承認欲求
平成の真ん中あたり、俺は輝く30代を迎えていた。
そのころの俺といえば承認欲求だらけ。もうね、承認欲求の塊。
今だからあのころの自分を外側から見られるようになったけど、当時はとどまることを知らない承認欲求だった。
飲み屋で「かわいいね」って言われても、クラブで「かっこいいですね」って声をかけられても、それでは満足できず「もっと見て!もっと言って!!」と、とにかく認められたい欲に天井がなかった。
世間一般でいう承認欲求とは「注目されたい」という意味が当てはまることが多いとけど、若いゲイの場合はこれに加えて「モテたい」という要素が色濃く占しめる。
俺の場合はほぼ後者で、とにかくモテたくてモテたくてモテたくで仕方がなかった。捨てるホモありゃ拾うホモアリって世界なので、アピールさえすればある一定の成果はあった。「かわいい」「かっこいい」とひとことでも言ってもらえれば、それがごちそうだったのだ。
今でこそ、イイねをつけられるSNSツールが溢れているけれど、当時はそういったものがなく、とにかく自分で発信するほかにすべがなかった。
「ホームページだ、自分だけの世界のホームページを作ろう」
ゲイの間でも個人ホームページが流行っている時代だったので、それに便乗して俺もセコセコとホームページ作りを始めた。
ゲイの間でもと言ったが、その中でもちゃんとデザインにこだわって、自分の制作物をアピールする人、写真が好きで一眼で撮った写真を載せている人、音楽が好きでいろんなレビューを書いている人、そういったきちんとしたコンセプトを基に作られているサイトも多かった。
けど、俺の場合は「見て!見て!見て!俺を見て!!」「俺!俺!俺」な感じのサイトであった...
ホームページを作ったはいいけど、アクセスしてもらわなくては話にならない。
いろんなブックマークサイトに登録したのはもちろん、当時ゲイの間で知らない人はいなかったであろうメンズネットジャパンの管理人さんに、個人ホームページのURL載せてもいいですか?と許可をいただくメールまで送って「友達募集」とか言いながら、フォトメッセージ(いわゆるフォトメ)に自分の写真を載せ「詳しくはコチラ」的なノリでホームページのURLを貼りつけた。それを一年に何回かおこなうという暴挙をおこなっていたのである。
フォトメに載せると、アクセスカウンターがぐるぐる回り、掲示板(BBS)にもたくさんコメントを残してもらえた。
今思うと本当に恥ずかしい。何やってたんだろ俺。
当然、いきすぎた承認欲求は叩かれることになるんだけど、Twitterなどのように人の目に触れやすいところではなく、もっぱら2ちゃんねるで叩かれていたため、人から叩かれていることに気づかれることはなく、叩かれても俺の承認欲求が負けることはなかった。
承認欲求と並行して現れたのがリア充アピール。
ゲイの個人ホームページの衰退をもたらしたmixiの台頭。mixiも当時の俺の欲求にガッチリとハマった。飲み屋でウェーイ、クラブでウェーイといつもウェイウェイ言ってたな...
飲み会開いても(当然幹事)、「何人集まったか」が大事な要素であったことも多い...
他人の承認欲求とは快く感じないことがあるけれど、結局のところ自分がオワコンになるまで続くものなんだと思う。(俺だけかな)
よく頑張ったな、30代の俺。(自戒)
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