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ごめんね

よそで書いたこともあるので読んだことがある人いるかもしれない。
自分にとって平成初期の一番大きな出来事はこれだった。
ま、ありがちな話だんだけどさ。

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中学校の同級生だった仲が良かった女の子がいて、卒業後もいつも一緒につるんでた。高校、大学時代はお互いに付き合ってる相手がいたりしながらも「男女の友情」を維持し続けていた。そして二人ともフリーの状態で社会人に。
俺はそのままの友情を維持し続けていたかったが、起こるべきことが起きた。

それは、いつも通りちょっと遠くまでドライブに出かけた帰りの車中のこと。

彼女「中学のときからこうやって一緒にいるけどさ」
俺 「うん」

彼女「一度も手を出されたことないし」
  「そういう雰囲気になったこともないよね?」
俺 「う、うん」

彼女「でもね」
  「わたしの気持ちってさ、なんとなくわかってるでしょ?」
俺 「う、う、うん...」

彼女「わたしにも結婚願望あるの」
俺 「そか...」

彼女「いまさら誰か相手見つけろとか言わないよね?」
俺 「..... 」

いつも二人で一緒にいたし、カラダの関係がない他は「付き合っていない」と言う方が不自然な付き合いだった。なので予想はしていたというか、起きてほしくなかったというか、見て見ぬフリというか、彼女に恋愛感情があるんだろうなと気づいてはいたのものの、とにかくフタをしておきたかった。
そのフタが空いてしまい実際に言葉にされるとものすごい衝撃だった。

でも心が揺れた。

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その後もその関係はそのまま続いていた。
でも、俺はいつも考えていた。
「俺のことはなんでも知ってるし」
「彼女とならやっていけるかもしれない」
「結婚してやっていけるかもしれない」

4年間考えた。
そしてダイヤの指輪を買ってプロポーズした。

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セックスをしたこともない相手へのプロポーズ。
なんとなく親への報告もせずにいたプロポーズ。
それは結局彼女を黙らせるためだけであり、最大の目的は自分の世間体を保つことだった。そんな結果を出すために俺は4年間も費やしたのだ。

今でこそ何かのタイミングでカムアウトしてしまっても受け入れられる(であろう)風潮があるけど、あの頃はまだまだゲイは異端な存在だった。俺自身ゲイの友達がほとんどいなくて、ゲイの価値観もよくわからず「ゲイとして生きていこう」と定めることができなかった。

その年齢でよくあるように親から結婚についてどう思っているのか聞かれたり、職場でも同年代は次々と結婚していき気持ちの悪い焦りがあった。
焦ったところでどうしようもないのに、なにか「カタチ」にしなければという思いがあった。それが世間体であったことは言うまでもない。

「結婚しよう」と言う前には悲観的な現実から目を背け、現実と向き合ったのは言ってしまった後のこと。それが一番俺の卑怯なところだった。

「普通に考えたら子供も欲しいよな」
「でもセックスはできないよな」
「自分がゲイだということを彼女に、家族に、自分に嘘をついて生きていくことになるんだろうな」
「俺はきっと、いつかどこかで男を作るんだろうな」

これでは彼女の人生は破綻してしまう。幸せになんかしてやれない。
俺の人生だってそう。
プロポーズするまで4年も考えたのに、「やっぱムリ」という結論が出るまでに時間はかからなかった。

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一度、考えが負の方向へ向かう。
抱えているのは前向きに考えてもどうにかなる問題ではない。
そうなると、まともに彼女を会うことができなくなってきた。
会っても、目をみて話すことができなくなってきた。

やがて彼女の熱も冷めてきて、ある日指輪を返されて二人は一生会話をすることのない関係になってしまった。

最後までカムアウトしなかったことが正しかったのか間違っていたのかはわからない。

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中には妥協の結婚だってあるとは思う。
俺がしようとしていた結婚生活もそっちの部類だろう。

でも彼女は違った。
14歳の時からずっと近くにいた相手からプロポーズされ、いろんな未来を思い描いてたんだろうな...

ほんとうに、ごめん。
ごめんなさい。

彼女が今どうしているのかは わからない。
どうか幸せでいてほしいと願う資格さえ俺にはない。

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まだまだ生き方定まらぬ平成ビギニング。

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