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1970年代ベストアルバムランキング10~1位

前回までの記事がこちら。

10. Steely Dan - The Royal Scam (1976)

Steely Danといえば成熟した、次作「Aja」が代表作である。スタジオミュージシャンを招き、計算に計算を重ねた洗練されたジャズやソウルを組み合わせた、まさに「完璧主義」な部分が見える作品であった。しかし今作の「The Royal Scam」はそれよりもロックしている作品で私はそこが気に入った。冒頭1曲目の「Kid Charlemagne」はラッパーのKanye Westがサンプリングにも使った事でも有名であるが、何よりもこの曲の魅力は後半のラリーカールトンのギターソロのカッコよさよ。今作はこうした演奏隊の洗練された演奏と歌はあくまでもポップで聴きやすい所に私は心地よさと興奮を覚えた。Steely Danといえば一番有名な「Aja」から聴いてみようという人も多いと思うが、ロック好きなら寧ろ「Aja」以前の音楽を聴いたほうがいいかなと個人的に思う。

9. Stevie Wonder - Innervisions (1973)

70年代のStevie Wonderはいわば「スター状態のマリオ」みたいな無双状態に入った出す作品どれもクオリティが高い。中でも私が気に入ったのが1973年にリリースされた今作である。モータウン出身であるが、そのモータウンサウンドから彼なりの半端ないクリエイティビティが存分に表現された作品といった感じで、黒いグルーヴの中にStevie Wonderのヴォーカルの万人に愛される天性のヴォーカルワーク、とっつきやすいポップなメロディと非の打ちどころのない作品であるなと思う。しかし歌詞は暗い所も多く、例えば「Living For the City」では人種差別などの社会的な事が歌われている。Stevieのヴォーカルも怒りが伴っているのだがやはり思わず聴き入ってしまう声質をしているし、後半につれて緊張感を高めていく歌唱にしていく展開は圧倒される。きっと今作でStevie Wonderは伝えたいメッセージと表現したい音楽を表すことが出来たんだろう、それくらい完璧な作品になっていると思う。

8. Bob Dylan - Blood on the Tracks (1975)

Boby Dlyanという人自体で難解だと思うが、特に70年代の作品を見るとやっぱ難解だなと思うわけで、ファンに怒られるがそこまで名作を出しているとは思わない。「Desire」みたいに良いなと思う作品もあれば、70年代末期の作品は良さがなかなか見いだせない。しかし今作に関して言うと、かなりの傑作だと思う。とはいえ、どこが良いか説明するのは難しい。やはり難解な男だと思う。強いて言えば、今作は統一されたフォークミュージックの世界観で一曲目の「Tangled Up in Blue」が好きなら最後まで聴けるであろう。実態がつかめない不思議な魅力であるが、わからないものを楽しむのは芸術の魅力ではなかろうか。

7. Joni Mitchell - Blue (1971)

Joni Mitchellフォーク路線の最高傑作。冒頭1曲目から変則チューニングされたギターの音が聞こえ、この時点でこの作品は従来あるフォーク作品とは違うものと感じるであろう。しかし、そんな難しいこと感じずただこの作品に身をゆだねるのが良いと思う。型通りでは全くないこの音楽を聴いているとまるで異国を一人で落ち着いて旅しているかのような不思議な錯覚に陥る。唯一無二の感覚を持っているJoni Mitchellでは本来のフォークでは染まりきれないもので、フォークの世界観ではあるが、メロディはどの曲も起伏があり、一つ一つの曲が独立しており、単調さとは真逆のバラエティに溢れていて聴いてて飽きない。そうして美しく表された繊細さの最後のほうにたどり着く「A Case of You」という曲を経て、「この旅は最高なものだ」と余韻に浸ることが出来る。

6. The Band - Northern Lights - Southern Cross (1975)

デビューの時には泥水のようにドロッとした濁りの見える味わい深さのあったバンドであるが、解散手前の今作まで行くとその泥は流水に流され、最後には海に辿りついたかのような音楽へと変わっている。そんな今作は最初のような泥臭さは消え、熟成されたワインのような良い香りを持った音楽となっている。単純にどの曲も良くて、「Ophelia」などキャッチーな曲もあれば、「Hobo Jungle」の味わい深すぎるバラードなどバラエティに富んでいて、演奏面にしても、ガースハドソンのシンセサイザーの実験が、アルバム全体に色付け、ロビーロバートソンのギターも今作ではいつも以上に弾いていてカッコよい。それに加えて3人のヴォーカリスト、それぞれの演奏、聴けば聴くほど新たな発見を見つける作品となっている。

5. David Bowie - Low (1977)

アルバム毎にスタイルまで変えてしまうDavid Bowieではあるが、今作ではアンビエントミュージックを開拓したBrian Enoと共作した実験的作品。この作品の曲を聴くと分かるが、David Bowieには疲れというか人生の厳しさを憂いているかのようなものが見えるが、というのもアメリカでのドラッグ漬けの日々から脱却するためにドイツへ行ったとか。そのために今作ではクラウトロックっぽさも感じる。私は最初このアルバムの良さを理解できなかった。後半はインストしかないし、暗い作風だし。しかし、何度も聴いているうちに身に染みていき、前半歌モノ、後半インストという編成の面白さを見出し、この作品全体の哀愁に芸術を見出し、David Bowieの精神も感じることができる。まさにアーティストとして表現するものの最高傑作のひとつだ。

4. Michael Jackson - Off the Wall (1979)

Michael Jacksonといえば幼少期からJackson 5というグループで活動し、ソロでも4作出している。その作品らは典型的なモータウンサウンドであり、これもこれで良いんだけど、4作続けて聴くと、どこか頭打ちで限界の見えるものであった。そこから4年を経て彼の創造心が爆発したのがこれ。ほんと凄すぎるぜマイケルジャクソンと思わざるを得ない。子供時代にはただただ歌を歌っていたらしく作曲には関わりを持てなかったらしいが、その鬱憤が晴らされたかのか今までのモータウンサウンドから離れ、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎え、色んなアイデアを取り入れている。作風は1979年当時に流行っていたディスコやファンクといったものだが、1曲目の「Don't Stop Til You Get Enough」から最後までノリノリなご機嫌なナンバーに占められ、演奏隊のグルーヴも凄まじい。「Get on the Floor」のファンクなベースリフは感動もんだし、バラードも美しく愛に溢れ泣ける。とにかくどの曲も凄く良くて、70年代のポップスの最高傑作のひとつだと思う。

3. Carole King - Tapestry (1971)

自分の中で70年代を象徴する音楽の一つはこれ。80年代の海外の音楽はもっと近代化され機械化の発展といいますか、言い方は難しいけどシンセがブイブイ言わせていたイメージではございますか、70年代はもっとオーガニックで自然的な人の手によって手作りみたいな漠然としたイメージがあるんだけど、そこらへんを象徴するのがCarole Kingのこの作品なんですよね。この作品では、無機質な機械音とは違う、生楽器によって作られたロック、フォーク、ポップスが聴こえ、Carole Kingの優しい声に、完成度の高い曲群、すべてが最高。テクノロジーが発展した70年代の後期にはない有機質な音楽愛に包まれたこの作品を聴くと非常に癒される。70年代前半を代表する作品だ。

2. Brian Eno - Discreet Music (1975)

ランキングを作るにあたって、アルバム単体の完成度を一つの基準にしているので、この作品に関して言うと、非の打ち所がない100%に近いものとなっていると思う。歌声が無いアンビエントミュージックであるが、前半は30分の長尺、後半は有名なカノンコードを生み出した「パッヘルベルのカノン」に基づいた3つの曲という非常にシンプルな編成ではあるのだが、そこに何一つ悪いところのない完璧な魅力を感じるのだ。30分の長尺の曲では管楽器やシンセらしき音で同じフレーズを流しながら段々変化していくのだが、それが最高で、天に召される気持ちよさ、30分という時間を意識しなくなる程、心地よい時が流れ、後半のカノンに基づいた3曲はこれまた美しい時間でクラシックの音に酔いしれてしまう。これほど完璧に近い作品は中々なく、最高級の癒しをくれる傑作だ。

1. David Bowie - The Rise and Fall of Ziggy Stardust (1972)

堂々の一位を飾るのはこの作品。コンセプトアルバムで人類滅亡の危機から救世主として異星から現れたロックスターの成功から没落をテーマにしたものである。このテーマの時点で人生の儚さを考えさせ、決して上っ面な言葉では表現できないリアルを映しだし、そこに魅力を見出す。それに加えて、どの曲も素晴らしく、「ロックンロール」のカッコよさ、哀愁、美しさ、繊細なところが表現されてて、どの曲も最高最高最高であり、私が思うロックのアルバムとしての一つの理想となっている。前述にて、アルバム単体の完成度を評価の一つと述べたが、まさにこのアルバムにはコンセプト、ロックとしての音楽、まさに言葉通りの満点の作品だなと感じる。

まとめ

音楽ストリーミングサービスを活用し、聴きたいものを聴きまくったが、中には聴けないやつもあってKing Crimson, Canとか聴きたかったが泣く泣く断念した。とはいえ、この時代をdigるには満足した程聴きこんだので、これまで思っていた「このアーティスト、バンド名前は知ってたけど音楽は知らない」というモヤモヤを無くし、知識へと昇華させたのが自分の中ですごくデカい出来事だ。また気が向いたら80年代をdigろうかなとは思うけど、今年いっぱいは2020年の作品を取り合えず聴いてこっかなと思う。

それでは。

#洋楽 #音楽 #1970s #アルバムランキング

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