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愛とか

「なあ、◯◯」

「何?(キタコレ!)」

「告白ってさ……」

…………

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今でも考えてしまう。

もしもあの時、勇気があったらと。

…………

…………

今から20年ほど前。

当時、ゲイの友達の作り方もわからず、二丁目に行くという考えもなく、ゲイ雑誌の後ろに載っている広告の有料暗闇系に行き、そこでs◯◯したあと気が合えばメアドを交換して、友達を何人か作ったりしていた。(どんな作り方だよ)

そこで知り合った一人にYがいた。

彼はたしか私より15〜6歳くらい上、当時知り合った中で最年長。初めて40歳前後の人と知り合ったけれど、何か惹かれるものがあった。向こうも私の事をまんざらでもないようだったし(笑)。きっと、お互いがお互いをイケる雰囲気を醸し出していたのかもしれない。

他の人と違い、彼とはいわゆる友達ルートにならず、最初から恋人ルートのレールに乗って二人の関係は動き出した。

彼とはデートを重ね「もしかしたらこのままいけば彼と付き合うのかもなー」とぼんやり思ったりもした。なんなら早く告白してくれればいいのに! とか(笑)。

季節は春、桜を見に錦糸町にある錦糸公園に誘われたので「知り合って3か月、これはいよいよ桜の木の下で告白されるパターンか?!」と妄想を抱きつつ、迎えた当日。桜を見ながら公園内を歩いていたら案の定、彼が

「なあ、◯◯」

「何?(キタコレ!)」

「告白ってさ年上がするって言うルールはないんだよ。年下からだって好きだったら告白していいんだよ」

「!!!」

思いもよらない彼の言葉。そしてその言葉を聞いた瞬間、何故だか恥ずかしくなった。告白を待っている私の心を見透かされた気がして。

「ん? うん……」

恥ずかしくもありなんて返事をしたらよいか分からなくもあり、曖昧な返事をしてしまった。彼のほうを向けずに……。


今でも考えてしまう。

もしもあの時、愛を伝える勇気があったらと。


好きなら年上年下関係なく告白すればいいじゃんて、今思えば当たり前な考えなんだけれど、恋愛経験も少なく夢見る夢子だった当時の私は、告白は年上からするものだという謎な恋愛観があったと思う。Yのほうが年上なんだから待っていれば告白してくれるはずと高を括っていた。私のそういう雰囲気を感じ取って彼はああ言う事を言ったのかな。もしも、私がフラットな恋愛観を持っていたら……。もしも、彼のほうを向いて好きですと愛を伝えていたら……。


その後、彼との恋は愛にならずに終わった。


#つれづれつづり #恋愛観

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