲート及び保安検査所での混雑や、混雑に伴う乗り継ぎ旅客の遅延等の問題に直面しています。
同問題を緩和し、旅客の空港内での移動の最適化及び空港全体のサービスの質の向上を行うために、データマーケティングを行う米アクシオム社及びクラウドサービスを提供する米セールスフォース社と提携して、データを活用した新たなサービスに取り組んでいます。
ヒースロー空港のデータドリブンな取り組み
取り組みの概要
ヒースロー空港は、旅客の空港内での所在の把握と、各組織で取得したデータの統合及び利活用の2点をサービスの向上を促進する要因として特定し、データドリブンな取り組みを行っています。
図2のように、各旅客が空港内に複数存在するジオフェンスを通過した際、同旅客の移動情報や位置情報がヒースロー空港のデータベース上に記録され、利用者のWi-Fiの利用情報を追跡し、空港内の旅客の追跡及び回遊状況の把握に取り組んでいます。
さらに、同空港は、旅客の一人一人を識別する匿名IDを付与するシステムを導入し、各組織で分散していた旅客情報の個人IDへの紐付け及び統合を行っています。
活用データ例
個人IDに統合される旅客のデータには、1.事前情報と2.リアルタイムデータの2種類があります。
1.事前情報
ヒースロー空港の会員(Heathrow Rewards)情報
事前予約情報(列車のオンラインチケット、駐車場の事前予約、レストランの予約情報等)
旅程(塔乗予定の航空機の時間、乗り継ぎ情報)
2.リアルタイムデータ
空港のWi-Fiへのログイン情報/利用状況
カスタマーサービスとのやりとり
決済情報
空港内のジオフェンスの通過情報
個人IDは繰り返し利用されることから、個人の空港内での過去の行動データが蓄積され、同空港は個別化されたサービスを旅客に提供しています。
活用事例
ヒースロー空港では、旅客のデータが統合・共有されるようになったことで、旅客の属性や行動履歴、消費傾向に応じたサービスを提供することが可能になりました。
以下は、同空港の500万人以上の会員及び非会員に提供可能なサービスの具体例です。
データ活用の意義
ヒースロー空港は、旅客のデータの統合及び位置情報の把握によって、以下の3点で好影響が確認されています。
1.ショッピングモールでの購買意欲の向上
それぞれの旅客にとって最適のサービスを提供することが可能になり、旅客の空港での買い物体験の向上を促進しています。
2.状況の変化への迅速な対応
空港内のさまざまな地点で旅客の到着予定時刻を集計することで、予想される到着客の急増に備えて人員配置を変更できるようになり、入国審査や保安検査場での旅客の対応が改善されています。
3.フライトスケジュールの遅延の減少
リアルタイムでの旅客の移動情報が可能になったことから、どの旅客が乗り継ぎ便に乗り遅れる可能性が高いかを予測し、出発便が遅延した乗客を待つ間に、航空便の遅延が発生する可能性を低減します。
最後に
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、英国ロンドンのヒースロー空港でのデータを活用した空港におけるサービスの向上及び円滑な空港利用を促進する取り組みについて、ご紹介しました。
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