見出し画像

中国史のドラマや話題を楽しむための分かりやすい本を紹介。実は、歴史書の全訳を読む必要はありません。

こちらの続きとなります。

  今回は、2つ目の記事で書いていた「中国史(三国志を除く)を理解する」ための本の紹介です。
 3つの記事で紹介した横山光輝先生の歴史漫画、陳舜臣『小説十八史略』、故事成語についての簡略の本までお読みになった方、あるいはその同等レベルまで動画や歴史解説記事などで中国史を知った方を対象としています。
 その方々がさらに中国史をよく詳しく知り、中国史関係の番組やドラマ、動画、ネットの話題をより楽しめるための本を紹介します。

中国史通になって、様々な媒体を楽しみましょう!

 今回、紹介する本をお読みになるか、それと同等の知識を得ることができれば、いわゆる中国史通と呼ばれるレベルまで達します。
 そうなると、中国史関係の番組やドラマ、動画をより楽しめます。
 また、中国史関係動画のコメント欄、中国史創作やドラマに関する匿名掲示板のスレッドを読んで内容を理解することはもちろん、書き込んで話題に加わることもできるでしょう(ただし、中国史関係そのもののスレッドへの書き込みはまだ難しいかもです)。

いきなり、歴史書の翻訳はまだ、難しいです。段階的に理解を深めましょう。

 『キングダム』などの漫画をお読みになった方や、歴史動画やドラマを見た方が、ネット上の掲示板で「もっと知りたい」と相談されている時、「正史(『史記』などの中国における歴史書)のその翻訳を読むように。原文・訓読つきがいい」と回答されているのをしばしば見ます。

 この場合、想定されているのは、おそらく、この本です。

 しかし、この段階では、こういった内容を理解するのは難しく、原文や訓読を理解するのは困難です。また、本代も高価で、図書館に行かなければならず、電子書籍で気軽に読むこの時代にあっていません。

 そこで、中国史を段階的に理解するための本を、できるだけ「amazon kindle unlimited」に存在し、そうでもなくても電子書籍が存在して、気軽に試しに読めるものを優先して紹介するようにします。

 なお、繰り返しになりますが、「三国志」だけは別記事になりますので、ご理解ください。

まずは、『史記』の概略をおさえましょう!

 世間で「中国史」と言うと、「三国志」を除けば、半分以上が『史記』という歴史書で書かれた時代を指します。

 具体的には、殷・周・秦・漢の時代です。ただし、漢は前の3分の1ぐたいを対象としています。周には「春秋戦国時代」が含まれますから、『キングダム』もこの時代に含まれ、横山光輝『史記』と『項羽と劉邦』、『殷周伝説』、『戦国獅子伝』が網羅されます。

 つまり、「歴史書の残ったはじめの時代から紀元前1世紀まで」を対象としています。今に伝わる故事成語もほとんどがこの時代に生まれており、孔子や老子、孫子、韓非子などビジネス書で名前を聞く思想家たちも全てこの時代の人物です。

 さらに、「三国志」としてもこの時代の話をある程度知っていることを前提に話が展開することが多いのです。歴史の理解というだけなら、『史記』の方を先に知っていた方が理解が深まります。

 ということで、まずは、中国史を楽しむために、『史記』を学べばいいのです!

 そのためにお勧めする本がこちらです。

 『史記』(徳間文庫カレッジ) 全8巻

 これは値段は高く見えますが、「amazon kindle unlimited」に含まれているため、非常に安価に読むことができます。
 内容も歴史書である『史記』の紀伝体(人物ごとに話を書く形式)ではなく、できるだけ時系列に並べ直して、時代の流れも分かるように工夫されています。
 また、有名なエピソードはできるだけ説明できるように工夫して、記されているため、大きな流れや有名な人物、重要な事件を知るのに最適です。

 訓読と原文も含まれていますが、これは当然、飛ばしていただいて、翻訳と解説・注釈だけを読んでいけば、大丈夫です。
 理解しにくい時には、横山光輝『史記』と『小説十八史略』を読み返せば、きっと分かります。

 なお、同じ徳間書店には殷から宋の終わりまでを扱った『十八史略』もありましたが、電子書籍もない上に絶版ですので、お勧めしません。

 これだけで、『史記』の時代は歴史を語ることはともかく、動画や創作作品、ドラマ、番組はかなり理解できるでしょう。

中国史の通史を扱った本ではこの2シリーズがお勧め!

 しかし、中国史は『史記』と「三国志」を除いても、漢の3分の2、晋以降の時代があります。有名な三蔵法師や楊貴妃らが生きていた唐の時代や、『水滸伝』の舞台である宋の時代は外れています。
 これでは、さすがに『史記』と「三国志」だけで中国史を網羅しているとは言いがたいです。

 それで、おすすめするのはこの2シリーズです。
 どちらかだけでも読破できれば、あなたはかなり中国史に詳しい人であることは間違いありません。
 両方、読破できれば、中国史通を名乗っても何も問題もありません。
 また、ご自身が、かなりの読書家であることを誇りに思っても誰も異論はないでしょう。

新十八史略(河出書房新社)全6巻

 電子書籍版の方が高価で「amazon kindle unlimited」にも含まれていないのですが、電子書籍が存在するため、こちらを先に紹介しました。

 タイトル通り、『十八史略』の時代を扱った「歴史物語」です。『史記』では余り記述のなかった神話の時代から、夏・殷・周・(春秋戦国)・秦・漢・(三国時代)・晋・(五胡十六国)・(南北朝)・隋・唐・(五代十国)・北宋・南宋まで、複雑な乱世部分もできるだけ省略せずに物語形式にして分かりやすく説明されています。

 神話も含まれていることから分かる通り、中国の正式な歴史書である「正史」ばかりでなく、様々な歴史書や史料、時には読者を楽しませるための講談小説からのネタも積極的にとりいれています。
 全体的に、人物を主体として、できるだけ楽しく読めるような読み物です。

 そのため、学説の説明などはないですが、歴史書を物語風にして、できるだけ面白いエピソードから採用しているため、話が脱線せずに、興味を持たせながら読むことができるようになっています。

 これは私も高校・大学時代に読んで、長い間、重宝していました。
 どちらかというと、『十八史略』よりも、中国の長い時代を扱った『資治通鑑(しじつがん)』のダイジェスト版といった印象です。

 ただ、内容としてはエピソードや人物重視なため、重点が偏っている部分が多いのも事実ですので、その点はご留意ください。

陳舜臣『中国の歴史』 全7巻

 こちらは電子書籍がありませんので、後にしました。
    ネットの中国史好きで文学部にいっていない方の多くはこの本を読んでいるようです。

  10年ぐらい前の匿名掲示板では、この本を読破しているだけで、誰も自分の知識にかなわないと思っている人が多かった印象です。
 その頃は、私の方もそういう人たちの知識や学識を彼らの自己申告を信じて、過大評価していたのですが(笑)。
 それはともかく、歴史関係の漫画やドラマのスレッド、動画のコメント欄においてなら、そういったことを自認してもおかしくないほどの知識はあるでしょう。

 内容は陳舜臣という日本において、中国史の小説家の中でも、最も高名で知識があった方が、(個人的には宮城谷昌光先生と比べても、学識において、講師と大学院生ぐらいの差があると思っています)、40年ほど前の基本的な学説を踏まえて、中国史の神話から清王朝時代までを網羅して説明した大作です。

 『新十八史略』でも書かれていない元・明・清も把握することができます。

 分厚く、文字も大きくない文庫本で7冊分あり、かなり読み応えがあります。内容は難しいにも関わらず、文章がとても読みやすく、内容がびっくりするほど頭に入ってきて、自分がとても頭がよくなった気さえします(笑)。

 説明もエピソードについては、『新十八史略』ほどではありませんが、人物を中心にして説明を行い、事件や時代については学説を踏まえて、分かりやすくしながらも大事なところはしっかりと説明しています。

 私がネットの独説の中で、学説を余りにも乖離しているものを見分けることができるのは実はこの書籍のおかげです。この書籍と異なる説明をネットにおいて展開している時は、最新の研究や発見を踏まえた上で展開しているもの以外、ほとんどがネットの独説でした。
 そういった意味で、内容は古いですが、現代でも通じる作品で、学者の方でも高く評価する方がいらっしゃいます。

 私は、中国の近現代史には興味がないため、読んでいませんが、この続編も刊行されています。

陳舜臣『中国の歴史 近・現代篇』 全2巻

 こちらは電子書籍が存在します。
 孫文の革命までを扱っているため、中国史の映画関係の歴史背景もこちらで理解できるでしょう。
 家庭・職場・学校で本当に意味でマニアな人が存在しないなら、ほぼ完璧に対応できると言っても過言ではありません。

これで、あなたも「中国史通」です!

 はじめに書いた通り、今回、紹介した3(4)シリーズをお読みになるか、それと同等の知識を得ておられれば、もう、中国史通と自称しても何の問題もありません。
 中国史関係の番組やドラマ、動画をより楽しめますし、そういったネットの記事や書き込みの多くを理解できるでしょう。
 もう、中国史関係動画のコメント欄、中国史創作やドラマに関する匿名掲示板のスレッドを読んで内容を理解することはもちろん、書き込んで話題に加わることも問題はないでしょう。

次回は、分かりやすい概説書を紹介!(したい)

 これから先に進まれたい方は、おそらく、中国史の概説書か、正史の翻訳、ネットの記事を読むことに進まれると思います。
 しかし、中国史の概説書は上記の書籍に比べても難しいです。その理由は内容自体が難しいこともありますが、概説書は学者の方がお書きになったため、読者に分かりやすい文章ではないことが挙げられます。

 そこで、次回がありましたら、上記の本を読破した方、それと同等の知識がある方で、段階的に理解するために、比較的、読みやすい分かりやすい中国史の概説書を紹介します。




 

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?