見出し画像

【画廊探訪 No150】言葉は、朝日に溶けて流れはじめる―― ARchitecT K2作品に寄せて――

言葉は、朝日に溶けて流れはじめる
―― ARchitecT K2作品に寄せて――

襾漫敏彦

 かつて、薬師寺を訪れたフェロノサは、東堂を見て「凍れる音楽」と評した。建物は、そこに変わらずあるものであり、変化しないもの空間を限定するものである。けれども、その中で、人が人として生き、暮らしの時を過ごすとき、音楽が流れ、時が溶けて動き出す。




 ARchitecT K2は、縦と横の力線をもとにした幾何学的構造をモチーフとして油彩で描く作家である。彼は、本来、建築士であって、正式な美術教育の過程をうけたわけではない。
 建築士の日常の中で、建築の領域に行き詰まるようになり、その迷路から未来へ向けて抜けていくきっかけとして、絵画の世界に足を踏みいれることになった。というものの、美術も建築も、アート、技術、人の手によってなされるものなのである。



 建物は、家は人の生活をつつむものである。それは、人生を豊かにする形式ではある。けれども、時として、それにあわせて生きようとすれば、建物は拘束ともなり牢獄と化すこともある。そのとき、建物は、過去から未来へと流れる彼の時間を凍らせてもしまおう。
ARchitecT K2は、その建物をデザインする建築士であった。図面をつくる彼にとって、図面とは、その時の最高のものである。でも、その最高とは、完成の段階のことである。完成を越えたところから、時がはじまり生がはじまる。




英国の国民画家のターナーは、若い時、建築設計の仕事を行なっていた。名作といわれる彼の風景画は、荘厳な伽藍のように、ある瞬間を見事に切り取っている。それは、崩れ落ちる直前の波濤のように凍った一瞬なのである。しかし、未来は、そこから人を奈落へも天上へも引き寄せる。変化も生も、選択も自由もその間にある。
 ターナーの晩年の作品に僕は変化と動きを見る。ARchitecT K2は、幾何学構成に揺れの要素を加える。アルチザンが、変化と自由を求めるとき、氷は溶けて、音楽が流れはじめるのだ。





***** :***** :*****
ARchitecT K2さんおウェブサイトです。私がかけてないことがほぼ説明されてますよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?