_002恋愛観_ヘッダー_190825_0002

きみなき世界

性的対象である以前に友人であるということ
友人であるが性的対象にもなるということ

ストレートの「オトコとオンナの友情は成立しない論」とまではいかながいが、ゲイにもどことなくこれに近い危うさはあるのかなと感じたりする
似たスタイル・ファッションをしたゲイの集合写真を見ると純粋な友情じゃないこともあるよなと邪推したり、一緒に遊ぼうよと紹介された友達の彼氏が過去のワンナイトラブの相手だったりとか

でもまぁ恋愛観なんて千差万別
私には私の価値観があるからそれを否定さえしないのであれば私はあなたの価値観を変えようと思わないし、人それぞれに恋愛の価値観はあって良いし、そこに少なからず付随する性的価値観もそれこそ千差万別なのだから友情と恋愛感情が混同したって別にいいじゃない

そう、ずっとそう思っていた
「友情」と「恋愛感情」の境界線を考えるあの頃までは

私にはとても大切なオトモダチがいた

ある日いつものように食事に誘われたのでいくとオトモダチの隣に見知らぬ男性が座っていた
私に会いたいというので連れてきたと無邪気に話すオトモダチの目をみて、(ははーん、イマはこの人が好きなんだな)と要らぬ邪推をしながらいつものように楽しい時間を過ごした
オトモダチ曰く私が乳臭い頃から敬愛するアイドルの事を彼も好きなんだという
あの頃のアイドル様は出産後で活動をセーブしていた時期だったので話題に上ることが少なく飢えていた私は早口マシンガンガールと化したが、それらを的確に笑顔でいなしてくる同担に興奮を覚えた
それで一気に距離が近くなった

それからしばらくオトモダチと彼と私で遊ぶことが増えていった
私と彼の仲も自然と深まっていった

推しが古巣のに復帰したお祝いにご飯しようかという話になった
オトモダチはその尊さに興味を示さずじゃあふたりでハリウッドを蛇行しちゃおうぜ!的に推しの復帰をお祝いした

流れでウチで飲み直しとなりライブDVDを観ながら「晩年の堀切先生は迷走していたね」とたわいもない時間を過ごした
彼も私も酒好きのため飲んだくれて酷くヨッパライ、彼は終電を逃したためそのまま泊まっていくことに

それから三人組でデビューしてセンターを奪われる辛さを語ったり映画を観たりオトモダチの話をしたり仕事の話をしたり
そんなたわいもない時間が突然止まった
気付いたらキスをされていた

何が起こったか理解できず頭が混乱し驚いて怪訝な顔をして固まる私を見て
彼は(これは違った...)と思ったんだろう
「お前から誘ったんだ」と言われて
そのまま強引に押し倒された

ムリヤリ服を脱がされ行為を推し進められた
やめて欲しいと頼んだけれど止まることはなかった
彼はもうあとに引き返せなかったのかもしれないし
ただその夜はどうしても性欲を満たしたかっただけなのかもしれない
相手などダレデモヨカッタのだろう

男性なんだから強く抵抗すれば流石に止められただろうと思うでしょう
実際にそのあと知人に悩み相談したときにもそう言われた

けれどそれまでに彼やオトモダチと長く触れてきた時間が
あまりにも愛おしくて 強く拒むことができなくて

結局私は成人だと言うのに年甲斐もなく涙を流したところで相手が我に返ってくれた

彼は強い怒りを私にぶつけた後、背中を向け眠りに就くことにしたみたいだ
そのまま何事もなかったように夜は更けた

眠れなかった
彼は変わらずいびきをかいて眠っていた

こちらに背を向け
寝ている後姿を眺めていたら
気付いたらその背中に手を伸ばしていた

乱暴に扱われたことをなかったことにしたかった
私はそうされていい存在ではない
そう思いたかったんだとおもう

私を傷つけていいのは私だけだ
あなたの「誰とでもするわけじゃない」というコトバはちっとも私を救わなかった

だから私から手を伸ばした
「これは私がした選択」
そうやって心で呟きながら間違ったことをしていると分かった上で私は彼の背中に手を伸ばした

そうでもしなければ
このどうしようも行き場のない気持ちが
昇華されないと思ったから

その朝、私は大切なオトモダチを失った
友情という形の無いものの代わりに
これまた目に見えない私は私のちっぽけなプライドを守ったのだ

そのあと私は好きになった演技をずっと続けた
いつかどこかでその気になった奴に手のひらを返して貶める時が来るのではないかそう思ったから
「お前オレのこと好きなんだよな」と言われる度に今に見てろよと心が激った

もちろんただの性欲捌け口時間つぶし相手の私に振り向くわけもない
私はただの愚か者だった
その後私に好きな人ができ、誰にも響かなかった私の好き好き演技はその日で終演を迎えた

その後、事情を知らない友人たちから
「あの子、彼氏ができて今すごく幸せなんだって」
という訃報を耳にする度

強く強く不幸な顛末を願いながらも

私は
もう一度彼に触れたいと
心のどこかで願っている

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