2005年12月3日 心は「蒼黒」へと染まった日

昨日、5月15日はJリーグの日。1993年に開幕戦が開催されたことから名付けられた。僕が初めてJリーグをスタジアムで生観戦したのは、2003年なので、約17年に渡ってスタジアムに行ったり、テレビ観戦したりしている。そんな僕にとって、サポーター生活を続ける中で忘れられない1日がある。それが2005年12月3日、愛するG大阪がリーグ初優勝を達成した日だ。

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当時の主力を務めた(写真奥から)山口智、宮本恒靖、シジクレイ=2006年5月、万博記念競技場で

記事の冒頭、断っておきたいことがある。実は当時の僕は「生粋」のガンバサポではなかった。それは2003年に初めてスタジアムで観戦した試合はC大阪 vs 清水であり、アテネ2004オリンピック日本代表の大久保嘉人や、今やクラブの社長を務める森島寛晃に心酔していたことからC大阪にも愛着があった。何よりもスタジアムがC大阪の方が綺麗であった。G大阪がホームとした万博記念競技場は、雨が降ればびしょ濡れになり、自由席はいわゆるベンチシート。一方のC大阪のホーム・長居スタジアムは2002年にFIFAワールドカップの会場の一つとして使用され、大きくて格好良かった。とはいえ、G大阪には現監督の宮本恒靖がプレーしており、「どっちつかず」のサポーター生活を送った。

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懐かしの万博記念競技場、この写真は2009年の磐田との開幕戦

2005年、僕は当時高校1年生だった。お小遣いを貯めて試合のチケットやユニフォーム型Tシャツを買い、大阪をホームとする両クラブに声援を送った。今だと「ガンバもセレッソも応援しています」などと話すと、「どっちやねん」と突っ込みが返ってきそうだが、当時はそんなムードはあまりなかった。当たり前だ。大阪のスポーツと言えば「野球」だからである。

スポーツ紙は毎日、阪神タイガースの話題が一面でサッカーが一面に来る機会と言えばワールドカップがあったときくらい。朝からラジオをつければ、パーソナリティーが六甲おろしを歌う始末で、当然テレビのローカル番組のスポーツコーナーは阪神タイガース応援コーナーだ。阪神ばかりの関西スポーツ界だからこそ、「Jリーグを応援してあげたい」そんな思いをいつも持っていた。

2005年シーズンのJリーグは、それまでの2ステージ制から1シーズン制に変更された。G大阪はこの年新加入したアラウージョ、現在もJ3鳥取で現役を続けるフェルナンジーニョ、そしてユース育ちの大黒将志を核に据えた攻撃的な布陣で白星を重ねた。C大阪にも愛着のあった僕だが、西野朗監督の体現する攻撃サッカーに魅せられていった。

特に2005年5月14日に長居スタジアムで行われたC大阪 vs G大阪の「大阪ダービー」は忘れられない。42,053人という大観衆を集めた一戦は、アラウージョと大黒将志がそれぞれ2ゴールづつ挙げたG大阪が4-2で勝利した。現地で見ていた僕はJリーグでこれだけの人が集まったことに衝撃を受けた。甲子園のプロ野球ならまだしも、4万人越えはダービー史上初で、スタジアムの熱狂も、選手の気迫あふれるプレーも今でもはっきり覚えている。当時C大阪がプロモーションに力を入れた結果ではあるが、僕自身「今年は何かが起こるぞ」と予感させる一戦だった。

G大阪は、8月27日の第21節で鹿島に変わって首位に立つと、シーズン終盤までトップの座をキープする。このままいけば初めてのJリーグ制覇だが、その前には「産みの苦しみ」があった。第31節から第33節までまさかの3連敗を喫したのだ。特に第33節の千葉戦はこの年のホーム最終戦で、土曜日も授業があった僕は、こっそり学校を休んで試合を見に行った。チケットを買った時には「この試合で優勝の瞬間が見れればいいな」などと想像しながらコンビニの端末を叩いた。

試合は前半29分に遠藤保仁のFK弾で先制するも、その後あっさり逆転されて敗れた。11月末ということもあり、試合が終わる頃には日も暮れて真っ暗になったスタジアム。ゴール裏のサポーターはどこか元気がない。そこにC大阪が首位に立ったという知らせが届く。優勝は最終節までもつれ、大阪の2クラブを含む合計5クラブに優勝の可能性がある大混戦となった。帰りの電車の中で僕はドキドキしていた。「来週、大阪からJリーグ王者が生まれるのか」。

そして2005年J1リーグ最終節を迎える。結果は敵地で川崎Fを4-2で破ったG大阪が、ホームでFC東京と引き分けたC大阪を逆転してリーグ初優勝を果たした。どちらにも愛着のあった僕には複雑だったが、大阪にシャーレーが来たことは素直に嬉しかった。あのクールな印象の宮本恒靖が号泣して嬉しがる姿からその「悲願」ぶりが伝わって来る。そして僕はこのことをきっかけに心は完全に「蒼黒」へと染まっていった。

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大学生になって人生初の海外旅行も、ACL観戦とG大阪絡み。そもそも進学先を考える一つに指針に「万博に近いところに住みたい」と考えていた=2009年3月、ソウルワールドカップスタジアムで

ちなみにこの日だが、今の自分なら「ぶん殴ってやりたい」ことがある。学校から速攻で帰った僕は、地上波でテレビ中継していたC大阪 vs FC東京に没頭していたのである。だからC大阪が被弾したアディショナルタイムのFC東京、今野泰幸の同点ゴールは鮮明に覚えているのだが、川崎F vs G大阪はゴールシーンくらいしか知らない。

15年が経とうとしている今でも悔やんでいる一戦だが、今夜19時からスポーツストリーミングサービス「DAZN」が配信する。

過去の試合を新たな実況・解説で伝える「Re-LIVE」シリーズの一つで、15年前の試合を見ることができるなんて本当に感謝している。部活もせず、勉強とJリーグ観戦に没頭していた当時の自分を思い出しながら、試合を楽しみたい。


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