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Aaron Beckerの絵だけの絵本

子供が幼かった頃は絵本を一緒に楽しんだ。頂いたり買ったり、図書館から借りてきたりした多くの絵本の中には今でも忘れられないものが多くある。

「文字がない」ことで有名な、1974年生まれの絵本作家、アーロン・ベッカーさんの本もそのひとつ。絵だけなので翻訳の必要もなく世界中の子どもが楽しめる。ページいっぱいに広がるベッカーさんの絵には、子供だけじゃなく大人も夢中になってしまう。

有名なのは「Journey」「Quest」「Return」の三部作。誰からも相手をしてもらえない孤独な少女が寝室の壁にドアを描き、壮大で不思議な旅に出る。

↑のように、日本で売られているものにはそれぞれ「女の子とまほうのマーカー」「にじいろの地図のなぞ」「洞くつ壁画のまほう」と副題が書かれていますが、アメリカで売られている元々の本には書かれていません。個人的には副題は無くても良かったと思う。文字が無いのがこの絵本の良さだしね。メインの題名だけ見て、知識ゼロの状態で、いったいどんな絵本?と想像力が沸き立てられる…というのも楽しいから。

この三部作以外の本もおすすめ。

「the Tree and the River」では手付かずの川のほとりで人間は村を作り、それが街になり、段々と元の自然の見る影がなくなってゆく過程を見せられる。

the Tree and the River

「A Stone for Sasha」は飼い犬サシャが死んでしまったあと少女が家族旅行に行くところから始まる壮大な絵本だ。少女が見上げる広い空が私たち読者に地球の歴史や人類の歴史を見せてくれる。走馬灯のように駆け巡る現代までの道のりにはまるでDNAに刻まれている記憶が呼び出されているような不思議な感覚を覚える。

A Stone for Sascha

どの絵本にも共通して言えるのは、少し考えさせられる作品だということ。Journeyシリーズでは忙しさを言い訳に子どもとの時間を十分に取れていないのではと気付かせられ、「the Tree and the River」では文明の発展と木々や川などの自然の力関係について考えさせられる。「A Stone for Sasha」には今自分が存在するのは果てしない歴史があった上でのことと思い出させられる。生も死も長い歴史の中の過程。絵本からそんなふうに思わされるなんて、アーロンベッカーさんの絵本はやっぱり子ども用のみならず大人用の絵本でもあると思った。

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