~日本語の曖昧さや特殊用法を再認識させてくれる面白い本を読んだ~
最近、面白いというか、読んでいて痛快な本を読んだ。
タイトルは「ニッポン政界語読本 会話編」(著者:イアン・アーシー、太郎次郎社エディタス 2023)=下記参照
この本を読んで感じたことは二つ。
(1)講演やスピーチ、答弁(国会、記者会見など)における「理想と現実」
(2)普段意識せずに使っている日本語の不可思議さの指摘
まず(1)について
私は20代から30代の会社員(PR会社)時代には、いろいろな内容のセミナーに出向き専門家の講演を聴くことがあった。40代に独立して危機管理・広報コンサルタントになってからは、逆に自分が講師として企業、自治体、団体などでの研修、セミナー、講演など、人前でスピーチをするのが中心となった。これは現在まで続いている。ここ5年くらいは、専門の本業(危機管理広報、危機管理、広報)だけでなく、長年趣味で研究を続けている昭和の時代の日本の映画監督や俳優などについての講義も。
私が人前でスピーチをする際に心掛けているポイント(=理想)としては
私は講義にはパワーポイント資料を使い、配布資料はワードを配布というスタイルをとっているが、資料作成においては上記のポイントを心掛けている。これが完全に出来ているかの自己評価は難しいが、企業や自治体等の受講者のアンケートを見ると、上記ポイント関連で評価していただくことが多い。ありがたいことだが。
さて本書は、政治家や官僚の国会等での説明、答弁の実例が細かく記述、検証されているのだが、これはまったく私の掲げるポイント(理想)とは対極にある。つまり現実ということ。
見るとストレスがたまるので、最近は国会中継や政治関連のニュースはできるだけ見ないようにしているのだが、本書で紹介された実例はかなり覚えているものが多い。
本書には紹介されていないと思うが、今年になってYouTubeやSNS中心に話題になっている某女性知事の定例記者会見での説明や回答など。
(2)は正に、普段無意識に使っている日本語について「外国人の著者にはこのように感じられるんだ」と再認識させられること。
日本語には、よくわからない曖昧で便利な言葉が多数ある。
本書では
「理解」の特殊用法
「誤解」の特殊用法
など他にも多くの言葉の使用について、シニカルな視点で紹介している。読んでいて思わず笑ってしまったのだが・・・
これはやはり著者がカナダ人のフリー翻訳家で、そして日本語に堪能な方だから検証できることだろう。
私も大学でフランス文学専攻だったので、当然入学後に初めて一からフランス語を勉強したのだが、やはりフランス語の言葉や表現などで、「どうしてこういう言い方をするのだろう?」と疑問に思ったことも多々ある。おそらくフランス人は意識せずに使っているのだろう。日本語も同様だ。
習い始めた40数年前の20歳頃から現在に至るまで、いまだにフランス語で不可解なのがなんといっても「数字の数え方」だ。
特に70から99までのフランス語の数字は「どうしてこんな数え方なのか」と。これはネット検索してもらえればどんな数え方をしているかわかるだろう。
それから複雑な動詞の活用。例えば「行く」は日本語では、私、あなた、彼、彼女、我々などすべて同じ「行く」と使うが、フランス語(行く=aller)は
j私が行く、あなたが行く、彼(彼女)が行く、我々が行くなど、それぞれ変化した動詞が使われる→これもネット検索で確認できる。
この動詞に関する日本語とフランス語との比較は、哲学者・フランス文学者の森有正が著作の中で深い考察をされている。
本書は、日本語では、曖昧でポイントをずらしたスピーチや回答が意図的に出来てしまう(非常にまずいことなのだが)ことを、堅苦しくなく笑いをまじえて認識させてくれる本だと思う。
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