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2021年間ベストトップ50

50-41位

50位 Japanese Breakfast - Jubilee (6/4)

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韓国系アメリカ人Michelle Zaunerによるソロプロジェクトの3作目。今年も今年で良いポップスに出会ったなと思う1年であった。今作はその中の一つ。一番気に入っている曲、「Be Sweet」はピッチフォークのベストトラックに選ばれたらしい。そしてインディーロックバンドのWild Nothingのメンバーが関わっているとか。別の曲で(Sandy) Alex GことAlex Gも参加している。この作品はアメリカのインディー特有のノスタルジック的な触感がある。この手の米国のインディーは結構聴いてきたがその中でも埋もれることもない、花火のように火花が光るポップで37分10曲という丁度いい構成で聴きやすい作品だ。

49位 Maisie Peters - You Signed Up for This (8/27)

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英国出身のMaisie Petersは、元々2018年に出したシングルでめちゃくちゃ注目され、Taylor SwiftのカバーをしたらTaylor Swift本人から絶賛され、そして影響を受けているEd Sheeran主宰のレーベルと契約している。この作品はそんなかなり注目度の高い彼女のデビュー盤だ。そんなことも知らずにとりあえず聴いてみて感動したのだがツイッターで日本語検索すると結構呟かれていたりと、今後もっと有名になる可能性を秘めている。そんな彼女の作品はElle GouldingやSigrid等が通ってきた上品なエレクトロポップ。Ed Sheeranとも共作した「Psycho」は今作を代表するキラーチューンでかなり良い。今作にはJim-E StackやFred Again..など裏方もいま面白い人達を起用して、メジャーにも通用するし、インディーポップ好きにもアピールできる作品になっていると思う。

48位 The Armed - ULTRAPOP (4/16)

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デトロイト結成のバンドによる3rdアルバムの「ウルトラポップ」。突き抜けてカオスでノイジーで、ヘヴィーなサウンドであるが、確かにアルバム全体の雰囲気にはどこか皮肉的な「陽気」さが備わっており、その辺からしてある意味「ポップ」な作品だなと感じる。この辺のハードコアなパンクは聴き通してると疲れを覚えるのだが、この作品は12曲38分とバランスが取れていて、終始楽しめることが出来る。アルバムを楽しめる要素として「収録時間」はとても大事なので、冗長的に続くより、あっさり終わる作品のほうが好きだ。

47位  Spellling - The Turning Wheel (6/25)

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カリフォルニアを拠点にした女性アーティストによる3番目のアルバム。wikiによると彼女はカリフォルニアのとある教会で育ってそれが彼女の音楽に影響を与えたそうだが、確かに今作にはゴシックで同時にダークな雰囲気が備わっているプログレポップだ。彼女の声質はスウィートで落ち着いた印象を抱かせて、どこかイギリス出身のNAOに近いなと思う。それで個人的に今作の気に入ったところはこうしたゴシックに統一された雰囲気が良いのと冒頭の「Little Dear」みたいなジャズポップとか力を込めて歌い上げる「Awaken」等、歌メロが好みなのが多数あって良いな~と思いましたね。

46位 Joseph Shabason - The Fellowship (4/20)

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Joseph Shabasonはカナダのマルチプレイヤーで同じカナダのDestroyerやThe War on Drugs等でも演奏している。そんな彼のソロプロジェクトのこの作品は歌なしのアンビエントで出来ている。何が気に入ったかというと、この作品で聴こえる澄んだ空気と浮遊感がthe 1975の同様のアンビエントな曲「Please Be Naked」を思い出させるところがあるのだ。この曲からずばりアンビエントというものに興味を持ったのだが、Joseph Shabasonの曲も同様、リラックスできる効果もありながら、どこかずるずると不思議な世界へ引き込む魅力がある。

45位 Laura Mvula - Pink Noise (7/2)

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英国出身の現在35歳の彼女の作品は80'sポップを彷彿させる作風である。若いころはアカペラのグループに属して世界中を旅したり、その後はジャズ、ネオソウルのバンドを組んでいたらしい。音楽学校を卒業した後は音楽の代用教員として働いていたりと、ソロとして活動する前から音楽人生の道を歩んでいるようだ。個人的にこの作品をどのように受け止めたかというと、ポップスな作品といえば一曲どかんとキラーチューンがあったりするのだが、その面ではこの作品は爆発力のある曲は無いのだが、全体的に安定して洗練された80's風のシンセポップ、そして若い頃に鍛えたソウルフルな歌い方が心地よく感じることが出来た。

44位 CFCF - Memoryland (4/9)

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CFCFはカナダのエレクトロミュージシャン、Michael Silverのステージネームで、CFCFはモントリオールのテレビ局CFCF-TVからとったとか。今作のアートワークのチープな感じがそんなに良いとは思わないがある意味音楽はアートワーク通りのように思えるインディートロニカな作品だ。じゃっかん粗削りな出来となっている今作ではあるが、ブレイクビーツやハウス以外にももろパンクな曲があったりとどこかロック好きにもアピールできるポイントがある。Bandcampの本人の語りによると、今作は
Sonic Youthや Smashing Pumpkins、the Chemical BrothersやBasement Jaxx等90年代に活躍した人達に影響され、確かにサウンド全体に90年代の雰囲気があると思う。まさに「Memoryland」というタイトル同様、Michael Silverの思い出から形成された大作だ。

43位 IDK - USEE4YOURSELF (7/9)

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IDKことJason Aaron Millsはイギリス生まれのアメリカ人ラッパーで2015年あたりから名を挙げた人らしい。それでこの人はどうやらトラップ経由で有名になったらしいけど、今作においてはそこまでトラップトラップしてないね。どちらかというとややセンチメンタルでやや内省的な作品になっていると思う。Kanye Westに似てる声質から繰り出されるラップは案外聴きやすくてフロウも結構キャッチー。苦手なヒップホップのタイプじゃないし、聴きやすいから好きって感じ。

42位 TORRES - Thirstier (7/30)

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TORRESはMackenzie Ruth Scottによるプロジェクトで2012年の大学生の頃から活動しているようだ。保守的な教会で生まれ、幼い頃から音楽に触れる環境にあり、高校生でギターを弾き始めて、毎週教会や老人ホームで賛美歌を歌っていたそうだ。音楽サイトAOTYには2013年のデビューアルバムから今作までユーザーレビューが100票超えているため、初期から人気のようだ。私は今作で初めて知ったのだが、今作は割とガチャガチャしたインディーロックという印象。しかし細かく見ると「Don’t Go Puttin Wishes in My Head」のやや80年代感ある爽やかなロックから、「Thirstier」のブルースロックからの影響、「Hug From a Dinosaur」のアンセム等、引き出しは案外多く、個人的にインディーロックの良心的アルバムだなと感じた。

41位 Snail Mail - Valentine (11/5)

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Linsey JordanのプロジェクトSnail Mailの待望の2ndアルバム。前作から3年と期間が空いていて、活動が見られないように思えたが、実は前作から直ぐに曲を書いていたらしい。しかしながらツアー等で忙しく結局は手詰まりになったそうで、曲作りが再開したのはコロナ期間から。前作はワールドワイドに絶賛されている作品であるが、個人的には総合に見てこっちの方が好きかもしれない。前作の「Pristine」程の超名曲は無いけど、誰目線だっていう話ではあるが「大人になったな・・・」と思わせる作品。前作は良いものの、ややフラットな印象があったものだが、今作においてはLinsey Jordanの声や曲調も艶が出て前作から成熟したなと思う。多分次の作品では良い意味でどんどん初期から離れた作品になるが、1stが良すぎる上に初期が一番良かったと言われるアーティストになりそうだ。

40-31位

 40位 Silk Sonic - An Evening with Silk Sonic (11/12)

Bruno MarsとAnderson .Paakからなる超スーパーユニットによるデビューアルバム。本来は来年にリリースするニュースもあり、その理由に「修正モードに入っている」とあったそうだが、スーパー才能の塊の2人がぶつかれば、やっぱ修正しきれない部分も出てきて早まってリリースされたのかなと勘ぐってしまうが、これは勝手な考えなので真実は全然違うかもしれない。内容はザ・70年代のR&B、ソウル、ファンクといったもので、かなりスウィート。レコーディングもそのまんま時代に沿った内容で録ったらしい。一般ウケにも批評ウケもしてて素直に凄い。しかしBruno Marsという男は、自分の本当にやりたいことを表現してそれが評価されているの本当に凄いと思う。 

39位 St. Vincent - Daddy’s Home (5/14)

Annie Clarkによる70年代の音楽をテーマにした作品。とあるインタビューにてサウンド面で71年から76年のニューヨークのダウンタウンで作られたサウンドを目指し、Steely DanやStevie Wonderを例にあげていた。それらは彼女の父によるレコードコレクションであり、また彼女が小さい頃聴いていた音楽らしい。しかし先ほどの例にあげたアーティストとは違って結構サイケな作品だなと思う。でもまあ聴いていると70年代の空気が出ていて良い。80年代近くのシンセの音がバンバンと目立つ前の70年代の人工で哀愁のある音が好きなので、そういう面でこのアルバムは堪能出来ていいですね。今作はAnnie Clarkの父親が2019年に10年からの出所を機に書き始めたそうで、この作品が本人にとって大切なものだろうとは思うが、St. Vincentの作品としては異色だなと思う。

38位 Jungle - Loving in Stereo (8/13)

英国のデュオによる3作目の作品。JungleはJosh Lloyd-Watsonと Tom McFarlandによるユニットでこの二人は小さい頃からの付き合いがありいわば幼馴染の関係にあるらしい。彼らのデビュー作は珍しくノエルギャラガーが絶賛したとか。でも個人的にJungleにはセンスを感じるけどそこまでタイプじゃなかったのだが、今作は良いなと思った。ほとんどがアッパーなダンスチューンで曲が良いし、彼ら特有のヴィンテージな雰囲気は健在で今作は何故か自分にヒットしましたね。

37位 Little Simz - Sometimes I Might Be Introvert (9/3)

世間的には今年を代表するっぽい作品となったLittle Simzの4枚目のアルバム。本名はSimbiatu Abisola Abiola AjikawoというそうでSimbiatuから通称Simbiと呼ばれてるそう。あとアーセナルのファンらしい。前作の「Grey Area」もマーキュリープライズにノミネートされたり批評評価も高い彼女ではありますが今作はその高いハードルを悠々と超えたものとなりましたね。内容は大作に作られておりゴージャスなサウンドが目立つ。ヒップホップだけではなく、R&Bやソウル、そしてアフロビートな曲調もあったりバラエティに溢れていて、かつアルバムが地続きに隔てられずに続いているようで一つの物語のように感じる。この辺の雰囲気に自分はJanelle Monaeの2010年の「The ArchAndroid」をどこか彷彿させるところがあるなと思った。個人的には「Protect My Energy」のオシャレなビートな感じがお気に入りだし、「Point and Kill」のアフロビートで力の抜けたコーラスに謎の中毒性を感じて好きですね。

36位 Pond - 9 (10/1)

PondはオーストラリアのPerthで結成された場所でTame Impalaと同郷。両バンド交友があるらしく、Tame ImpalaのKevin ParkerはPondに所属していたし、PondのバンドメンバーはTame Impalaのライブメンバーとなっている。アルバムタイトルの「9」というのはまさしく9枚目のアルバムという意味であるらしいが正直初めてこのバンドを知った作品だ。内容はやはりサイケロックがベースといったところで、「America's Cup」とか80年代感あるファンクな曲もあればテクノサウンドの要素がある「Human Touch」や「Pink Lunettes」、胸躍るサイケポップ「Czech Locomotive」等、各曲クオリティが高く、ベテランらしさを感じる完成度の高いアルバムだ。

35位 Genesis Owusu - Smiling with No Teeth (3/5)

Genesis Owusuはオーストラリア出身のKofi Owusu-Ansahのステージネームだ。今作はオーストラリアのグラミー賞的アワード、2021 ARIA Msuic AwardsにてAlbum of the Yearに選ばれた作品である。最初このジャケット見た時、「これはヒップホップなんだな」と思ったけど、まさかの勘違いでヒップホップだけではなく、オルタナR&B、ネオソウルやラップロック等、沢山のジャンルが詰まっている。それも普遍的なものではなく、オリジナリティが際立っていてデビュー作ながら非常に出来の良い作品だ。単純に聴いていて楽しい。

34位 Jeff Rosenstock - SKA DREAM (4/20)

アメリカの熱いパンク野郎、Jeff Rosenstockによる2020年にリリースされた「NO DREAM」のスカバージョン。今作については今年のエイプリルフールでツイッターで発表されたらしく、お陰でどうせジョークだろうと思われたらしい。前作は熱くキャッチーでカッコいいロックンロールであったがそれのスカバージョンにあたる今作もその良さは失われていなく、陽気なスカパンクである。前作で一番気に入った「f a m e」は今作では「p i c k i t u p」となり、ひたすら"You will not control"と歌いまくるシーンがあるのだが今作ではジャズアレンジが施されており、オリジナルの熱いロックアレンジからの変化に驚き、思わずこの人は天才だなと感心した。ただの陽気なロックで済まされないJeff Rosenstockの才能に驚かされる作品。ぜひオリジナルと一緒に楽しんでほしい。

33位 Wolf Alice - Blue Weekend (6/4)

英国出身バンドによる3rdアルバム。今年のロックで最も評価の高い作品の一つ。だいたい、ロック界を背負う風格のあるバンドってのはロック好きに好まれる。今作はFoalsの「Total Life Forever」やArctic Monkeysの「AM」みたいに「深化」しつつメインストリームでも通用しそうなそんな代表作になりそうだ。サウンドとしては柔い風が吹いているような気持ちよさの中にある程度の緊張感のあるオルタナロック。「Play the Greatest Hits」のパンクな曲調や、「The Last Man on Earth」の徐々に盛り上がる展開など、まさにロックバンドで聴きたい、ロックバンドならでは素晴らしい作品。

32位 The Black Keys - Delta Cream (3/14)

ベテランUSバンドによる10番目のアルバム。今作はミシシッピヒルカントリーブルースの歌のカバーアルバムというもの。この辺の歴史は全くてんで分からないが、どうやらこのブルースの類は、反復したギターリフなど「グルーヴ」というものを強調したものらしい。だいたい10時間でレコーディングされたこの作品はブルースの文化にリスペクトして作られた故、新しさというのは皆無だが、そんなことはどうでもいいくらいに音がカッコいい。痺れる。キレキレのギターサウンドやタイトなドラミング、ボーカルDan Auerbachのクールだけど熱量の籠もった歌唱。単純にカッコいい。

31位 Charlotte Day Wilson - Alpha (7/9)

カナダはトロント生まれの現在27-28歳R&Bシンガーソングライターで、2012年からEPやらシングルをちょろちょろとリリースし、2014年にはファンクバンドThe Wayoのメンバーになった。The Wayoは2015年にツイッターの更新が無くなっているので、バンドは休止になったのかもしれない。2016年ごろからソロに転身して活動を始めたが、その頃から色んなアーティストとコラボをし始め、現在までにIgloohost、BADBADNOTGOOD、Daniel Caesar、Local Natives、KAYTRANADA、Loyle Carner、James Blakeの作品に何らかの形で参加している。詳しくはWikiにあるので見てみてほしい。今作を見てまず驚くのはゲスト陣の妙な豪華さで、今作にはBADBADNOTGOOD、Daniel Caesar、MustafaやThe InternetのSydが参加している。Charlotte Day Wilsonも才能あり、彼女のスモーキーでソウルフルな声は特徴的だし、アルバムの曲調も落ち着いたソウルとR&Bで、それとなく渋いのが心地よい。Babyfaceも作曲に参加した「Mountains」は今作のハイライトとなる代表曲だが、この曲は後にDrakeの「Fair Trade」で派手にサンプリングされている。現時点で色んなアーティストと関係を築いていて、これからの音楽シーンに重要な人物になるかもしれない。

30-21位

30位 Rochelle Jordan - Play with the Changes (4/30)

 Rochelle Jordanは英国出身のR&Bシンガー。これまでに3作出してるが、海外サイトのレビュー数観てるとそれほど注目されてはおらず、2014年から7年ぶりの今作で注目され始めたように見える。彼女は過去にChildish Gambinoの楽曲「Telegraph Ave」に参加していたり、Jessie Wareとツアーしていた経歴がある。そんな今作はドラムンベースやUKガラージ、ハウスなどグルーヴィーで踊れるダンスアルバムだ。歌唱はクールでカッコよくて曲は踊れる。こういうのを90年代のレイヴカルチャーに近いものがあるらしいが、私はその辺疎いので、90年代のこの辺りの音楽好きなら良い作品なのかもしれない。

29位 Turnstile - GLOW ON (8/27)

ボルティモア結成のハードコアパンクバンド。過去には日本に来日している。今作は今年の音楽の中でもメディア評価がかなり高い。というのも今作はハードコアパンク以外にも、グランジやメロコアパンク、R&Bなど様々なジャンルを取り込んでいる。一つのアルバムに多様なジャンルを入れた作品は珍しくないが、パンクバンドがこういうことするのはかなり珍しいような気がする。とりわけ驚いたのはBlood Orangeが2曲参加していることである。コラボのきっかけは互いが互いの音楽のファンであったことらしい。ハードコアの激情なサウンドにBlood Orangeを歌わせた功績は偉大だと思う。激しめなサウンドの中で意外なアプローチで踊らせにかかったり、はたまたポップになったり面白いアルバムだ。

28位 Charli Adams - Bullseye (7/16)

Charli Adamsはアメリカのシンガーで、年齢は明かしてないらしい。おそらく20代前半だろうと言われている。今作はドリームポップといったところで、さらに昨今の80年代リバイバル的な流れにのったサウンドだ。Soccer MommyやPale Wavesに近い系統を感じる。The 1975好きにもオススメできるアーティストだろう。アップテンポな曲が多く、更に印象に残りやすい。良い意味でプレイリスト映えする曲が多いなと思う。

27位 Magdalena Bay - Mercurial World (10/8)

LA発の男女エレクトロポップデュオ。Tiktokやってないから知らないけど、Tiktokでかなり人気らしい。調べてみたらかなりフォロワーがいた。Magdalena Bayという名前は実際にメキシコにある湾からではなく、メンバーの男の方の前職IT系の仕事で時々メールを送ってくる管理者の名前をもじったらしい。彼らの作品は、基本ダンス・エレクトロポップでそれにGrimesの「Art Angels」のアートポップ、Charli XCXを筆頭としたハイパーポップの影響を受けており、いわゆる2020年代最新のエレクトロポップという印象だ。個人的には「The End」という曲名のイントロ、「The Beginning」という曲名のアウトロ的役割を担う曲がどっちも最高で始まり方も良ければ締め方も爽快で気持ちいい。作詞作曲からプロデュースまで自分たちでやっているからすごい。そういう意味でBillie EilishとFinneasスタイルに似てる。

26位 Murrumur - Magic for Beginners (5/28)

プロフィール調べてたけど全然出てこなかった。おそらく女性。Magdalena Bayと比べたらこの作品は裏路地、アングラ感ある作品で、ジャンルで言ったらいわゆるブレイクコア。しかしながらポップセンスが妙にあり、Charli XCXとか最新のエレクトロポップが好きならひっかかるところはあると思う。ドラムンベースやハイパーポップが中心であるが、「Hitting the Spiral」はデスメタルをベースにした曲がめちゃくちゃカッコいい。聴いていてアングラの音楽だな~と思うのだが妙に聴き心地さがある不思議な作品である。

25位 Tyler, The Creator - CALL ME IF YOU GET LOST (6/25)

Odd Futureの創設者でも有名なUSラッパー。個人的な観測下においては今年の上半期はヒップホップがやや不作だなと思ったけど、Tyler, the Creatorの今作をきっかけにどんどんヒップホップの話題作が出てきたな~と思ってた。正直彼の過去作品「Flower Boy」や「IGOR」等が絶賛の割にはそこまでハマらなかったのだが、今作は結構グッときた。今年ヒップホップを中心に聴いていた時期があったのだが、どうやら自分はギャングスタヒップホップとかアブストラクトヒップホップとか全然ピンとこない。それに比べて今作みたいなジャジーな感じとか、センチメンタルな方にアプローチしてたりする方が好きかな。今作で言えば「WUSHYANAME」とか。この曲のビートも良いし、あとは「RISE!」のビートとかも好き。今作は個人的にフロウやビートも自分の耳にピタッと合う曲が多くて良い作品に思えることができたな。

24位 Lana Del Rey - Blue Banisters (10/22)

ニューヨーク生まれのシンガー。大学生のころから音楽活動をはじめて、NirvanaのKurt Cobainから強く影響を受けたらしい。今作から2作ぶりにJack Antnoffのプロデュースから離れ、数名のプロデューサーを雇っている。曲順から2~4曲ごとにAからBと違うプロデューサーの曲を並べていて、意図的にそうしているのかな~と思う。今作はどことなくLana Del Reyの4番目のアルバム「Honeymoon」っぽさもあり地味で渋い作品だな~って感じで、分かりやすい特徴が無いものの聴いてれば彼女独自の世界を楽しめる良い作品だなと思う。「Arcadia」とか如何にもLana Del Reyらしき曲だし、Lana Del Reyが「とにかく叫んだ」とコメントした、Miles Kaneとのコラボの「Dealer」とか個々で見れば十分魅力的な曲も多い。Miles Kaneとコラボしてるが、The Last Shadow Puppetsの相棒、Alex Turnerともアルバムを作ったとかそういう話があったらしいが、それもすごく気になる。

23位 Arlo Parks - Collapsed in Sunbeams (1/29)

イングランド出身の2000年生まれのシンガー。デビュー前からかなり注目されており、BBCのSound of 2020にノミネートされており、今作においてもBRIT Awardsで3部門ノミネートで1部門勝ち取り、Mercury PrizeでAlbum of the Yearを獲得、そしてGrammy Awardsでも2部門ノミネート。今年最も注目されている新人といっても過言ではない。ちなみにJoni MitchellのThe Hissing of Summer Lawnsが大好きらしい。アルバムの内容はインディーポップ、ネオソウルといったところで、そこにフォークっぽさも加わり、まだ20歳そこらの人の作品としてかなり地に足のついた落ち着きや風格が見られる。リラックスした雰囲気で印象に残る曲も多く、この作品全体のピュアな空気が好き。夏にはチルできて、冬には心地よい気分になる作品。

22位 Ninja Sex Party - Level Up (10/22)

USコメディロックバンドによる過去作品のリテイクもの。ここ毎年何らかの作品を出していて、仲間のTWRPも毎年何かリリースしていて、音楽活動が楽しくてしょうがなさそう。個人的にこのバンドはメインストリームでは誰もやりたがらない80年代のダサい音楽をバカテクでキャッチーにプレイしているのが好き。今作においてもポップの息がかかったハードロックが中心でまあダサさが際立ってるんだけど同時にカッコよさもあるわけで、「Attitude City」におけるBon Joviみたいにトーキングモジュレーターを使ったハードロック、「Unicorn Wizard」のB'zみたいなギターリフもカッコよいし、また「Party of Three」はポップファンクで踊れる。「6969」においてはプログレッシブポップロックといったところで、かなりレベル高いことやってるなと思う。TWRPも同様この人たちは日本でマニアにウケる要素あると思うので早く売れてほしい。もしかしたら名前にSexってあるのが駄目かもしれないが。

21位 Big Red Machine - How Long Do You Think It’s Gonna Last?

Big Red MachineはThe NationalのAaron DessnerとBon IverのJustin Vernonを中心のプロジェクト。バンドというよりむしろコミュニティであり今作においても30人以上クレジットされている。今作には、Anais Mitchell、Fleet Foxes、Sharon Van Etten等豪華なゲストが並び、他人のアルバムにはあまり出てこないTaylor Swiftの参加も話題を呼んだ。こんだけゲストが多彩だとアルバムの精細が欠けると過去に学んだが、この作品はアメリカのトラディショナルな雰囲気があり、かつ実験的な試みもした良いフォークロック。Taylor Swiftが歌った「Renegade」は、サビでやや早口に歌うところはTaylorの曲でよくある展開なので、ほんとに共作されて作ったんだなって感銘を受ける。アメリカのフォークロックを基盤とした作品は、一辺倒になりがちだが、今作においては実験的でちょっとポップな仕上がりにしてるのが良いエッジになっているなと思う。

20-11位

20位 Roosevelt - POLYDANS (2/26)

Rooseveltはドイツのシンガー、Marius Lauberによるソロプロジェクトで、今作が3作目の作品にあたる。去年のThe Weekndによる「After Hours」のエレクトロポップが大ヒットした記憶が新しいこともあり、2月にリリースされた80年代風のダンスポップ、ディスコ路線のこの作品はThe Weekndの作品を思わせることもあった。作詞作曲セルフプロデュース、ほぼすべての楽器をこなし、また元ドラマーが関するか分からないが、グルーヴもタイトでかなりしっかりしている。ファンクな「Easy Way Out」、Pet Shop Boysっぽい「Lovers」、コンピューターの音だけを使って作った幻想的な雰囲気の「Sign」等、キャッチーでトロピカルでどこか寂しげ。過去のエレクトロミュージックに対するリスペクトも感じる完成度の高い作品。

19位 Cautious Clay - Deadpan Love (6/25)

アメリカのシンガーCautious Clayこと現在28歳のJoshua Karpehのデビューアルバム。音楽家になる前は、大学を卒業してニューヨークで不動産のエージェントとして働いたそうだ。アルバムを出す前からJohn Mayerとの共作がドラマに起用されたり、また「Cold War」という曲はTaylor Swiftの「London Boy」という楽曲でサンプリングされたり、何かと話題になっていた。またフルートやサックスやドラマーなどマルチに楽器演奏できるし、John Legendのアルバムでライター、プロデューサーとして活躍もし、裏方でも優秀そうな人だ。そんな彼の今作は、今年聴いた作品の中で随筆のメロディセンスを感じるものだ。一曲目の「High Risk Travel」からスウィートなメロディで心地よく、「Strange Love」「Dying in Subtly」のフックのある楽曲や、Frank Oceanのように切なげで神秘的なファルセットが素晴らしいバラードの「Wildfire」等、インディーR&Bの音楽でKarpehの綺麗な歌声がめちゃくちゃチルで心地よい。サマソニのソニックステージあたりで見たいアーティストだ。マリンではなく。暑い日の日陰の役割みたいなアルバムだ。

18位 Lana Del Rey - Chemtrails Over the Country Club (3/19)

Lana Del Reyによる今年1作目の作品。先に紹介した「Blue Banisters」よりこっちの方が好き。ほぼJack Antonoffと二人で作曲、プロデュースを完成させている。Jack Antonoffは個人的にボーカリストの「声」の魅力を前面に出すのが上手いタイプだと思うので、今作においてもLana Del Reyの神秘的な美声が堪能できる作品。今作に関して完全にこれ。Lana Del Reyの歌声をうまくオーガニックに料理している。Lana Del Reyの低い声、ファルセット、幻想的な歌い方など、美しく声がダブリングされていてウットリする「Chemtrails Over the Country Club」や「Dark But Just A Game」「Not All Who Wander Are Lost」等がお気に入り。そして最終曲、Joni Mitchellの名曲「For Free」をZella DayとWeyes Bloodでカバーした曲が最高。Weyes Bloodの歌い方がJoni Mitchellを彷彿させるのがこれまた素晴らしい。

17位 Amyl & The Sniffers - Comfort to Me (9/10)

オーストラリア、メルボルン結成のロックバンド。このバンド、本作リリース前から注目されており、ARIA Music Awardsや他の幾つかのアワードにもノミネートされた過去がある。彼らの音楽はカッコいいガレージロック、パンクロック。紅一点の女性ボーカルもロックサウンドと相性の良いハスキーな歌声でこっちもカッコいい。バンドの影響下にMinor ThreatやAC/DC、そしてCardi Bからも影響されていると公言しているそうだ。確かに2分もしない「Freaks to the Front」や「Don’t Need a Cunt (Like You to Love Me)」はMinor Threatみたいなハードコアパンクみがある。アルバム全体に特徴的なギターリフが目立つのもAC/DCからだろう。Cardi Bは良く分からないが。個人的に「Hertz」や「Don’t Fence Me In」はガレージロックしていたArctic Monkeysの2ndを彷彿させてカッコいい。スピード感あるロックを魅せながら頭に残るしっかりとしたメロディを作られているのが今作の魅力だろう。

16位 Current Joys - Voyager (5/14)

Current Joysはネバダ州生まれのNicholas Foster Rattiganによるソロプロジェクト。2013年から今作までEPも含めて9作品リリースされている。ギターを独学で学んで8歳のころからドラムを習っていたそうだ。今作はインディーポップに属しているが、Arcade Fireや今年のポップなThe War on Drugsに近いものを感じる。ボーカルの歌い方はどこか自信が無さげでフラジャイルな感じだがそれがかえって、繊細な印象を与える。音楽はギターやシンセ等様々な音が美しく広がっていく感じで、ロマンティックな印象。「Breaking the Waves」や「Money Making Machine」等ギターが前面に出たアップテンポな曲は、彼の独特の魅力が出てると思うし、「Amateur」や「Voyager Pt 1」はセンチメンタルかつとても美しい。彼の音楽を聴くのがこれで初めてだが、今作は16曲53分、過去のアルバムではここまで大作なものではなかったようだが、きっと今作では色々な思いが詰まったNicholas Rattiganにとっても重要な一枚なのだろう。

15位 Kojaque - Town’s Dead (6/25)

ラッパーKojaqueことKevin Smithはアイルランドのダブリン生まれ。SlowthaiやLana Del Layのツアーのサポートも務めて、順調にキャリアを積んだ中でのデビューアルバム。リリース後の翌週、アイルランドで一週間で一番売れたレコードになったとか。今作は自身のベッドルームやツアーバスの中で19歳の時から製作してきた作品で、現在25歳らへんなので約6年も温めてきた曲もあるようだ。Slowthaiを思わせる破天荒でロックなノリであるトラックの「Town's Dead」や「Part II」もあって、魅力的でカッコいいが、どちらかというと「Wickid Tongues」「Sex N' Drugs」みたいな落ち着いて洗練されたジャズラップのほうがお洒落で良い。例えば他ラッパーによるトラップのラップの作品を聴いても、マジで最初から最後までトラップで単調でつまらないものもあるが、Kojaqueの今作は、アッパーなトラックからジャズ、トラップまで工夫が凝らされていて、かつ各曲フックがあってメロディが良く聴きやすい。自分みたいな「ヒップホップも聴くけどどちらかというとロックやポップのほうが聴くかな」みたいなタイプの人に楽しめる作品かなと思う。

14位 Nanoray - NURSE 2 (6/20)

ネブラスカ、オマハしか分からない身元不明気味のアーティストによる今年2枚目のアルバム。一曲目の「Crossing」はなんてことないが、2曲目の「Zombie」からNanorayの魅力である中毒性の高いEDMサウンドが爆発する。聴いたら思わず身体が動いてしまう、もはや合法的電子ドラッグと呼んでも良いような曲がいくつも並ぶ。そして日本のアニメかゲームか分からないがキャラクターの台詞をサンプリングしてドロップに展開する「dotGOV」など時折日本のアニメ文化を作中に織り交ぜたりするのもNanorayの特徴だ。今年聴いてきたアルバムや曲の中では全く珍しいタイプの音楽で新鮮味があった。

13位 McKinley Dixon - For My Mama and Anyone Who Look Like Her (5/7)

アメリカはヴァージニア州のリッチモンドを拠点に活動するMcKinley Dixonによるレーベルに属して初のアルバム。彼の音楽性はいわゆるジャズラップで、初っ端の「Chain Sooo Heavy」からジャジーなトラックにのっかり、お洒落にフロウをかましている。これがかなりカッコいい。次の「Never Will Know」も何人かゲストを呼んで、それぞれのフロウを魅せているがこれもめちゃくちゃカッコいい。この二つの曲は比較的テンポの速い曲であるが、「Bless the Child」や「Twist My Hair」のようなスローな曲も程よい音楽の「黒さ」があって良質な作品だと感じる。ファンクなノリの「brown shoulders」もノレるし、生演奏から魅せるグルーヴに魅力的なフロウなどレーベル初のデビューアルバムとしてはかなりレベルの高い作品だなと思った。

12位 black midi - Cavalcade (5/26)

日本とも親交がある英国のバンドによる2ndアルバム。元々black midiというのも日本のインターネット深部で生まれた「Black MIDI」という音楽のジャンルから取ったようだ。ここ2~3年、UKから魅力的なポストパンクバンドが生まれているがその代表的なバンドの一つである。今作を最初聴いた時、「ふ~ん、いいじゃん」ぐらいにしか思ってなかった。だが2回目を聴いた時この作品の世界観にとても惹かれた。まず一曲目の終始混沌としたロックグルーヴにバイオリンが良いスパイスになった「John L」、そしてこの混沌な曲から急に上品に振舞ったポップ、「Marlene Dietrich」の急変ぶりは面白い。「Chondromalacia Patella」や「Slow」のプログレロック的な展開など、予想できない展開っぷりの音楽が続くがどこか聴き心地が良く、モンスターバンドらしい自信が音楽の中でも伺えるダイナミクスさが、今後このバンドに期待できる勢いも感じることもできた。つまり1stの成功に溺れるバンドも多いが、2ndとなる今作でも全然見劣らないしむしろもっと良いものを作ってくれそうな可能性を感じる作品のように思えたのだ。

11位 James Blake - Friends That Break Your Heart (10/8)

ロンドン生まれのシンガーによる5thアルバム。批評メディアも大絶賛された傑作が過ぎるデビューアルバム「James Blake」ではあるが、前作の4thアルバム「Assume Form」から「あ、この人メディアに媚びる気無いな」と薄々感じていたが、今作でそれが更に確固たるものになった。そういう意味でJames Blakeというアーティストは批評目線のあるリスナーから叩かれやすいスタンスになったな~と思うものの、個人的にこの作品はかなり好みである。いかにもJames Blake節なミニマムなビートでゲストを呼んでラップが乗っかる「Frozen (feat. JID & SwaVay)」をはじめ、"I'm So Blessed You're Mine」と繰り返すのがクセになる「I'm So Blessed You're Mine」等、彼のテクニカルな部分が見える曲も良いが、今作はJames Blake本人の歌声も冴えわたり、Monica Martinとのデュエットもなんなくこなしたソウルフルで優しい雰囲気の「Show Me」や後半、キャリア屈指の歌声が響き渡る「Say What You Will」、聴いてたら天に召されそうになるエコーがかかった歌声で魅せる「Lost Angel Nights」等、今作のJames Blakeはデビューアルバムで見られなかったボーカルの進化が伺える名作になった。

10-1位

10位 Nanoray - ZAPPER (2/8)

14位でも紹介した身元不明気味のアーティストによる今年一作目の作品。まずアートワークが個人的に今年随筆のお気に入り。先に紹介したものよりも、もっとハードでアッパーな曲で攻めてて、「m00d Medley」や「SALMON CANNON」等、萌え声などのヴォーカルサンプルをゴリゴリなドラムンベースに混ぜたり、遊び心もしっかり入れながら、ちゃんと一つのコンテンツとして成り立っていて聴いていて楽しい。一方アニメ文化の変化球を取り入れていない「Tempest」や「Aleph-Null」もシリアスで緊張感のあるカッコいい曲もある。最初から最後まで無駄のないアルバムで今年聴いてきた作品の中でも特段お気に入りの一枚である。

9位 The Weather Station - Ignorance (2/5)

The Weather Stationは女優でもありミュージシャンでもあるTamara Lindeman率いるフォークバンド。今作は5作目であり、世間的にも今年を代表する作品の一枚と見なされている。個人的にはフォークロックにストリングスを織り交ぜ、クラシカルで気品のある雰囲気がお気に入りだ。例えば「Tried to Tell You」は歯切れの良いドラムのリズムが続くがサビではそこにバイオリンが加わり、Joni Mitchellを思わせるTamara Lindemanの歌い方により、上品かつドラマチックでカッコいい曲になっている。「Parking Lot」も生楽器の鳴らし方がほんと爽快で気持ちいいし、やはりストリングスを主体に段々盛り上がる展開は凄く良い。このアルバムはそれぞれの生楽器の音を非常に良い形で構成しているのが良いと思う。上記の曲は比較的にアップテンポな曲であるが、「Trust」のようなしっとりと重めなジャジーな曲も同様にオーガニックな音で楽しめられる。なんだかJoni Mitchellの70年代の名盤「Court and Spark」を彷彿させる美しい作品だ。

8位 NIGHT TRAVELER - Dreams You Don’t Forget (4/23)

アメリカはテキサス州のオースティンという都市で結成された2人組のバンドで、個人的に今年のバンドで最も良かった発見だなと思う。彼らの音楽は80年代の影響を受けたオルタナティブロック。Phil Collinsのような大人の色気もあるポップさもあり、Bruce Springsteenのようなダイナミクスさ兼ねそなえていてる音楽であり、そこに中性的なヴォーカルの歌唱によって、現代でもフィットした音楽になったと思う。「夜の旅人」という意味のバンドにあるように、今作も夜に聴くのにぴったりな優しさのある作品。全体的にロマンティックな余韻に浸れる雰囲気があるが、案外ギターが前面に出た曲が多く、(「Watching You」「Surefire」等)、さりげない、内なる熱さも魅力的で、聴いていて単調で眠くなるみたいなことは全くない。13曲1時間弱と、この手のロックバンドの中では長い収録時間ではあるが、アルバムは完成度が高く無駄のない名盤だなと思う。

7位 Self Esteem - Priortise Pleasure (10/22)

Self Esteem(自尊心)というステージネームを掲げる英国出身のRebecca Lucy Taylorによるソロプロジェクト。この人は元はSlow Clubというフォークロックデュオに属しており、その時代の曲と今作を比べると「どーしてこうなった」レベルで全く違う。個人的な話、去年のKylie Minogueや、数年前のChristine and the QueensやRobyn等、年一で出るDivaによる個性的なダンスポップでないかな~と思ってた時に今作が出たので今年のDivaポップ枠が埋まったなと安心している。しかし、Self Esteemによる今作は上記のアーティストよりかなり実験的で万人にウケないとは思うが私にはかなりハマった。音の感触は結構ざらついたエレクトロポップでその辺が人を選ぶ要素だなと思うが、そこに初期Florence and the Machineのような重厚なセルフコーラスを重ねているのが今作の特徴でそれがめちゃくちゃ最高。「Fucking Wizardry」や「Prioritise Pleasure」で分かるだろう。「I Do This All The Time」のしっとりとした曲も元はフォークをやっていたのも頷けるしたたかさもあり、そこに分厚いコーラスを入れて非常に個性的。「How Can I Help You?」のロックテイストの曲、「You Forever」のディスコっぽさもあり、近未来っぽいテイストも加わった曲など、バラエティ豊か。ハマる人にはめちゃくちゃハマる作品だと思う。

6位 Aly & Aj – a touch of the beat gets you up on your feet… (5/7)

アメリカのロサンジェルス生まれの姉妹デュオ。今作のフルタイトルは「A Touch of the Beat Gets You Up on Your Feet Gets You Out and Then Into the Sun」。長い。彼女らは2000年代から活動しており、その頃はその当時のイケイケのチャートポップって感じでそれは全然受け付けないが14年ぶりに出た今作は、路線変更したようで、インディーポップ仕様となった。それが滅茶苦茶良くてこのランキングの位置にいる。Kacey Musgravesの「Golden Hour」の素朴なポップに近いものを感じ、チャートにある聴いててしんどくなる毒々しさの抜けて良い意味で垢ぬけた作品という印象。「Slow Dancing」の後半のギターソロなんか今作のハイライトと呼んでも良いくらい浪漫の詰まった素晴らしい演奏だし、「Paradise」の段々と盛り上がり後半で出てくるシンセの音なんかはアメリカ特有の広大な空気が伝わる音使いで良い。今作はキャッチーなポップの裏に正解しかない演奏陣の生演奏の仕事っぷりが成功しているなと思うが、クレジットを見るとヴォーカル二人はヴォーカルワークに集中し、他の楽器は色んなミュージシャンが関わったようだけど、Aly & Ajだけでなく、この人たちも非常に良いパフォーマンスをした作品だなと感じた。そして今作は60年代や70年代の音楽にインスパイアを受けたらしい。確かにCarole Kingの「Tapestry」の孫的な感じもする。素朴で純粋な良いポップアルバムだ。余談だが、2000年代から活躍していたそうなので、もうとっくに30代後半かと思いきや、まだ30歳と32歳で全然若くて驚いた。

5位 Nick Cave & Warren Ellis -CARNAGE (2/25)

オーストラリア出身のNick Caveとthe Bad Seedsの彼のバンドメイトであるWarren Ellisによるサプライズリリースとなった作品。今作はコロナ期のロックダウンに作られた作品らしい。近年のNick Cave & The Bad Seeds名義で出している作品はアンビエントな要素があったが、今作においてはストリングスやコーラス隊の存在が目立ち、違う方向でのスピリチュアルな一面が見える。どっちにしろ聴いてたら天に召されそうな尊さがある。特に「White Elephant」の中盤以降の大合唱は本作一番の盛り上がりで聴いたものに感動を押し寄せる崇高さがあり最高。その次の「Albuquerque」なんか序盤のピアノの一音一音が美しく、後半のストリングスの美しい旋律の中、Nick Caveの歌い上げとその背後でしっとりと歌うコーラス隊のハーモニーもめっっっっちゃ良い。Nick Caveの作品はとても良いが難解さもあるのが拭えないが今作はチャンバーポップな要素もあり割かし聴きやすい作品だと思う。

4位 Bo Burnham - Inside (The Songs) (6/10)

Bo Burnhamはアメリカのシンガーでもありコメディアンでもある。今作はNetflixの映像作品「ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり」のサウンドトラックにあたる作品となるが、観よう観ようと思ってもまだ観てなく、映像の方を知らなくてもこの作品を楽しめる。それで今作はコメディ要素を交えたシンセポップといったところで、やはり映像作品がもとになっているのか、このアルバムにおいても締めくくりもハッキリしていてスッキリ終えられるのがまず良い。「FaceTime with my Mom(Tonight)」ではまるでThe 1975の楽曲のようなお洒落な雰囲気のポップ。AmazonのCEOのジェフリーベゾスについて歌った「Bezos I」「Bezos II」、自分が30歳になって自虐的に嘆く「30」等、コメディアンらしきユニークなテーマを、明るく歯切れのよいシンセポップで聴かせている。どんどんと早口で歌い上げる「Welcome to the Internet」という曲もオススメ。一方Bo Burnhamが「現代の現実」に関して変だなと思うところをフォーク調で歌った「That Funny Feeling」という曲もある。これは後にPhoebie Bridegersがカバーした。そして今作の最も良い曲と呼んでいい「All Eyes on Me」はBon Iverのように声を加工して歌い上げている。かつては大勢の前で笑わせていた彼だが、5年前にステージでパニック障害が起こり舞台に上がるのをやめ、彼のこの症状、そして、コロナ禍で集団でいる事を禁じられた現実を表したかのような「笑い声のエフェクト」を入れていて中々メッセージ性がエグい。今作はそんな彼の復帰作であると同時に、コロナ禍で苦しんでいる我々にとって、笑えるコメディで彼の優しさに寄り添うこともできるコロナ禍の環境だからこそ生まれた傑作だ。

3位 shame - Drunk Tank Pink (1/15)

英国のポストパンクバンドによる2ndアルバム。今年の1月に出たのだが、当時聴いた時はこんな傑作が1月早々出ていいのかと思った。全体的にヘヴィで自信に溢れていて挑発的なサウンド、ロックで一曲聴きながら次の曲も早く聴きたいと思うのはなんだか久しぶりだなと感じた。一曲目の「Alphabet」はつかみとして完璧で、アップテンポな勢いの中の、荒っぽいけどダンサブルなベースリフがほんと最高。その次の「Nigel Hitter」のブリットポップっぽいキャッチーな曲、「Born in Luton」のギターリフも素晴らしいし、サビでゆっくりになる展開も良い。挑発的な曲も良いが、後半の「Human, for a Minute」の遅めの曲も重たいグルーヴにコーラスを重ねた曲は心地よい。ボーカルは基本的に大物バンドThe FallのMark E Smithのように乱暴に吐き出すスタイルが挑発的なサウンドを助長させて更にカッコよさを際立たせているのが良いね。プロデュースはArctic MonkeysでおなじみJames Ford。UKロックが好きなら絶対チェックすべきマスト。

2位 Cassandra Jenkins - An Overview on Phenomenal Nature (2/19)

NYのシンガーソングライターによる2ndアルバム。Purple MountainsのDavid Bermanの自死の悲しみを乗り越えるために作られたという。幽玄的なアンビエントフォークで、今年の中で最も美しい作品の一つ。空間を広く使っていて囁きながら歌うCassandra Jenkinsのバックにバンドサウンド、そしてストリングスが綺麗になる「Michelangelo」、「New Bikini」はピアノの繊細な音、ホーンの音が切なく鳴り響く。「Hard Drive」ではJenkinsはスポークンワードで語り、トラックはアンビエントでジャジーな演奏が最高に気持ちいい。で、サビでは囁いて歌うんだけど、この展開こそ極上のフォークを聴いてる感じしてこれまた心地よい。今作のアンビエントな雰囲気にホーンやストリングスやシンセそれぞれが邪魔することなく鳴り響く感じ、個人的にDestroyerの傑作「Kaputt」に似てるところがあるなと思う。7曲約30分、至高のアンビエントフォークを締めくくる最後の曲「The Ramble」は歌無しの美しいアンビエント。鳥の鳴き声が所々で聴こえるが、Cassandra Jenkinsはバードウォッチングが自身の恐れや心配事を取り除く方法だとか。バンドメイトの死を乗り越えるために作られた今作はバードウォッチングという自身の精神的デトックスを共有することで締めくくっている。そういう意味では「乗り越える」という目的を成功したのかなと思う。そしてリスナーにも極上の癒しと音楽の旅へ連れていく傑作となった。

1位 Rudimental - Ground Control (9/3)

英国の4人組人気バンドによる4thアルバム。最初聴いた時は「これめちゃくちゃ最高じゃん!」と思ったが、割と世間やメディアの評価はしょっぱくて「あれ?」って思ったけど、兎に角自分にはこれが一つの理想のポップで素晴らしいと思った。今作は実は多くの曲が2018年に作られたものだが、いつも世界中をツアーしてる4人がコロナのロックダウンをきっかけに家に居ることを強いられた事で世に出された作品。その為だろうか、前作は当時流行の一つだったラテンポップを取り入れていたが今作は自身のルーツを見直した作品となった。全16曲、8曲ずつ分けてA面B面という仕分けになっていて、ボーカル、ラップパートも様々なゲストを呼んでいる。まあ全曲素晴らしいよね。A面でシングル化された「Come Over」や「Be the One」はUKベースでお洒落な曲調でここ近年はこういうお洒落なポップが聴きたかったので理想の曲。「Straight from the Heart」はトランペットの音が気持ちよくソウルフルなボーカルがカッコいい。ボーカルを務めるNørskovはオーディション番組The Voiceから出てきた人で、Rudimentalの実は器用なところである有能な新人発掘もこの作品で見られる。BLM運動時に作られた「Remember Their Names」はドラムンベースな曲調にプロデューサーの一人のMJ Coleがピアノの音を加えることによりシリアスさがより顕著になり、メッセージ性の高い曲となった。「Jumper」においては、中性的な男性の声を出せる、女性の性を持つKareen Lomaxの魅力的なボーカルが良い。「Handle My Own」はディスコチックな曲でヴォーカルのノリが良く、ドロップも踊れるダンスチューン。B面においてはよりソウルでダークなテクスチャーを加えたものを目指したそうだ。「Distance」は彼らの2ndにも収録されてそうなシリアステイストなドラムンベースポップに、UKドリルのラップを繰り出され、過去作から更に深化した曲となった。UKドリルがより強く出た「Instajets」は今までのRudimentalには無いクセの強いグルーヴで中毒性のあるラップソング。「C'est Fini」も新路線な曲で中盤に出てくるBusta Rhymesみたいなゴリゴリの声色のラップとそのリズム感も中毒性が高い。「Hostess」はダークなドラムンベースでカッコよく、確かにB面はダークで実験的試みがあるなと分かる。アルバムの最後を締めくくる「Keep Your Hear Up」はHouse Gospel Choirというハウストラックにゴスペルコーラスを歌い上げるグループを起用し、アフロハウスなトラックにソウルフルなボーカル、そしてバックにゴスペルコーラスとゴージャスな曲となっている。そしてこの曲はコロナで辛い日々を送っている我々にポジティブさを持ち込みたいというRudimentalらしいメッセージもこもっている。16曲全部大好きな曲で自分の一つの理想のポップが今作で鳴らされており、最初聴いた時に感動しているし、今年で一番好きな作品と確信している。

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