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平成元年

このシリーズ、寄稿するにあたっては平成に起こった出来事を、いいことも悪いことも思い出していかなきゃならないのだよね。
ややネタばらしになるけど、思い返せば面白いもので、平成の前半・後半でなんというか人生の浮き沈みみたいなのがキッチリ分かれてて、以降のストーリーはだいたいそんな内容になる。多分きっとおそらく。
平成前半はなかなかの地獄で、それらを思い出すことは俺的には自傷行為ではある。
なれどその地獄を乗り越えてきたからこその平成後半があると思っているので、もとい、思い込んでいるので、思い込まなければ乗り越えられなかったので、今なら冷静に振り返られる。
いや後半からは決してヘヴン状態などではなくて、どん底寸止めからニュートラル付近まで戻ってきたというか。
なんだかちゃんと書けるのか心配になってきたけど、そんな展開になると思う。

俺くらいの歳になると、いや歳関係なく資質の問題なんだけど、「平成元年って、俺何歳だっけ?」の確認からはじまるのだよね。
年齢バレになるとは思うんだけど、たしかこの年にこの歳で就職した。
バブル経済はとっくに終焉を迎えていて、世間で云われているような金銭的恩恵もなかったけど、就職はまだ辛うじて売り手市場の余韻が微かにあった。そんな時代。
かつてはいくつかの有名タイトルで名を馳せ、のちに某社に吸収され、現在はブランド名すら残らない、しかしおっさんゲーマーならだれでも知っているであろうところの某ゲームソフトメーカーを軽い気持ちでなんとなく受けて玉砕し、その後学校の就職指導課から有無を言わさず推され、あろうことか現在まで勤めている某製造業に、SE・プログラマとして入社した。
先のような就職状況であったことに加え、配属を希望する部署に(かなり昔の)卒業生がいたこともあって、

会社訪問:
総務の人「今日ここで内定出してもいいんだけどー、形式上一応面接だけするからー。」

面接:
社長面接と聞いていたけど常務・総務・先輩の3人面接。ホントに形式的な質問オンリー。10分程度で終了。

翌日学校に内定通知。

今思うと「なんだこれは」な流れなんだけど、そんなイージーな、就活と呼ぶのも憚られる就活があっさりミッションコンプリート。
楽に手に入れたものはクオリティー低いのが道理で、今となっては先行き不安しかないのだけど。

ソーシャルイベントはこれくらいにしとこう。充分長いわ。
この年、成人してもいたんだけど、この歳までゲイであることにまつわる活動は一切してこなかった。高校の時分になるとさすがにませたもので片思いなどもしてみたのだけど、それはまた別の話。ありがちで甘酸っぱい話。
理由として身上を書いてたらテーマに沿わなくなるのでこれもまた別の話だけど、前提として手短に書けば「ガキの頃から現在に至るまで連綿と続くコミュ障故の様々な臆病さ」だろうか。

で、実はこの頃もう既に地獄の第1章がはじまっていて、前の年にはじめた独り暮らしの部屋には居候がいた。
内地在住のゲイが運営するパソコン通信のホストを偶然見つけ入り浸っていたところ、同じ市内に住む他の会員を紹介され、メッセージをやり取りした後にオフラインで逢うことになり、いきなり拙い一夜を共にした。
歳はたしか俺の7つくらい上(曖昧な記憶)であるところのこの人が事実上「初めて相対するゲイ」なんだけど、「出会う臆病」が寛解したら「失う臆病」が発症して、タイプでもなんでもないどころか視界に入れたくない容姿であるにもかかわらず「また逢いたい」と泣きながら電話するほど、リレーションの維持に固執してしまった。この人でなくても全然いいはずなのに。
これが地獄のはじまり。

この何年か後に追い出すことになるまでの経緯は今回は端折る、というか次回予告的に一部あらすじとして綴る。
就職して1年目の何もかもが慌ただしい毎日が過ぎていく中、この人(以後、仮にKとする)は何度か逢う内に隣のアパートに引っ越してきた。にもかかわらず、至極当然の流れでこっちの部屋に入り浸って、数ヶ月後にはその部屋を引き払い同棲状態に。
この時点でやっと発覚するんだけど、いやそれまで聞かなかったのが良くないんだけど、Kはフリーターで、少なくとも隣に引っ越してきて以降は仕事をしていなかった。仕事もせずに俺の部屋で何をしているのかというと、一日中引きこもってパソコン通信に勤しんでおり、家事等は一つも行われなかった。結果、みるみるそれまでの彼の住居もそうだったであろう汚部屋化し、一日中内地のホストにも接続して電話代が市外料金だけで毎月¥4~5万ほどにもなろうが生活費は1円も支払われず、入社1年目の給与ではそんなものを養っていけるはずもなく財政が破滅寸止めに向かい、限界を迎えて追い出しにかかる頃には、追い出しを手伝う体の別人によって第2章がはじまっていたのだった。

そんな、下り坂のはじまりの年だった。

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