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【書籍】「エッフェル姉さん」→ロラン・バルト(Roland Barthes)?

毎年恒例の新語・流行語大賞。
今年2023はノミネート30本の中に、一時期、写真がSNSで炎上し、各メディアでも批判的に報道された「エッフェル姉さん」が入ったようだ。

「エッフェル姉さん」について今さら批判的なコメントをするのもバカバカしいので省略するが、エッフェル塔と聞いて私が想起したのは、今から40数年に大学で習ったある書籍だ。
 
それは、ロラン・バルト(Roland Barthes)の著作「エッフェル塔」(La tour Eiffel)1964。ロラン・バルトは有名なフランスの哲学者、批評家(1915-1980)である。本書は、 1980年頃、私が大学3年生(私大の文学部フランス文学科)の時に、ゼミで習った本(教科書テキスト=下記表紙写真)だ。

冒頭の3行は刺激的で面白いエピソードから始まる。
フランス語テキスト(赤線部分)

「モーパッサンは、自分が少しも好きではないエッフェル塔のレストランで、しばしば食事をした。だってここは、私がパリで塔を見ないですむ唯一の場所だからさ、と言いながら……。」(ロラン・バルト「エッフェル塔」P9 :訳=宗左近、諸田和治、審美社 1979)

有名な作家のモーパッサンは、パリの景観を壊した(と感じた)エッフェル塔が大嫌いだったというエピソード。
いかにもフランス人っぽい、少し皮肉交じりの言葉で。
この後エッフェル塔について、ロラン・バルトは様々な視点からの論考を展開させていく。実に面白く刺激的な哲学エッセイだ。ところどころ難解な文章もあるのだが・・・。 
 
20代の時にこの冒頭の文章(もちろんフランス語のテキストで)を読んだ時に、「いいなぁ」と感じた。
私は映画でも小説でも、「都会的な」「ソフィスティケイテッド」「洒落た」「ユーモア」「ウィット」といった要素に満ちた作品を好んできたしそれは今も変わらない。江戸・上方両方の古典落語マニアでもある。
 
映画監督でいえば、成瀬巳喜男、小津安二郎、川島雄三、市川崑など。外国ではビリー・ワイルダー、アルフレッド・ヒッチコックなど。逆に言えば「粗野」「野蛮(特に暴力表現)」「露悪的」「あざとい」要素に満ちた映画は観ないようにしているし、苦手だ。
 
 最近つくづく感じるのは、何かを批判するときの言葉。
SNS、メディア報道、インターネット記事など。
全般的に非常にストレートで、そのままのくどい説明が多い。
ユーモアセンスや洒落っ気に欠けている。
「説明ではなく表現する」という感覚が不足しているのだろう。
インターネット記事やYouTubeなどのタイトルには、露悪的であざとい見出しやフレーズが氾濫している。
現代の日本の閉塞感をそのまま表しているかのようで・・・ 
 
もちろんユーモアや洒落っ気などを慎むべき内容(深刻な事件・事故・不祥事・災害など)もあるが、それは書く本人のセンスに委ねられるものだ。
相手のことを考える想像力や芸術・文化に対する教養がベースにあって初めて共感を呼ぶものとなる。
SNSの投稿などにも「上手いこと言うなぁ」と感心する見出しや言葉も時々あるのだが。
 
ちなみに私はこれまでパリには旅行で4回行っているが、エッフェル塔も一度だけ上まで行き、「エッフェル姉さん」の写真撮影場所の「トロカデロ広場」は数回訪れたことがある。
今から40~30年前にあんなポーズをとって写真撮影していた観光客はいたかなぁ?
そして「エッフェル姉さん」の作者って誰なんだろう?

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