見出し画像

家族会はどんなところでしょう

―その成りたちと現在の活動

◆精神障がい者家族会とは


 一口に「家族会」といっても、さまざまな家族会があります。認知症の高齢者の家族会やアルコール等依存症の家族会など疾病や障がい別の家族会もあります。精神障がい者の家族会は、身内に支援が必要な精神障がい者がいる家族の会です。家族会ではお互いを励ましあい、それぞれの目的をもって行政に要望をするなど、社会的な活動をしています。


◆精神障がい者家族会の成りたち


 抗精神病薬が開発される以前の精神医療は、町から遠く離れた療養所、病院に隔離収容され、生涯をそこで過ごすことが一般的でした。昭和30年代(1950年代)に入って初めてクロルプロマジンという抗精神病薬が開発され、以来飛躍的に精神症状が改善されるようになり、退院することができるようになりました。

さてそうなって退院した本人を迎える家族には知識もなく、対応の仕方もわからず困りはて、やがては再入院ということも少なくありませんでした。


◆病院から始まった家族会


 再入院や家族の苦労をどうするか、家族の役割とは、など問題がたくさんありました。ま

ずは病気を知ることから始めようということで、精神科病院や病棟ごとに家族の勉強会が始められました。病院の医師が中心になって病気の理解や対応のあり方を学ぶ機会が作られました。集まった家族はお互いの苦労談を話し合いました。こうしてできたのが「病院家族会」です。病院家族会は現在、全国に約200 あります。


◆悩みをわかちあう地域家族会

 一方、地域では、保健所に家族の悩み相談が持ち込まれ、多くの家族が困っていることがわかり、保健所で家族の集まりを開くようになりました。

そうして地域の保健所で定期的に家族が集まり、悩みを話したり知恵や工夫を出し合ったり、学習会を開いたりするようになりました。

これが「地域家族会」で、現在、全国に1200 余あります。各地の「病院家族会」や「地域家族会」を単位家族会(単会)と呼んでいます。各都道府県ごとに単位家族会がまとまって、都道府県連合会や市連などの連合会を形成しています。


◆全国組織の結成と活動

 昭和39 年(1964年)にライシャワー大使事件が起こりました。時のアメリカ大使が精神の病気の青年に傷つけられた事件です。

この事件をきっかけに、精神障がい者に対する法的な規制を厳しくしようという動きが出てきました。こうした動きに精神医療保健関係者が反対運動を起こしました。

家族会も反対したのですが、小さな家族会単位で主張しても声が届かない、全国の家族が一緒になって運動をしようということになって、全国精神障害者家族会連合会が結成されました。

この組織は、平成19 年(2007年)に解散となりましたが、その後、新しい全国組織、全国精神保健福祉会連合会が結成され、現在46都道府県の家族会連合会が加入しています。
 都道府県連合会や単位家族会などが、その地域の問題について要望や陳情をするのに対し、全国組織は地域の要望を考慮しながら、国全体の精神保健福祉の向上や、家族・当事者の生活問題、法律問題など全体的な課題に対して活動をします。月刊誌を発行したり、啓発活動もおこないます。また年に1回、全国の家族が集う大会を開催しています。


◆家族会の活動・相互支援


 よく「家族会の三本柱」と言われます。第一の柱は「癒しあい、助けあい」という相互支援の機能です。家族が精神の病気になったとき、多くの家族は人間関係から孤立し、情報もなく、支援もない状態で途方にくれます。他に同じ思いをしている家族の存在さえ知りません。

家族会でほかの家族と出会い、思う存分話せたとき、一人でなかった、気兼ねなく話せる場があったと心から感じることができます。また家族会は、お互いの経験から得た創意工夫の情報を交換する場でもあります。


◆家族会の活動・学習

 「知らない」ということは大変不安なことです。しかし多くの精神障がい者の家族は、初めは病気のことについて知識がありません。本人への対応も手探りの状態です。

家族会では講師を招いたり、月刊誌をテキストにしたりして活発に学習会をおこなっています。そうすることで病気について知識を深め、安心して対応することができるようになります。また福祉制度や法律についても学びます。

そのことが障害年金の受給や自立支援医療の利用につながっています。家族会で制度について知識を得、みんなが利用していることが、制度利用へのハードルを低くします。


◆家族会の活動・社会的運動


 家族会で励まされ、情報を得、さまざまなことについて学ぶことは、やはり自分の住まう地域を変えていかなければという思いにつながっていきます。地域に精神障がい者の社会資源が豊富にできていくこと、人々の理解が深まり、市民や行政が協力的であってほしいと願います。地域の家族会では、市区町村に対して医療費の助成など、いろいろな要望活動をしています。また市民祭などの催しに出店するなど行事に参加して、地域とのつながりを深めるようにしています。こうしたことが精神障がい者の理解や受け入れに役立っています。

 家族会はこうした相互支援、学習、運動の三本柱のほかに、新年会や旅行などのレクリエーションもおこなっており、楽しむことも重要な要素となっています。


◆家族会の課題・これから


 現在、家族会は、若い会員の入会が少ない、会員の高齢化、役員のなり手がないなどの悩みを抱えています。

 精神の病気になる人は減らず、その家族も増えているのですから、その人たちが孤立して家族会に結びつかないのは残念なことです。家族会ではパンフレットを配布する、家族相談をおこなうなど工夫をしています。家族に必要な家族会、若い家族に魅力のある家族会になるために知恵を出しあうことが必要です。(良田かおり)


(出典)精神障がい者と家族に役立つ社会資源ハンドブック改定版 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(この記事は、みんなねっとに帰属しますので、無断での転載・掲載はお控えください。必要な際は事務局にご相談ください。)

サロンログイン



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?